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魔術師転生  作者: サマト
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第二十二話 狂竜神対三号機 内面世界戦終結、そして……

狂神龍はシモンの逆恨み的な気迫に気圧されていたが頭を振って気迫を振り払い、大きな顎を開く。そこに蠢く無数のヒルを吐き出す。吐き出されたヒルは空中で形を変え槍となり三号機に迫る。シモンは迫りくる槍を防御すべく身構える。

「今の私ならそんな事する必要ないよ」

少女の声が脳内に響く。一体何をと聞く前にそれは動いた。三号機から射出された四つのそれは三号機の四方を囲い不可視の障壁を築き槍をはじき返した。狂神龍は障壁を破壊せんと同じ場所に槍を射出するが障壁はびくともしなかった。

「凄い……」

シモンは呆然として呟いた。

「しかし……障壁を発生させている物は一体?」

呆然としながらシモンは周りを見る。四方に浮いている物、それは漆黒の短剣、杯、杖、円盤だった。それは魔術師にとってはなじみ深い物だった。

「まさか……魔術武器なのか?」

「お兄ちゃんの記憶を読み取った時、この武器の記憶もあったから作ってみました。本当は魔法少女が使う杖を作ろうと思ったんだけどそれだとお兄ちゃん、精神的ダメージ受けそうだから……」

このネタでからかわれるづけるのだろうかと思うと頭が痛くなってくるがとりあえず「お気遣いありがとう……」と言っておいた。気を取り直して上空の狂神龍を睨みつける。この形態ならば魔術が使えるはずである。三号機は右手人差し指、中指を伸ばし後は折り曲げ剣印を作り指先を狂神龍に向ける。三号機の今の形態なら魔術が使用出来るはずである。三号機が空に五芒星を描こうとしたがその途中で指先が止まる。狂神龍に動きが見えたからだ。それはは奇妙な行動だった。狂神龍が己の尻尾に噛み付き輪を作ったのだ。己の尻尾を噛む龍、その姿はウロボロスを連想させた。

「何をするつもりだ?」

狂神龍は頭で造った一の力を尻尾から体に通して頭に戻しまた尻尾に流す。そうやって循環を繰り返し力を強めていく。狂神龍の体から紫電が迸る。散ろうとする紫電を中央の空間に集め三号機に向かって射出された。射出された白光が障壁とぶつかり火花を散らす。この攻撃に障壁により障壁にひびが入る。

「マズい!」

シモンは三号機の周りの魔術武器に魔術力を通して障壁の強化を図る。魔術力を流している間にもひびは広がり続ける。もしこの障壁が壊れたら三号機は光に飲まれ魂一つ消失するだろう。不安を打ち消さんと雄叫びを上げながら魔術力を通す。不意に狂神龍からの攻撃が止んだ。その隙に障壁を修復した。ホッとしたのもつかの間、狂神龍が再度力を循環させ始めた。一度目の攻撃は様子見、二度目の攻撃が本番なのだろう。今度こそ障壁を突破し三号機本体に攻撃を届かせるだろう。

「このままじゃ駄目だ。防御より攻撃に転じないと」

シモンは周囲に浮かぶ魔術武器の内、杖を手に取った。杖は火を象徴する魔術武器だ。杖に魔術力を通すと杖の先に赤い光が灯る。杖の先を狂神龍に向け呪文を唱える。

「ベイ・エー・トォー・エム」

三号機の周りに火球が三体現れる。その火球はシモンの意志に従って狂竜神に射出される。だが三体の火球は狂神龍が体から放つ紫電に散らされ消失してしまう。

「ダメか!?」

「他の魔術も試してみれば?」

少女の声にシモンは首を横に振る。恐らく他の地、水、風の魔法も恐らく通用しない。

「何か手段はないのか?」

絶望的な声を上げるシモンに少女の声が提案する。

「……お兄ちゃん……ここから逃げて」

「出来る訳ないだろう。そんな事したら君は……」

「……わたし……死んじゃうだろうね。それにお兄ちゃんが付き合う必要ない。早く逃げて」

シモンは頭を振る。

「自棄を起こさないで。何か考えるから……待ってよ」

「迷ってる暇はない……時間がないんだよ!」

そんな言い合いをしているうちに狂神龍がひと際強く輝き出す。再び白光を照射する準備が出来た様だ。

「早くっ!!」

少女の思念が合図となり狂神龍が白光を照射した。先程よりも強力な白光は今度こそ障壁を破壊し、シモンごと三号機を消滅させる事だろう。迫りくる白光を前にシモンは己の死を覚悟した。だがシモンとは別の、魔術師としてのシモンはまだ諦めてはいなかった。咄嗟に四つの魔術武器に魔術力を通し結界を作り出したのだ。外側から地水火風の属性を持った四層の結界、そして三号機が常に張っている障壁、合わせて五層の結界を張ったのだ。まず表層の地の結界と衝突する。白光は地の結界を難なく破壊し、二層目の水の結界は白光の熱による一瞬で蒸発する。三層の火の結界打ち消され、四層の風の結界は白光をほんの僅かだが白光を屈曲させるが防ぐには至らない。だが四層の結界は突破するのに力をかなり削がれており白光は障壁を突破する事は出来なかった。白光が消えうせお互いに沈黙が訪れる。そんな中シモンから安堵の息が漏れる。

