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魔術師転生  作者: サマト
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プロローグ3

「で、その異世界の神様がどうして俺を呼び出したんでしょうか?」

「その話をする前にあなたがどうなったか覚えていますか?」

「それは当然……」

志門は妖術師聖理央との魔術戦で敗北し瀕死の重傷を負う。そんな状態でありながらも魔術力を搔き集め炎の魔法を発動させ自分もろとも聖理央を焼き尽くしたのだ。自分の体を焼き尽くす炎の熱さは今でも思い出せる。

「……何で俺、五体満足でここにいるんだ? 俺が呼び出した炎を聖理央はもちろん俺ごと焼き尽くした筈だ。骨一つ残さない筈なのに? まさか……」

志門は顔を青ざめさせながらコルディアを見る。コルディアはコクリと頷く。

「あなたが思っている通りです。私が召喚できたのはあなたの魂のみです」

「そうですか……俺、やっぱり死んだのか……妖術師や黒魔術師と戦う事を決めた日からまともな死に方をしないと思っていたけどやっぱりまともな死に方じゃなかったか」

志門は深いため息をつく。

「後悔しているんですか?」

「後悔はしていません。邪悪な存在を倒して、困っていた人に感謝されてなかなかいい人生でした。最後に異世界の神様に会えるというおまけもついたしもう思い残すことはありません」

志門はその場に膝をつき手を合わせる。

「ちょっと志門さん、何のつもりですか?」

慌てた様に言うコルディアに志門は顔を向ける。

「何のつもりって俺をその……霊界とか浄土とかパライソとかヴァルハラとかそういう世界に連れて行ってくれるんでしょう?」

「そういう魂の休息を与えてくれる場所じゃないんです。僕が連れて行く所は……より過酷な所かもしれません」

コルディアの言葉に疑問顔の志門。

「どういう事ですか?」

志門は首を捻りながら立ち上がる。コルディアは数回深呼吸して気を整えて口を開く

「志門雄吾さん、僕が管理する世界に転生してもらえませんか? そして世界を救ってもらえませんか?」

「異世界転生して世界を救う?」

「そうです」

コルディアは重々しく頷く。

「志門さんはもう戦う事に疲れもう休みたいと思っているのでしょうがもう一度、もう一度だけ戦ってくれませんか?」

神様に頭を下げられ志門は困った顔をする。

「世界を救ってほしいと言われても……コルディア様が頭を下げるぐらいだからその世界を脅かす存在というのはコルディア様でも敵わないという事ですよね。そんな相手に一魔術師が勝てるとは思えないんですが」

