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魔術師転生  作者: サマト
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第二十六話 狂竜神対ルーナ・ノワ 決着!!

狂竜神と四機の魔術武器の戦いは続いていた。だが狂竜神は強すぎた。四機の魔術武器も策を用いて奮戦したが丁寧に策は潰され、水の杯、火の杖、風の剣は大地に落とされ今は地の円盤の身が宙に浮き巨竜神と対峙していた。

地の円盤は己を象徴するオレンジ色の光を身に纏わせ高速で回転し始めた。狂竜神がその動きに警戒し、刀を身構える。次の瞬間、地の円盤が狂竜神の視界から消えた。狂竜神が己の勘に従い後ろに一歩下がった。つい前まで狂竜神がいた場所を何かが通り過ぎ地面を切り裂き潜り込んだ。地の円盤だった。高速移動で狂竜神の頭上に移動、さらに落下し狂竜神を襲うが、狂竜神の驚異的な勘に悟られ傷を負わす事が出来なかった。

地の円盤は地面を切り裂きながら再び浮上、不規則な軌道を取りながら狂竜神を襲う。予測不能な軌道であるにかかわらず狂竜神は回避、またはカタナで防御する。防御される度にオレンジ色の光は突破され本体を傷つけられる。ダメージを受ける度にオレンジ色の光が弱まり回転が遅くなる。このまま防御され続ければ自滅を待つばかりである。それでも攻撃を敢行する地の円盤に思わぬ援護があった。地の円盤の周りに赤、銀、水色の光が纏わりつき地の円盤の欠けた部分をコーティングしたのだ。他の三機の魔術武器が地の円盤に力を送ったのだ。

その力を受けた地の円盤は今まで以上に高速で回転、機動力が強化される。今まで以上に早く、さらに不規則な軌道に狂竜神は回避しきれなくなり傷を増やしていくが致命傷には至らない。カタナで防御するが地の円盤は削られる事はなく逆にカタナが切り裂かれてしまう。狂竜神はカタナを体の中に収め無手となる。武器が無くなり棒立ちになった狂竜神を正面から地の円盤が襲う。今の地の円盤は神殺しをなさんとする神殺しの刃に他ならない。神殺しを成さんという地の円盤の意志に狂竜神は単純でそれでいて絶技で答えて見せた。

狂竜神は胸元に迫る地の円盤を両掌で挟み込み止めて見せたのだ。狂竜神は真剣白羽どりを実行し成功させて見せたのだ。地の円盤は狂竜神の両掌から逃れようと回転を早めもがくが万力で押さえらえてるが如く動く事が出来ない。回転による摩擦熱で両掌から煙が出てくるが痛みを感じていない狂竜神は力を弱める事はなかった。地の円盤の回転は徐々に遅くなりやがて完全に止まる。攻撃力が皆無となった地の円盤に狂竜神は遠慮なく己の力を叩きこんだ。両掌から叩きつけられた狂竜神の力は地の円盤の意識を奪うには十分だった。両手の間から地の円盤が落ちる。

四機も魔術武器を全て倒した狂竜神を不意に濃霧が包み込み視界を奪う。狂竜神が煩げに手を振るとそれだけで強風が起こり霧が吹き払われていく。足元に転がっているはずの地の円盤が消え失せていた。視線を前に向けると他の三機の魔術武器が地の円盤を救出していた。三機の魔術武器の内、水の杯は回復と攪乱を得手としていた。倒れたふりをして他の二機の魔術武器を回復させ起死回生の機会を伺っていたのだ。だが、今動いた事により自分たちの生存がばれてしまった。再び狂竜神と対峙する四機の魔術武器。そこへ漆黒の魔法少女が舞い降りた。シモンが同調したルーナ・プレーナだった。

シモンは沈痛な面落ちで四機の魔術武器を見た。

「みんな、頑張ってくれたんだな……」

(そうだよ、私の分身だもの! それよりみんな集まって! 四大元素混合弾を作るよ!!)

ルーナ・プレーナの思念に応え前後左右に四機の魔術武器は配置された。シモンが地水火風の魔術の呪文を唱える。四機の魔術武器から己を象徴する光が放たれルーナ・プレーナの頭上に集まり融合し斑の球体を形成する。それを見た狂竜神が動きを見せる。右手を天に左手を地に向ける。右手から赤、左手から青の光が放たれる。四大元素混合弾を破った技の予備動作だ。これで両掌が合わされれば以前の戦いの焼き回しである。それはシモンにも分かっている。故に空の上で話し合った作戦を実行する。

「じゃあルーナお願い」

(分かった……みんな、合体だ!!)

ルーナ・プレーナの思念に四機の魔術武器がブルリと身を震わせた。喋れないし表情などもない為、感情は分からないが驚いているのかもしれない。沈黙が一瞬あったものの四機の魔術武器はルーナの思念に従う。四機の魔術武器はルーナ・プレーナに吸い込まれれ変化が起こった。ルーナ・プレーナの刀身が頭一つ伸びた。鉄の骨格に密度が増し人工筋肉と血液が増量され、華奢な女性の体格から屈強な男性の体格となり装甲に厚みが増した。魔法少女型から鎧武者型に変わっていた。

「ルーナ……これって合体というより……変身じゃないか?」

体格が急に変わる苦痛に耐えながらシモンが言う。

(えっ……そうなの?)

