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魔術師転生  作者: サマト
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第五十六話 転生の理由、神核創造者

シモンは呼吸を整え気を引き締め聖理央の目を見つめる。

「……動揺していてもしょうがない。話してもらうぞ、聖理央」

「固いですねえ。フルネームじゃなく理央でいいですよ。もしくはリオちゃんでもいいですよ」

悪ふざけで言った途端、聖理央の頭を持っているルーナの両手の力が強まる。万力のような力で挟みつぶそうとしていた。

「ギャ~ッ!!イタイ!! イタイ!! 脳みそ飛び出るぅ~!!」

「……お兄ちゃん、コイツ……殺っちゃおうよ」

ルーナのドスの利いた声に流石の聖理央はゾッとする。

「文字通り手も足も出ない相手に何をするんですか!! 止めて下さいよシモンさん!!」

「手も足も出ないからって口を出すからそうなるんだ。ふざけてないでこっちの聞きたい事をキリキリ話せ」

そう言ってシモンは聖理央の額にデコピンを食らわす。

「アイタッ! 生首虐待だ! 訴えますよ!」

「こっちは煮え湯をこれでもかと飲まされてるからな。これくらいは当然の報いだ。甘んじて受け入れろ」

更にデコピンを食らわす。

「分かりました。全部話しますからそれくらいで勘弁して下さい」

「……だそうだ、ルーナ。力を弱めてやってくれ」

「チッ」

ルーナが聞こえるように舌打ちし力を緩める。

「ハー……助かった。頭の中身が全部出るかと思った」

「いいか、今度悪ふざけしたら僕はルーナを止めないからな」

「分かりました」

聖理央は即答した。

「じゃあ改めて……どうしてお前がこの世界に転生している」

シモンの再度の質問に聖理央はにこやかに笑ってこう答えた。

「シモンさん……あなたとあなたの魂を召喚した神のミス、そして僕の機転が呼んだ奇跡の転生といった所ですかね」

シモンとルーナが困惑顔で見つめ合った。

「僕のミス?」

「お兄ちゃんを召喚した神さまのミス? そもそも召喚されたってどういう事?」

「そこは後でシモンさんに聞いてください。まず、シモンさんのミスですがそれは僕を道連れにして死んだことです」

「それのどこがミスなんだ? お前という邪悪を倒した事は僕にとっては幸運以外の何物でもないんだが……」

「いいえ、あそこで僕を殺してしまった事自体間違いなんです。僕を殺していなければこちらの世界に来る事はなかったんですから」

「どういう事だ?」

「シモンさんの近くで死んだことによりシモンさんの魂を召喚した神の力に僕の魂も巻き込まれたんです。もしあなただけ死んだのなら僕の魂までも召喚される事はなかったでしょう。肉体があるんですから」

シモンは合点がいったというように頷いた。

「なるほど……それが僕を召喚した神、コルディア様のミスか……」

「そういう事です」

「ミスについては分かった。それでお前はどうやって転生したんだ? 妖術師とはいえ転生なんて簡単に出来るはずがない。それこそ神の力がなければ……」

「その通り、シモンさん分かってるじゃないですか。僕も神の力によって転生させてもらったんです」

「神だと? あそこにコルディア様以外の神がいたというのか?」

「いたというより来たんですけどね。シモンさんが言う所の狂神の大群がね」

「狂神!?」

ここで狂神の名が出てくるとは思っておらずシモンは思わず大声が出る。

「ええ、あなたが転生した後、あそこは戦場となりました。コルディアさん一柱に対し数えるのが馬鹿らしくなる位の狂神の大群。普通なら降参するでしょうがコルディアさんは一柱で奮戦しましたよ。僕みたいな存在でも血沸き肉躍る戦いでした。でも奮戦空しくコルディアさんは敗北、コルディアさんも狂神となりました」

「コルディア様が狂神に……やっぱりそうなったか」

その言葉に聖理央が少し驚いた顔をする。

「あなたを転生させてくれた恩人、いや恩神が敵になったんですよ。少しは動揺するとか絶望するとか激怒するとかこう……何かないんですか?」

シモンは動揺する事なく落ち着いて答える。

「コルディア様本人が言っていたからな、いずれ敵になると。それからこうも言っていた。敵になったら遠慮なくと。最後は聞き取れなかったけど多分コルディア様はこう言ったんだろう。遠慮なく倒してくれと。だったらそれを叶えてあげないと。それが僕をこの世界に転生させてくれたコルディア様に対する恩返しだから」

