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孤独な王の物語

作者: 雨井 遥

魔王、それは知恵ある物の天敵。


これは、孤独な王の物語。



それは目覚めた。この世に存在する知恵ある物全てを無に帰す為。


しかし、それはしなかった。知恵ある物を殺すことも、壊すことも何もしなかった。


ただ、存在するだけだった。


それは、自我を持った。


「オレは何なんだ?」


自分が[しなければならない事]は、分かっている。


けれど、しようとは考えなかった。


それは、考えた。


自分は何なのか、何故存在するのかと。


それは、興味を持った。知恵ある物達の創り出すもの、知恵ある物達の営みに。


それは、思った。これらを守ろうと。


それから、幾万幾星霜もの間それは知恵ある物達を守った。


ある時はこの世界を支配しようと企む邪神から、またある時はこの星を砕く程の威力を持った流星群から。


知恵ある物達は、それを敬い奉った。

そして、それに魔を討ち滅ぼす全ての王という意味で<魔王>と読んだ。


しかし、ある時知恵ある物達の1人がある疑問を言い出した。「あれは、一体何なのか」と。最初はただ、自分たちの持てないような力を持つものに対しての嫉妬だった。

その疑問はやがて、全ての知恵ある物達の疑問となった。

そして、とうとう答えを出した。


「あれを、魔王を殺そう。」と。


知恵ある物達は、力を付けていた。今まで築いてきた幾星霜もの歴史の内の争いから。


魔王は、初めて驚愕した。邪神と戦った時も、幾千幾万もの流星群を砕いた時も驚かなかった、魔王が。自分が今まで守っていたもの達から急に攻撃を受けたからである。


そして、魔王は知った。

何故、自分に知恵ある物達を無に帰さなければいけないのかを。


この者達は、面白く、優しく時に残酷で、そして、欲深い。


魔王は、初めは戸惑った。今まで守っていたもの達を壊して良いものか?と。


しかし、その戸惑いも徐々に消えていった。どんなに行動しても、どんなに話しても、その者達は聞かなかった。


ある時、知恵ある物達は魔王との数十年の戦いの絶望の中に希望を見い出した。


それは、召喚だった。


自分達で勝てないのなら、勝てるものを呼べばいいど言う安易な発想だった。


そして、召喚は行われた。その召喚された者は、勇を持ち魔を滅する者の意味を込めて<勇者>と呼ばれた。


そして、魔王は勇者と戦った。


「私はお前を倒して世界を救う!悪は存在してはダメなんだ!!」


「オレは、お前を倒す。生きるために。」


この時、魔王は気付いた。自分の存在する意味をそして勇者がこれからどうなるのかを。

魔王は決意した。この少女を救おうと。どうせこの少女が魔王を討ったとしても、あの知恵ある物達は、新たな脅威としてこの少女を殺すだろうと。


そこから、決着まではとても早かった。その少女の剣により魔王は貫かれた。そして、魔王は死ぬ寸前にその少女を元の世界へと返すように術式を構築した。


そして、少女は自分の世界へと帰った。


魔王は、死ぬその瞬間まで最後に救った少女の顔を思い浮かべていた。




その後、魔王の居た世界はたった一つの流星により死の星となって、知恵ある物達は苦しみの中死んでいった。


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