ルーナ・プレーナ改めルーナ・ノワが驚いたような思念を飛ばす。

「しかし、四機の魔術武器を取り込んでどうして体格が変わるんだ?」

(魔法少女型になるにあたっていらなくなった部品、筋肉、血液はどこに行くと思う?)

「いらなくなった部分で……魔術武器を作っていたのか」

(それが戻れば……あとはどうなるか分かるでしょう)

「エコだな。アイディア賞ものだな」

シモンは素直に感心した。

(もっとホメて、ホメて!!)

調子に乗るルーナ・ノワをシモンは嗜める。

「後で幾らでも褒めるから今は手はず通りに」

(ムゥ~……分かったよ、お兄ちゃん)

不満げながらもシモンに従うルーナ・ノワ。ルーナ・ノワは両掌を上に向けを前方に伸ばす。頭上にあった四大元素混合弾がゆっくりと降りていき伸ばしていた両掌に収まる。四大元素混合弾が両掌に吸い込まれ上腕部までが斑に染まる。それを確認したシモンはルーナ・ノワを操り三体式の構えを取った。ルーナ・ノワと同調しているシモンは両腕が熱くて冷たい、湿っていて乾いていくという間逆の感覚を同時に味わっていた。

(四大元素が象徴する感覚が同時に襲ってくる……気持ち悪い。でも今制御を解いたら狂竜神には……勝てない)

ルーナ・プレーナの魔術の攻撃では狂竜神には勝てなかった。なら魔術の攻撃力に物理攻撃力を合わせれば狂竜神に届くかもしれない。これがシモンが立てた作戦だった。

「作戦というほど物のじゃないけど……狂竜神の予備動作が終わった……来る!!」

旧竜神の両掌が合わさり白く輝く。背部から白い光を噴出し、ルーナ・ノワに突進してくる。

「来た!!」

(来た!!)

ここに来てシモンとルーナ・ノワの同調はさらに進む。まさしく己の体の様にルーナ・ノワは動く。左足を半歩進めしっかり踏み下ろす。腰の回転、伸ばしていた左腕に右手をこすりつけるように打ち出し右足を左足に引き寄せる。中国拳法、形意拳の代表的な技、崩拳と四大元素根光弾の合わせ技、これが狂竜神に勝つ為に導き出したシモンの答え。

繰り出されたルーナ・ノワの右拳と狂竜神の合わせられた両掌がぶつかる。両者の拳が軋みを立てた。狂竜神は痛みを感じないがルーナ・ノワと同調しているシモンには痛みが伝わってくる。技に対する集中力が途切れそうになるが歯を食いしばりそれに耐える。軋みは拳から腕全体に伝わりルーナ・ノワの右腕が破壊される。鉄の骨格がひしゃげ人工筋肉がはじけ血が飛び散る。あまりの痛みに悲鳴を上げそうになるが痛みは奥歯に持っていき噛み殺した。何故なら今こそ絶対のチャンスだからだ。腕の破壊はルーナ・ノワのみではなく狂竜神にも起こっていた。ルーナ・ノワは片腕の破壊に対し狂竜神の破壊は両腕に及んでいた。これで狂竜神はこちらの攻撃を防ぐ事が出来ない。

「マダダァァァ!!!!」

ルーナ・ノワは左足を進め踏み下ろし腰を捻り左拳を打ち出した。狂竜神は咄嗟にインディ・ゴウの力を使い魔法の障壁を作り出すが魔法力を練っていない障壁など紙切れも同然、ルーナ・ノワの拳を止める事は出来ない。ルーナ・ノワの左拳が狂竜神の胸部を突いた。そこはブーケ・ニウスとインディ・ゴウを結合させている力の中心点、つまりヒルの狂神の本体が存在している場所だった。ルーナ・ノワの拳がから流れ込んだ四大元素の力、体を連動させ強化された物理的攻撃力が狂竜神を完膚なきまで破壊した。狂竜神に使われていたブーケ・ニウスとインディ・ゴウの部品は完全に破壊されたが二つの仮面だけは破壊を免れ地面に転がった。

それを確認し気を緩めるとシモンは意識を保つ事気出来なくなり気を失った。極限の集中の中で繰り出された一撃目、腕の破壊による激痛に耐えながら一撃と同等の威力の二撃目、これだけの事をやってのければ体力、気力、魔術力、何もかも使い果たせば当然意識を保てるわけがなかった。

ルーナ・ノワも気を失ったシモンを起こすような無粋な事はしなかった。

(お休みなさい……)

ルーナ・ノワの気遣しげな思念を最後にルーナ・ノワも押し黙り、己の体の修復とシモンの体力回復に努めた。

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