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魔術師転生  作者: サマト
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六十話 シモン対三人の魔法使い 鉄壁のチーム

意気込んで路地裏から広い遊歩道に出たシモンは敵と遭遇した。三人一チームとなって行動していた男たちと黒ずくめで仮面で顔を隠したシモンはお互いを凝視し固まっていた。薄暗い路地裏からいかにも怪しい男が出てくれば訝し気に見てもおかしくはないだろう。沈黙が続く事数秒ハッとしてシモンと男たちが動く。お互いが偽神四号機の操縦者の権利を奪い合う敵同士である事を思い出したのだ。

三人組の一人が魔法の詠唱を始めた。その詠唱は高速で聞き取る事が出来ないが男の背後で複数の炎の矢が一瞬にして出来上がっていた。後は炎の矢を放つだけでシモンは戦闘続行は不可能となるだろう。だが、シモンの崩拳はそんな攻撃魔法より早い。大体シモンと攻撃魔法を唱える男との距離は二メートル程、シモンなら一足で間合いに入る事が出来る。攻撃魔法の高速詠唱よりも早く間合いに入り崩拳を放つ。近距離では体術、剣術を使う者の独断場、魔法使いには分が悪い。これで一人を倒した、シモンはそう思った瞬間、拳に走る激痛に顔をしかめる。肉体ではない鉄板を叩いた様な感触。自分が何に崩拳を打ち込んだのか見ると自分の拳と攻撃魔法の男との間に直径ニ十センチほどの光の円盤が浮かんでいた。それがシモンの拳を防いでいたのである。

「これは!?」

攻撃魔法の男の傍にいた別の魔法使いが作り出した魔法の盾だった。より小さく作る事で密度が増し強度が大幅に上がっているようだ。強度を上げるための工夫だけでも驚きだが更に驚くのはこの小さな魔法の盾をシモンの拳に当てた事である。この魔法の盾を作り出した魔法使いは魔法だけではなく体術などの鍛錬も積んでおり拳の軌道を先読みしたのかもしれない。

拳の痛みで動揺したシモンに再び炎の矢が放たれる。シモンは全力で横に飛び攻撃魔法から逃れる。次の行動を考えず横に飛んだため体勢を大きく崩れる。更に攻撃が来ればお終いだったが何故か追撃が来なかった。見ると三人目の男が二人の肩に手を置き呪文を唱えていた。

「我が力をかの者へ……」

男の両手から光が溢れ、手を通して攻撃魔法の男と防御魔法の男に流入していた。二人に魔法力を供給している様だった。炎の矢も魔法の盾もかなり魔法力を使うようだ。

シモンはこの三人の一連の動きを見てなるほどと思った。この三人組は攻撃、防御、支援それぞれを担当するチームなのだ。

魔法力を供給している間はこちらに攻撃が出来ない。その隙にシモンは元来た路地裏に逃げ込む。陰から顔だけを出し様子を見ながらこう言った。

「これは個々の実力を見る武術大会だろう!! なのに三人手を組んでというのは卑怯じゃないか!!」

「ウルサイ!!」

そういったのは攻撃魔法を使った魔法使いだ。

「ここの実力を見るというのならこうやって交渉して手を組むのも実力の内だろう!!」

「イヤイヤ、それ違う。この大会で見るのは個々の戦闘能力だから。仲間作るとかそういう応用力を見るのとは違うから。この大会の趣旨から外れちゃうよ」

「―――その通りだ」

突然、シモンと三人の魔法使いの前に正方形もスクリーンが現れ、そこにカルヴァンが映っていた。これが今回、見つかった新機能の一つだった。サフィーナ・ソフ内であればどのような場所でもこのようにスクリーンを出し送受信が出来るこの機能で居住区内で行われている戦闘と会話をチェックしていたのだ。前世の世界の科学技術に近いこの機能にシモンは驚かずにはいられない。この浮遊島の技術はどこからもたらされたのか興味が尽きないが今はカルヴァンの話を聞く事にする。

「そこの怪しい黒づくめの……彼の言う通り。見せてもらいたいのは個々の戦闘能力であり徒党を組んで一人を潰すというは普段ならともかく今回の趣旨からは外れしまう」

三人の魔法使いに動揺が走る。

「趣旨から外れて行動をした者は即失格でもいいんだがそれじゃあ面白くない。そこで君ら四人には罰を与える。魔法使い三人で黒づくめの彼を倒した後、あらためて三人で戦ってもらう」

