11.黒ローブと赤のカーペット
丘を越えてみると想像を絶する光景だった
「な、何ですかこれ…酷すぎる…」
町を出た時よりも血や死体で溢れ返っており、銃声や悲鳴、モンスターの鳴き声が飛び交っている
「みんな伏せて、このまま行ってもカトラッヂの連中やモンスターに襲われるだろうから茂みに行こう」
レノンの言う通り確かに丘の隣には大きい茂みがあり、隠れて進むにはちょうど良さそうだ
「君たちナイフは持っているかい?僕のナイフは4つあるから2人に貸せる」
そう言われレノンと俺以外が顔を合わせながら腰を確認する…俺は指に付いている機械があるから代用できるが…他のみんなは持っていないのか
「皆小声でな…それじゃあウォルはここを定位置として陽動を行ってくれ、行うタイミングには僕が合図する、合図をしたら陽動を行ってすぐに町の出口に戻るんだ」
ウォルは頷き、伏せながら
「わかりました、注目を引き寄せればいいんですね」
そしてウォルを置いて3分ほど茂みに伏せながら進むと銃を構えていて背を向けている敵兵が2人いる
「このまま通っても邪魔になる…勇者くんと僕で静かに仕留めよう」
「わかりました」
俺がそう言うとレノンはカウントダウンを始める
「3…2…1…行け!」
茂みから飛び出してナイフを持つ構えを取ると機械がナイフに変化し、敵兵の口を押さえながら3回ほど刺して地面に倒れる
「さぁ、見つかる前に茂みに隠れて!」
飛び込む様に茂みの中に入ると
「なぁこれってどこまで行けばいいんだ?」
確かに茂みの中を匍匐前進しているだけで
目的はがあるとは感じられない、アルトの疑問はもっともだ
「取り敢えずカトラッヂの連中やモンスターをできる限り減らして偵察をする、この激戦区で真っ向勝負をするのは難しいからね」
確かに、真っ向勝負を挑むよりはこっちの方がいいな、戻る時はウォルが気を引いてくれるをしてくれるらしいし
「そうか、不意をつければ簡単に倒せるからな」
アルトも頷く
いろんな音が飛び交う中茂みを進んでいると流れ弾が当たりかける、ガルトラも少し弾が当たりかけた様で
「そろそろ戻った方が良くないか?弾が当たりそうな気がするんだが」
やはりそうだよな、どんどん戦闘の大きさは増していてそろそろ敵やモンスターに見つかってもおかしくない
「確かにその通りだ…敵の数は対して減らせなかったが戻るしかないな、合図を出す、待ってくれ」
そのレノンが言っている合図って何だ?手を挙げたりとかか?と考えていると急にレノンが
「みんなついてきて!」
と言い町の方向に走り出す。俺らも少し遅れて走り出すとかなり大きい星の形をした魔法が草原に落ち、爆発音の様なものを轟かせる。
草原にいた近くのモンスターや敵兵はそちらに注目がいきあっという間に丘を越えられた。
町の出口付近にはウォルが待機しておりこちらに手を振っている。少し駆け足で近づき
「ありがとう、何とかここに戻ってこられたよ」
と感謝すると
「いえいえ…困った時はお互い様です」
そう返されると
「大襲来っていつ終わるんだ?初日でもこんなことになっているが…」
こんな血だらけなのにまだ初日だとは信じがたい…3日後とかには収まってることを願うばかりだ
「早くても後5日ほどです。」
5日もこんな地獄が待っているのか…ホント憂鬱だ
「早く終わればいいのにな……本当疲れるぜ」
明らかにしょんぼりしながらアルトは町に向かって歩き出す。ウォルもついて行き
「そうですね…カトラッヂの奴らもいずれきます。
しっかりと備えましょう」
全員頷き町に重い足踏みで町に向かい…何分か歩き
レノンの家に入ると
「何回も言う様だがカトラッヂはそろそろ来るだろう、ここにいる住民は僕たち以外みんな非戦闘員だ、数で言ったら明らかに部が悪い、一応他の国からこっちの仲間が来るだろうが…そんなに早くは来ないだろう。増援が来るまで自分たちで何とかするんだ」
「だけどどうすれば?…こちらで戦えるのは5人だけですがあちらは無数に攻めてきますよ」
ウォルの言う通り、敵兵はうじゃうじゃ湧いてくる…それをどうやって5人で倒すんだ…
レノンはバンカーを開け
「ついてきてくれ」
と言い梯子を降りて行く、こんなとこにバンカーが
あったのか…随分用意周到なんだなと思いつつ
少し錆気味なハシゴを降りると真っ暗闇な部屋に入る
「なんか暗くないですか?」
俺がそう言うと
「今電気をつける…少し待ってくれ」
後ろから梯子を降りる音がする、みんな続々と来ているのだろう
パチっ…電気が点滅しながら付くとそこには通常では考え難いほどの武器がある
アルトはこちらに囁く様に
「こんな量映画でしか見たことないぞ…銃やら装備やらありえないほどあるぜ…」
確かにそうだ、作業机の上には明らかに改造を施されたトラップや銃が置いてあり、ガンラックにも銃があり棚には弾がある
「ここを要塞に変えれば効率よく敵を処理できる。
トラップハウスさ」
ガルトラでさえ目を丸くして
「す、すごいなこりゃ…」
「銃を撃つのは久しぶりなんだ、トラップを中心として民家に付けるんだ」
ブービートラップを1人ずつ何個か渡され付け方の説明もしてもらった…要約するとこうだ
ドア付近に爆弾と紐をくくりつければ入ってきた時
ドカン…だとさ
町の住民を招集しブービートラップを付けた家には出入り禁止のポスターがドアについていると説明した。
住民はみんな物陰に隠れたり安全な家の中に避難する
「ここから待ち伏せですよ…」
ウォルはハンドガンの様な銃のチャンバーチェックをして杖を背中にかける、俺たち5人は黒いローブを纏い町の出口から一番近い家の物陰に潜む
「ブービートラップや銃にも消音処理は施しているから静かにやるんだ、通常の銃声なんか鳴らしたら一瞬
で敵が攻めてくるぞ」
体感20分ほど待っただろうか、人影が見える
「伏せろ…ローブを深く被るんだ…」
と小声で5人に忠告する
招集の時に聞いた話では一つ目のブービートラップが起爆したら一気に敵兵の急所を撃ち沈静化させる…との事だ
耳を澄まして大体の位置を把握し、待機すると
ボンッ…
掃除機を鳴らした時くらいの大きさの音がが鳴り
敵兵の注目はそちらに集まる
「いけ!」
パシュッ!……
パシュッ!……
今度は爆竹を鳴らした時程の大きさの音が何発か鳴り響き敵は全員倒れる
「5人だったようだな…ここからは剣と魔法も使って
真っ向勝負で行くぞ」
レノンは銃をホルスターにしまうと刀を抜刀する
他のみんなは銃をポーチやカバンに入れる
今気づいたが俺は人を殺めているのか…この世界では殺す殺されるは普通のことなのか?…そう言う世界
何だろうが…やはり罪悪感や嫌悪感がすごいぜ…
そんな一息ついている暇もなく敵の増援が8人ほど来る
「さぁ…君たちも剣や杖を構えて…戦うよ!」
と言われ俺も剣を抜刀する
1話事の題名の雰囲気11話目に突入ということで変えます