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推理ゲームには頭を使う  作者: 西松清一郎
16/25

4-2

「『紙切れって、あの紙切れ?』ノーラが探りを入れるように尋ねる。

『そう。何て書いてあったかは詳しく知らないけどね、この間見たのと同じように、その子の価値うんちゃらという内容だったそうだよ』


 聞いていたドロシーは何も言わなかった。ただ、頭に充満しつつある不快さに必死で耐えていたんだ。


『でも不思議ね』ノーラが言った。『ドロシーだって、アドルフさんだって、周りから十分価値を認められているでしょうに。何でそんな書き置きを残す必要があったのかしら』


『うん』とミカエル。『ドロシーだって、王様に(つか)えてこそいないけど、おそらく僕らの中では一番優秀だもんね。輪投げでも陣取りでもドロシーにはいつも負けちゃうもんな』


 普段なら褒められて気を良くするドロシーだったけど、この日の感覚は全く違うものだった。

 褒められれば褒められるほど、あの悪魔のような手が再び巻きついてくるような気がしていた。


『優秀な子といえば』さらにミカエルが言う。『ずっと前にも同じようなことがあったじゃないか。二人とも覚えてない?隣の村で女の子が一人行方不明になったんだ』


 聞いていたノーラが、はっとして答えた。『お城の声楽隊に入った女の子ね。もちろん覚えてる』


『そう。かわいそうに、それからその子は山で亡くなって発見されてね。頭から血を流して倒れていたそうだよ。あのときはその村全体が悲しみにくれて』


『もうたくさん』突然、ドロシーは机を叩かんばかりに叫んだ。『もうそんな話はうんざりだわ。私はお料理がおいしいとか、森の動物がかわいいとかそんな話がしたいのに、なんで私だけこんな目にあわなくちゃいけないの?』


 二人はよほど参っていたドロシーにようやく気づき、しゅんとした様子でそれぞれ『ごめんよ』『ごめんね、ドロシー』と口にした」

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