その答えに聖理央は心底がっかりしたという表情を見せる。

「動揺した姿を楽しみにしてたんですがガッカリです」

「性格悪いな」

「そりゃ僕は非人類ノンヒューマンですから」

「そうだったな。文字通りまともな人間じゃない。狂人と狂神、お互い気が合って転生させてもらったなんてそんなふざけた事は言わないよな」

「事実そうだったら……どうします」

聖理央は人をおちょくるような笑みを浮かべる。まともに話すつもりはないという事か。それなら……。

「ヘイ、ルーナ!!」

「イエス、お兄ちゃん!!」

再びルーナが両手に力を籠めて聖理央の頭を握りしめる。聖理央の頭蓋からミシミシという嫌な音が聞こえた。

「ダ~カ~ラ~ッ、頭を潰そうとするのやめて下さい!! ジョークを聞く余裕もないんですか!?」

「あるかっ!! とっとと続きを話しやがれ!!」

「分かりました! 話しますよ、だから力を緩めて!」

「ルーナ」

ルーナが頷き両手の力を緩め聖理央は安堵の表情を浮かべる。

「さて……今度ふざけたらもう何も聞かない。潰してもらうから覚悟するように」

シモンのドスを利かせた声に聖理央は慌てて「イエス、ユア ハイネスッ!!」と答える。

「さてさて……狂神がどうして僕を転生させてくれたかですが……その前に狂神がどういう存在だと思っていますか?」

「質問に質問で返すか?」

「まあ、いいから答えて下さい」

シモンは目を閉じて考えてみる。今までの戦いを思い出しながら答える。

「狂神は……この世界の神……どういう理由か分からないが……狂気に陥り……自分が作り出したこの世界を滅ぼそうとしている」

「まあ、その通りです。自分が作り出した世界全てを滅ぼす、そう言う目的の元行動していますが理知的でもあります。話してみれば意外と話が通じます」

過去に戦った狂神ファルケ・ウラガンとは確かに会話する事が出来たとシモンは思い出す。

「コルディアと狂神の大群との闘いの後、僕は狂神の頭とも言える存在の前に出ました。虫けらを見る目で僕を消滅させようとしましたがある事を指摘したら、それに反応して僕の消滅させるのを止めてくれました。更に僕が指摘した事を解決する事が出来ると言ったら乗り気になってくれました。それで僕を転生させてくれる流れになりました」

シモンもルーナも訳が分からないという顔になる。

「狂神の悩みを解決する事がどうして転生させる事になるんだ?」

「分かりませんか? 少し考えてみればどうですか?」

馬鹿にしたような言い方にルーナはムッとして両手に力を籠めるがシモンがそれを手で制して止める。そしてシモンはブツブツと喋り始める。

「狂神の悩みがそもそも何なんだ? ……狂神は世界を滅ぼす事を目的としている……それはかなり前から……僕が生まれる前から行われているがそれは今だなされていない。それは何故か……数による侵攻が出来ないから」

狂神は複数現れた事はない。それは創造主の余裕ではなく出来ない理由があるのだとすれば……。

「どういう理由があるのか分からないが狂神は複数同時に現れる事が出来ない……もしかしてそれを解決する手段が……お前を転生させた理由なのか?」

神殺しがどうして狂神に対抗出来るのか。それは何故か狂神が頻繁に現れる事はなく尚且つ一、二体しか現れないからだ。これがさらに多くなれば偽神三体では対抗する事など出来ないだろう。

聖理央に体があったのなら拍手をしていただろう。満面の笑みを浮かべてこう答えた。

「大正解!! まさにその通り!! 僕が狂神が複数、そして安定して出現させるためのアイテムを地上で造って提出しています。未だ開発段階で複数の出現は出来ていないんですがね。それでも評価はいいんですよ」

「……そのアイテムとは何だ?」

「シモンさんも見た事がある筈です」

「僕が? ……もしかして……神核か?」

「続けて正解です」

「神核……あれを……お前が作っただと?」

「ええ」

シモンは覚悟を決めルーナに命じた。

「ルーナ、握り潰せ!! ここで殺しておけば神核を作り出す事は出来なくなる!!」

「分かった!!」

ルーナが両手に力を籠め、困惑顔になる。

「固い!? 握り潰す事が出来ない!?」

「残念でした。時間をかけすぎです」

聖理央の頭から闇が吹き出しルーナの両手は弾き飛ばす。そして上空へと飛んだ。

「まだ、そんな力を隠していたか!?」

シモンとルーナを見下ろし聖理央が言う。

「今回はシモンさんの真似をさせてもらいました」

「僕の真似!?」

「前世でどうやって僕と相打ちになりましたか?」

言われてシモンはハッとした。会話をして時間稼ぎをしながら力を溜める、確かに前世の志門雄吾が行った事た。それを真似るとは皮肉な事をしてくれる。

「最後に一つだけ。神核は国総出で創造しているので僕一人殺した所で意味がありません。では……バイバイキーン!!」

最後にギャクを絡ませ聖理央は首から闇を放出、推進力に変え飛び去って行った。

「みんな、後を追って!!」

ルーナがルーナ・ノワ形態からルーナプレーナ形態に変身。四人のデフォルメルーナ達に後を追わせるが追いつく事が出来ず見失ってしまった。戻ってきてデフォルメルーナとルーナ本体はシモンの前に立ちペコリと頭を下げた。

「……ゴメン……お兄ちゃん……」

「いや、いいんだよ。判断を誤った僕が悪い。情報引き出すなんて生ぬるい事せず殺しておくべきだった……」

シモンはルーナの頭を撫でて慰めるが頭では別の事を考えていた。

狂神が狂神以上の邪悪と手を組む。話からして一つの国に属して狂神の為に神核を作り出している。この情報は絶対に持ち帰らなければならないがそうなると自分がこの世界にどうやて転生してきたのか話さなければならなくなりそうなると神殺しのリーダー、ベネティクト・カルヴァンに伝わる事になる。自分の首が物理的に飛ぶかもしれない。そう思うと胃が痛む思いだった。










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