表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

プロローグ

 姫崎 永利(ひめさき えいり)、彼は寂しかった。悲しかった。苦しかった。辛かった。


 ――味方なんて1人もいなかった。





―――――――――――――――




「永利? 入っていい?」


 扉の前で永利の叔母が、部屋の中の永利に問い掛ける。

 「入っていい?」その言葉は正しくは質問では無い。

 発すると同時に部屋の扉を開ける叔母。


「どうしました?」


 どうしたかなど、全く興味の無い永利が叔母に形式上、言葉を返す。


「永利も、もう17よねぇ? アルバイトとかはしないの?」


 決して頭が悪い訳では無い17歳の学生に向かって進学するかどうかでは無く、仕事、否。お金の話しをする辺り家庭環境はお察しであろう。

 

「……そうですね、何か良い求人が見つかれば考えてみます」


 受動的に答える永利。だが、その実、彼の心は一切叔母を見てはいなかった。


「あら? ごめんなさい! お友達? お友達の妹さんかしら? 来ていたのなら言ってちょうだいよ!」


 永利の後ろ、ベッドの方向に目を向けながら、そう言う叔母。心当たりの無い永利はゆっくり後を振り返る。


「あ……あ?」


 そこには少女がいた。

 決して広くは無い部屋の、高級感など微塵も無いベッドの上で、慎ましやかに、美しい青いドレス姿で座る金髪の少女が……


「――――――――――――――――」

 

 少女から発せられる言葉。

 何処の国の言語なのだろうか?

 それは間違いなく日本語で無い事だけは理解出来る言葉であった。


「……んもぅ〜お兄様は厳しいですねぇ。2人きりなのだから王族語で無いと無視するなんてひどいですぅ〜」


 一体何のドッキリなのか? しかし永利は叔母が自分に対してドッキリなんてフレンドリーな事などするはずないとすぐに考えを改めた。


 そんな事を考えていた永利だったが、永利の思考などお構いなしに状況は進む。


「なんですかぁ? この下民はぁ?」


 永利の叔母を指差して、悪びれもせず悪態をつく少女。


「な、な、なんですか永利!? この失礼な子は!」


「え? いや俺に言われても……」


 永利の弁明が叔母に伝わる事は無い。

 例え弁明を最後まで言い終えたとしても伝わる事は無い。

 

 何故なら……


 ――叔母の首が飛んでいたからだ。


「うーん! これでスッキリしましたねお兄様!」


「あ……え?」


 当然、永利の思考は追いつかない。

 だが永利は今回の件に心当たりが無い、訳では無いのだ。

 しかし、例え心当たりがあったとしたら何だというのだろう。


 自分の叔母、いや、他人であったとしてもだ。

 目の前で人の首が飛ぶのを初めて見た人の動揺。

 あって然るべき感情が当然のように永利の思考を遮る。


 そして永利に動揺を齎した張本人。

 金髪の少女は己が犯したであろう罪に目もくれず

 屈託のない顔をして、両手でドレスの裾をつまみ、左足を右足の後ろに遣り、右膝を軽く曲げる。


 上品にカーテシーを行う少女の次の言葉は、今度こそ、心当たりの無いモノだった。



「お約束通りお迎えに上がりました!」


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