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魔術師転生  作者: サマト
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閑話 神対狂神

志門を無事転生させ、後はここを離れるだけだったのだが……。

コルディアは神の超視力を用いて前方より接近する者を視認する。距離は星の距離程あるものの光速を超える速度で移動するそれは後数秒しないうちにこの場に到達するだろう。

「クッ!?」

コルディアは神力を用いた光の障壁を展開する。正方形の形を成した光の障壁は遥か彼方まで広がる。次の瞬間、光の障壁は黒い何かと衝突する。ぶつかり合った事によるすさまじい衝撃は足元の雲は散らす。残るは青空のみ。コルディアと衝突した者は空中に浮遊し対峙する。障壁と衝突したものはコルディアが巨人となった時と造形が似ている。ただ、コルディアの体躯が白銀であるのに対し対峙している者は漆黒であった。漆黒の巨人が数十体障壁の前に立っていた。それを悲しげに見上げるコルディア。

「父さん、母さん、兄さん、姉さん、みんな……」

障壁の前にいるのは自分の家族である神々だった。巨人となった時体は白銀のはずなのだが今ここにいる全員が漆黒に染まっている。

不意に漆黒の巨人たちが左右に分かれ、その間をより威厳のある巨人が通る。光の障壁の前で止まりコルディアを見下ろす。

「父さん……」

障壁の前にいるのはコルディアの父であり最高神でもあるディオス・ラーであった。ディオス・ラーは無機質で感情がこもらない声で淡々と命令する。

「コルディアよ、この障壁を解け。世界を滅ぼす為にそなたもあの方の加護を受けよ」

「自分たちで作り上げた世界を自分の手で壊させるなんてそんなの呪いの力を受けるつもりはない!」

ディオス・ラーはコルディアの答えに何の感情も見せず、もう一度問う。

「障壁を解け。そしてあの方の加護を受け世界を滅ぼせ」

「何度言おうと僕の答えは変わりません!」

コルディアの声に決意が籠る。

「ならば仕方ない、皆よ!!」

その言葉に周りの巨人は己の神力を集中する。各々が己を象徴するものを出現させる。巨大な炎に大津波、岩石に竜巻、雷等。それらがコルディアの光の障壁にぶつけられた。障壁は一瞬にして破壊されコルディアに殺到する。コルディアは直撃を受ける前に瞬間移動して攻撃を躱す。このまま超空間を移動して逃げようとするが不意に何かに引っ張られる。そして漆黒の巨人の上空に引き戻された。漆黒の巨人の力で元の空間に引き戻されたコルディアは逃げる事はかなわないと悟る。「ジュワッ!」という掛け声とともに体が光り白銀の巨人に変身していた。変身したコルディアの姿を見上げているディオス・ラーは溜め息をつく。

「愚かな息子よ、我らと戦うつもりか?」

「ええ、あなた方狂った神に世界を滅ぼさせるなんて事はさせない!」

「愚かな……皆の物よ、コルディアを攻撃せよ」

ディオス・ラーの命令に漆黒の巨人は再び自然の力を出現させコルディアを攻撃する。それをただ見ているコルディアではない。コルディアは神力を頭上に集中し光の輪を出現させる。その輪が形を変え無限大の形になる。その途端コルディアの周りに赤い光の壁が出現しコルディアの四方を囲う。漆黒の巨人の自然の力がコルディアの赤い光の壁に衝突し大爆発が起こる。爆炎でコルディアの姿が見えなくなる。これでは生きてはおれまいと漆黒の巨人たちは嘲笑するが爆炎が晴れ、コルディアが無傷で現れると笑う事が出来なくなった。

「コルディア得意の絶対防御壁か。だが、防御だけでは我々を止める事は出来んぞ」

ディオス・ラーの言葉にコルディアは押し黙る。

「? まあいい。皆の物よ、コルディアの絶対防御壁は確かに鉄壁。だが、我らの力を持続的にぶつければいずれは破壊出来る。一斉攻撃を再開せよ」

ディオス・ラーの命令で漆黒の巨人たちは一斉攻撃を再開する。今度は絶えず攻撃を続けてくる。コルディアはその攻撃に耐える。

コルディアにとってはこの展開は好都合だった。この精霊界と人界は時間の流れが違う。長く食い止める事が出来ればその分人界では時間が流れる。そうすればこの漆黒の巨人―――狂神に対抗できる力が育まれる。その為の布陣も打っている。コルディアの目的は時間稼ぎだった。


狂神の攻撃が続く事十二時間とうとうコルディアの絶対防御壁は打ち破られた。あらゆる自然の力がコルディアを嬲る。コルディアの変身が解け人の姿に戻った。傷つき虫の息で倒れているコルディアの元にディオス・ラーが歩み寄る。ディオス・ラーはコルディアに手をかざす。ディオスラーの手から黒いドロドロとした粘着質な何かがコルディアに降りかかる。それはコルディアという存在を犯し、別の何かに書き換える恐るべきものだった。コルディアは自分の内部が何かに書き換えられるのを感じ苦痛の声も漏らす。

「もう少しでお前も我が傘下に加わるのだな。これで世界を滅ぼす事が出来る」

愉悦の声を漏らすディオス・ラー。それに笑みを返すコルディア。

「そんな事にはなりません。世界は必ず守られます。その為の布石は打っています。あなた達は人に滅ぼされる事なるでしょう」

「それについては後で詳しく聞くとしよう」

ディオス・ラーから流れてくる物はコルディアの意識を奪っていく。次に目が覚めた時はコルディアも狂神となる事だろう。

「僕はここまでです……志門さん狂神となった僕を―――殺してください」

コルディアは独白を最後に意識が暗転した。


コルディアとディオス・ラー率いる狂神との闘いは十二時間に及んだが人界では十二年の月日がたっていた。この時間稼ぎにより全生命が狂神に対抗する手段は………



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