「……た、助かった……」

「咄嗟にあんな結界を作る何て……」

少女の驚きの思念がシモンの脳裏に響いた。

「咄嗟にやったにしては上出来だった」

「こんな奇跡何度も起きないよ。今のうちに逃げてお兄ちゃん。狂神龍が力をチャージし終える前に」

空にいる狂神龍を見上げるとゆっくりと輝き始めている。再度力をチャージしているようだ。今度の攻撃は五層の防御を超える攻撃を繰り出してくるだろう。今、逃げなければ今度こそシモンは白光に飲まれ消滅する事だろう。そうなる前にと少女はこの内面世界から逃げるように即すのだがシモンは……。

「逃げない」

「お兄ちゃん、意地を張ってる場合じゃないよ!!」

「まあ待ってよ。逃げないのは勝算があっての事だし」

「勝算があるって……本当に?」

「咄嗟にだけどさっき四層の結界を作った時の思いついた事があるんだ。結果はとくと御覧じろってね。まあ見ててよ」

シモンは少女を安心させようと陽気に言うが少女は不安を隠しきれない。心配げな雰囲気が伝わってくる。

「ともかくやるから見てて」

シモンはそう言うと目を閉じ呼吸を整える。四拍呼吸を行い、肉体、精神共にリラックスさせ体内の魔術力を練る。魔術力は三号機にも循環され力が高まっていく。魔術を行う準備が整うとシモンは空間に風の五芒星を描き呪文を唱える。

「イクス・アル・ペイ」

すると三号機の周りに浮いていた魔術武器のうち黒い短剣から水色の光が漏れ始める。魔術に置いて水色は風を象徴している。

次に火の五芒星を描き火の呪文を唱える。

「ベイ・エー・トォー・エム」

黒い杖から赤い光が漏れ始める。赤は火の象徴色だった。

更に水の五芒星を描き「ヘイ・コー・マー」、地の五芒星を描き「エン・アー・エン・ター」を唱える。黒い杯からは銀色の黒の円盤からはオレンジ色の光が漏れ始める。銀は水、オレンジは地の象徴色である。

三号機の周りに浮遊する魔術武器から漏れ始めた四つの光は三号機の頭上に集まり絡み合い斑の球体を作り上げた。

球体から凄まじい力の高まりを感じた狂神龍は危機感を覚える。己の力の循環を早め白光を発射した。その一秒後にシモンは斑の球体を発射した。三号機の目の前で狂竜神の白光と斑の球体が衝突した。白と斑がぶつかり合いお互いを削り合う。全てを白に塗り潰す白光と四色に塗り替える斑の光、均衡が保たれたのは一瞬だった。斑の球体が白光を食らう。しかも白光を食らいより巨大な球体になっていき狂神龍を飲み込んだ。斑の光の中で狂神龍は地水火風に変化する。そして地に体を抉られ、水に溶かされ、火に焼かれ、風に切り裂かれ消滅した。狂神龍を飲み込んだ事により斑の球体も消失した。

戦闘があったのが嘘のように沈黙が支配していた。

「……やった……」

シモンがポツリと呟くと三号機が膝をついた。そんなところも同調している様だった。

「……本当に倒しちゃった……」

呆然と言った感じの思念が伝わってくる。

「信用してよかったでしょ」

「そうだね……お兄ちゃんを信用してなかった。ゴメンなさい」

「いいよ。僕を心配して逃げてって言ってたんだから。謝る事ないよ」

「……アリガトウ」

少女からの深い感謝の念が伝わってくる。誰かに感謝されるのに慣れてないシモンは照れるのを隠すようにぶっきらぼうにこう言った。

「これでお役御免だね。僕は外の世界に戻る。あっちでまた会おう」

シモンは外の世界に戻る様に念じる。それだけで元の世界に戻れるのだが。

「ちょっと待った!!」

少女の思念に止められた。耳元で大声で叫ばれたようで頭が痛くなる。

「な、何で?」

「頼みたい事があるからちょっと待って!」

「頼みたい事ってナニ?」

実際に大声で叫ばれているわけではないのだがシモンは思わず耳を塞いでしまう。

「ああ、ゴメンね。大声出して。でもこれは重要だからお願い待って」

「……僕に出来る事だったら何でもするけど……」

一呼吸おいて少女はこう言った。

「……私の名付け親になって」

「名付け親?」

少女の突拍子のない頼みごとに理解が追いつかなかった。








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