三人の魔法使いに有利で自分には不利な条件にシモンは慌てる。

「それってちょっとひどすぎません!? 三人組には有利じゃないですか?」

「これは君に対する罰だ。君が誰なのか……俺は分かったよ。どういう意味かは分かるね?」

スクリーンの向こうでニヤリと笑うカルヴァンにシモンはギクリッとする。

「本来なら君はこの大会に出場する必要がない。それなのにあえて出てくるとは……それは浮気というものじゃないか? そんな浮気性に君にはこれくらいの罰を与えないとな」

グウの音もでないシモンであったが頭の中こう呟いていた。

(この……性格破綻者め)

「話はここまで! 最後の一人になるまで戦ってもらおうか」

スクリーンが虚空に溶けるように消える。だがこちらの姿や映像は変わらず受信しているだろう。三人の魔法使いとシモンはしばし見つめ合う。微妙な沈黙が続いたが攻撃魔法を使う男が言い放つ。

「そういう訳だ! お前は手っ取り早く倒させてもらう。その後、お前たちと戦う事になるが……誰が生き残っても恨むなよ!」

防御魔法と支援魔法を行う男二人が頷く。攻撃魔法の男の言い様にシモンは少しムッとした。もう倒した気になっている事が気に入らない。

「僕はそう簡単に倒せませんよ。そんな風に考えていたら足元すくわれますよ」

「お前こそ俺たちに勝てるつもりなのか? 見た所お前魔法使えないだろう。そんな奴が俺たちに勝てるつもりか?」

確かに魔法使いの火力の前には体術、剣術は敵わないが距離を縮めればその限りではない。自分の魔法の火力に巻き込まれてしまうからだ。だがそこは防御魔法で補っているため近距離での魔法の使用も可能になっている。さらに支援魔法により魔法力切れの心配もない。この三人はまさに鉄壁のチームだ。シモンが三人に勝つには少し工夫が必要だろう。だからシモンは逃げた―――薄暗い路地裏に。

「逃げるんじゃねえ!」

三人の魔法使いものシモンを追いかけて路地裏に入った。その路地裏は人が四、五人並んで走れるぐらいの広さがあった。だが、魔法を行うには狭い。広範囲に破壊をもたらす炎の魔法は使う事が出来ない。爆炎で視界が塞がれば逃げられる確率が高くなる。それを防ぐ為、小石を弾丸として飛ばす魔法を選択、呪文詠唱を開始し複数の小石を生成しシモンに向けて放つ。高速で飛来する小石を見もしないでシモンは右へ左へと避ける。

「何で避ける事が出来るんだ!? 後ろに目が付いているのか!?」

そんな疑問を漏らしつつも魔法の手を緩めない攻撃魔法の男。だがシモンをしとめる事が出来ない。T字路に差し掛かりシモンは右に入る。その後を追い、攻撃魔法の男は勝利を確信した笑みを浮かべた。シモンが走ったその先は行き止まりだったのだ。高い壁がシモンの行く手を遮っていた。壁を背に立ち尽くすシモン。獲物を追い詰めた事を確信に勝利の笑みを浮かべる男たち。

「足元すくわれたのはお前だったな」

「俺たち相手に頑張ったが残念。人生こんなもんだ」

「偽神四号機の操縦者は俺たちの誰かが必ずなるから後は任せてやられてくれ」

三人三様に嫌味や慰め、健闘を口にするがそれは油断というものだ。立ち尽くすシモン小声でが何かを呟いているのに気が付く事が出来なかったのだから。それを防ぐ事が出来れば完全に勝利を手にする事が出来たというのに。

「な、何だ?」

攻撃魔法の男が驚きの声を上げる。シモンの姿が薄らいで暗がりの同化していってるのである。もう少しで完全に姿が見えなくなる。魔法は使えないと攻撃魔法の男は判断したが実際は何らかの術は使えるのかもしれない。完全に消え去る前に攻撃魔法の男が複数の小石を生成し消えかけているシモンに放つが小石はシモンの体を貫通し後ろの壁にめり込む。そしてシモンの姿は完全に消失した。

「どこへ行きやがった……」

警戒する攻撃魔法の男は突然背後から杭を打たれたような衝撃を受ける。突然の衝撃に耐える事が出来す気を失った。

シモンの攻撃は始まった。


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