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魔術師転生  作者: サマト
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プロローグ2

「ここはどこだ……?」

眼を覚ました志門雄吾は開口一番呟いた。

妖術師聖理央との闘いにより瀕死の重傷を負った志門は、命の灯火が消えゆく中、必死に魔術力をかき集め火の魔術を発動、一千度の炎を放射し聖理央を焼き尽くした。近距離で放射された炎は志門も巻き込み血も肉も骨もそして魂すらも焼き尽くした。なのに自分はここにいる。ここにいると認識している自分がいる、今ここにいる自分は何者なのだろうか? しばらく考え、「……とりあえず保留だ……」

考える事を放棄した。

志門は改めて周囲を見渡す。志門がいる場所は一言で言うと空の上だった。上を見上げるとどこまでも広がるまっさらな青空。足元は何と雲。踏むと弾力があり、踏み抜いて落ちるという事はない。なんともメルヘンチックな光景だがこういう光景は志門にとって珍しいものではなかった。西洋魔術師である志門はアストラル体を投射―――つまりは幽体離脱をしてアストラル界―――物質世界に隣接する霊的な世界―――へ来た時にはこういう光景をよく見る。でも、今自分はアストラル体投射をしているわけではない。するとここは一体?

その場で腕を組んで考える。

「……あのう、すみません」

突然後ろから申し訳なさそうに声をかけられる。

声にならない悲鳴と共に後ろを振り向くとそこには一人の青年が立っていた。髪の毛は銀髪で瞳が赤い。年の頃は二十代前半、志門より少し若い感じだ。首から足首までを包み込む長いガウンを身に纏っている。

異国の大人しそうな青年という感じだがそんな青年に志門は恐怖を感じていた。志門の様な職業の人間にとっては後ろを取られるというのは命とりなのである。だから志門はほんのわずかな気配でも察知出来るよう修行している。その察知能力は動物のそれと言ってもいいぐらいなのだが青年はそれをやすやすと突破し後ろを取った。青年が殺る気だったら間違いなく殺されていた。それ故の恐怖だった。

「えっと……大丈夫ですか?」

志門の驚愕と恐怖の表情を見て青年が心配そうに言う。志門は青年の表情を見て悪意がない事を悟り深呼吸をして気を落ち着かせる。

「あ、スマナイ。ぼんやりしてしまって。ここがあまりにも不思議な空間で……誰もいないしどうするかと思案してたら何の気配もなしに突然後ろに人が現れて……こんな怪しい空間に人が一人……どう考えても怪しい……アンタ一体何者だ!?」

喋っているうちに考えがまとまっていき、先ほどの恐怖も忘れ青年に詰め寄る。

「そんな詰問口調で詰め寄らないでください、怖いですから」

「怖いとは失敬な! 俺はそんなに怖い顔してるか?」

二人は間近で見つめ合いしばらく沈黙する。

「……そうでもないですね。愛嬌のがある、一目でいい人だいう事がわかりますよ」

志門から気が抜けてため息をつく。

「そりゃどうも……改めて聞きたいんだがここどこであんたは誰だ?」

青年はコホンと軽く咳き込み居住まいをただし口を開く。

「ここは精霊界と呼ばれる場所で僕は神様です」

その言葉に志門は理解が追い付かずポカンとしてしまった。青年の言葉を頭の中で咀嚼して理解してプッと吹き出した。

「そりゃあその身から強い力は感じられるけど神様はないだろう」

その言葉に青年はムッとする

「失礼ですね、どうしたら信じますか?」

「何か力を見せてくれたら信じるよ」

青年を軽んじて出た発言だったが青年は思案顔になる。そしてポンと手を打つ。

「じゃあ僕が神様だという証拠をお見せします」

青年は目を閉じ右手を高々と上げ声を上げる。

「ジュワッ!!」

「ジュワッてそれじゃM78星雲からきた……」

志門は最後まで言う事が出来なかった。青年のジュワッという掛け声と同時に体が光り輝き体が少しずつ大きくなる始めたのだ。元々の身長が百七十センチくらいだったのだがそれから三メートル、四メートルと徐々に巨大化していき約二十メートルくらいで巨大化が止まった。

人型ではあるが明らかに人間ではない表皮が白銀の巨人。白銀の巨人から発せられるエネルギーは青年の物とは比べ物にならない。その強大なエネルギーは志門の魔術中枢を刺激し疼痛を起こさせる。

(これが青年の真の姿か!? これなら神様というのも頷ける……)

「どうですか、これで僕の事を信じますか」

「……わかりました、信じます」

満足げに頷いた白銀の巨人は再びジュワッと掛け声を上げる。その途端体がみるみると縮み、元の青年の姿に戻る。

「あなたが神だという事は分かりました……だとするとあなたはどこの神様なんですか? 日本の神様じゃないですよね? だとするとキリスト教、ギリシャ神話、ケルト神話、北欧神話、エジプト神話、メソポタミア神話、イラン神話……いや、それらの神話に出ってくる神様とは毛色が違う? いいやそれよりなによりその神様が私に何の用があるんでしょう それ以前に神様、あなたのお名前は? まずはそこを教えてはくれませんか?」

志門に矢継ぎ早に質問してきた。だから青年は志門の口調が代わっている事に気が付かなかった。本物の神様に逆らう気など起こるはずもない。相手は自分など相手にならない格上の存在、気分を損なえばこちらを存在を消失させる事など朝飯前なのだろうから口調が代わるのも当たり前である。矢継ぎ早に質問するのも失礼なのだがそれぐらいは神の慈悲で許してほしい。

「僕はコルディアと言います」

青年の神様―――固有名コルディアの名前を聞いてしばらく考える。

(コルディア何て神様聞いた事がないな? 俺が知らないだけでどこかにはいるかもしれないないけどかなりマイナーな神様だよな)

思案顔の志門にコルディアは恐る恐る声をかける。

「あのう、志門さんどうかしましたか?」

志門はコルディアに頭を下げる。

「私は一魔術師として色々な神話や伝承も一通り学んでいるのですがコルディアという名の神様は聞いた事がありません。失礼とは思いますが教えてくれませんか、あなたはどこの国の神様なんでしょうか?」

それを聞いたコルディアは合点がいったというように頷くと志門を安心させるように微笑む。

「志門さんが僕を知らないのは当然だと思います。僕はあなたの世界のどの神話、伝承にも出てきませんから」

「どういう事ですか?」

「僕はあなたのいた世界とは違う世界の神、いわば異世界の神ですから」

異世界の神という言葉が理解できずポカンとする志門の顔を面白そうに見つめるコルディア。その表情は神様らしい威厳はないがホッとする。志門はそんな失礼な事を考えていた。。










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