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推理ゲームには頭を使う  作者: 西松清一郎
1/25

1-1

 ※お酒は二十歳になってから

(未成年者の飲酒は法律により禁止されています)

「間に合った」

 田切(たぎり)雪比古(ゆきひこ)は、「Bar Poele(ポワル)」の小ぶりな看板を見て思わずつぶやいた。腕時計でまだ待ち合わせの五分前であるのを確認すると、いくぶん落ち着きも戻ってきた。


 肩幅程度のショウウィンドウには、水色の飲料サンプルを収めたカクテルグラスが、ライトアップされて置いてある。


 店名はアガサ・クリスティが生み出した、かの名探偵エルキュール・ポワロを思わせ、また、デパートのミニチュアのような凝った外装はまさに酒好きの嗜好を呼び覚ます。


 いかにもあの男が推理ゲームの場に選びそうな店だな。田切はそう思いながら、天然木らしい取っ手をつかみ、静かに扉を押し開けた。


「いらっしゃいませ」

 黒髪を後ろで結ったウェイトレスが、お決まりの声をかけてくる。前は若月に連れられて来たため、田切はレジ前でのやり取りに一瞬言葉を詰まらせた。


 人差し指を立て「お一人様」を示そうとするが、違う、と慌てて手を引っ込める。

「『若月』で予約しているはずですが。一人はもう中にいるんです」


 ウェイトレスは、たどたどしい田切に一切つられることなく、滑らかに言葉を放った。

「若月様のお連れ様ですね。お待ちしておりました。カウンターに席をお取りしています」


 十畳ほどの店内で、若月流生(りゅうせい)の背中を探すのに手間取ることはなかった。金の繻子(しゅす)織りのスーツは、探すなと言われてもすぐに目につく。


 若月にしては珍しく、女性と話さずに一人でいた。この男だってやれば、大人しく黙って人を待つことは出来るのだ。田切は「お疲れさまです」と一言口にして、背もたれの低い椅子に腰をおろした。

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