「あなたの異世界の魔術は僕の世界ではとても強い力になります。その魔術ならもしかしたら……」

コルディアは神様であるのに祈るような気持ちで頭を下げ続ける。そんなコルディアの姿に志門は溜め息をつかずにはいられない。

「仮にも神様なんだからそんな風に頭を下げないで下さい。いざとなれば力や権威で従せばいいのに」

「無理矢理言う事聞かせる何てそんな事出来ません! 誠心誠意お願いして納得してもらわなければいい仕事は出来ませんから」

「会社の社長みたいな事言いますね」

「カイシャ? シャチョウ?」

「こっちの話? それより教えてもらえませんか? コルディア様の管理する世界を脅かす存在とは一体どういう存在何ですか?」

志門の質問にコルディアは顔を曇らせる。

「すみません……それは言えないんです?」

「言えないってそれどういう……」

「すみません、それはどうしても言えないんです。それを知ってしまうと志門さんに多大な迷惑がかかるかもしれないんです」

コルディアの顔はみるみる青ざめていく。全身から多量に汗が流れ落ち、額を濡らす。言おうとすること自体に苦しんでいるようである。

「……そうか、その存在の事を言うのは禁忌とかそういうのに抵触するんですね?」

「……話が早くて助かります」

志門は溜め息をついて腕を組む。

「だとすると本当に厄介だな。そんな存在と戦うとなると悠々私的なスローライフ何て送れそうもないな」

「すみません」

コルディアは重ね重ね頭を下げる。

「だからいちいち頭を下げないで下さい。その存在については転生してから調べるとして……転生するにあたって幾つか条件があるけどいいですか?」

「はい、僕が出来る事なら何でもって……転生していただけるんですか!?」

コルディアの顔がパァッと明るくなった。その顔が見れただけでも志門はよかったと思う。

「神様にこうも頭を下げられたら応えるよりないでしょう。一魔術師が異世界でどこまで通用するかも試してみたいですから。そこで相談なんですが」

志門は人差し指を立てる。

「転生しても俺の記憶と知識は消さないで下さい」

「志門さんの魔術師としての知識と戦闘能力を期待して転生させるので当然そうさせてもらいます」

さらに中指を立てる。

「転生するって事は赤ん坊からのやり直し何だろうし、そうなると危険な場所に転生させるのは勘弁して下さい。せめて戦闘や魔術に耐えられる年齢までは生き残れるような場所に転生させて欲しいです」

「それは配慮させてもらいます。それで戦闘や魔術に耐えられる年齢というのは?」

「十五……いや十歳まで何とかしてもらえたら何とか出来ると思う」

「分かりました、その年齢までは何も起きないよう努力します」

「後は……転生する世界の情報が欲しい」

「そうですね……」

コルディアは考えながら話し始める。

種族としては人以外にもエルフやドワーフと言った亜人、獣の力を持った獣人などがいる。

魔法や神聖術と言った超常的な力が発達している。その為志門の世界の様な科学が発達しておらず文明レベルがかなり原始的、中世レベルとの事。

人に害なす存在としてクマやイノシシ等の動物、それらの獣が超自然的な力、魔力を得て狂暴変質した存在、魔物がいるという事。

「とりあえずはそんなところですかね」

コルディアは指折り数えて更に話す事はないか考える。

「分かった、ありがとう」

志門はそこで話を切り上げる。さらに細かい事は転生してから色々調べるとしようと考える。

「ところで……俺の世界でのお話しでは異世界に転生する時神様はチート能力というか何らかの加護を授けてくれるんだがそういうのは出来ません?」

「すみません、それは出来ません……それをすると後々厄介な事になるかもしれないので」

「そっか、ならいいです。俺ももし出来たらいいなぐらいの気持ちで聞いたんで。それに記憶と知識を次の人生に持ち込めるのは十分チートだしこれで十分」

「すみません」

「だから謝らなくていいって」

「他に聞きたい事はないですか?」

「特にはないですね」

「なら、早速志門さんを転生させます」

そう言うと志門の足元が淡く光り始める。淡い光は徐々に光量をまし光の柱となり空を貫く。それと同時に志門の体がふわりと浮きあがり空へと昇っていく。心配げにこちらを見上げてるコルディアを安心させる為に手を振る志門。それを見たコルディアが泣きそうな表情になったかと思ったら大声でこんな事を言ってきた。

「そちらの時間で十年は頑張りますがそれ以降は間違いなく僕なあなた達、人の全生命の敵になります。そうなったら遠慮はいりません。僕を―――」

最後の方は何を言っているのか聞こえなかった。上昇する速度が上がり声が届かなかったのだ。今まで見えていた青空は暗闇に変わった。だが志門には風景が切り替わった事に気を向ける余裕はなかった。

(十年頑張るって言っていたけど何をするつもりだ。その後、敵になってしまうとはどういう……)

そこで志門の意識は途切れる。次に意識を取り戻した時、志門はオギャーという鳴き声しか上げる事しか出来ず手足を動かす事も出来ない。唯一機能しているのは聞く事だけのようだが、何語だか分からない言葉で喋っている。声色から喋っているのが女性である事しか分からない。そんな中自分を優しく抱き上げる感触があった。薄目を開くとよく表情が見えないのだが感触で女性であることが分かった。その女性が自分の母親である事が何故か分かった。志門はたった今この女性から生まれた事が、転生が無事成った事を悟った。そして月日は流れ十二年―――











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