表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術師転生  作者: サマト
166/168

第百五十九話 狂神の望みと次の戦闘

「コルディアがカルヴァンさんを何度も殺している!?」

時を遡るというチート能力を持ったカルヴァンがコルディアに勝てる糸口を見出す事が出来ないというのが信じられなかった。

「ああ、俺の死因その時々で違う……人に裏切られて死ぬときもあれば病気で死ぬ、その他原因色々あるが長く生きれた場合だけ同じ死に方になる。それがコルディアとの戦いだ。俺がどれだけ強くなろうとも奴には絶対勝てない……」

「そんな……」

シモンは狼狽えた様に言う。これまで狂神を何体も倒しているがそれは末端の弱小神。上位の狂神となるとなす術がないのかもしれない。そう考えているのが顔に出てしまっていた。それに気が付いたカルヴァンは落ち着かせるように諭す。

「……何度も負けている俺が言うのもなんだが戦いは単純な力の差でする物じゃない。時には思いもよらない方法で勝利を掴み取る事が出来る場合もある。そうiう意味では俺よりむしろシモン君の方が適任かもしれない……意外性なら俺よりあるからな」

「僕がですか……」

「そこを踏まえて上で質問だ……二度目の人生を与えてくれた、そんな神が敵に回った。恩人、いや恩神を倒す事が出来るか? もし出来ないというのなら……」

「出来ないというのなら?」

シモンは思わずオウム返しに聞いてしまう。返答次第ではどうなるか分からない、シモンは身構えるが思いもよらない返答が来た事に唖然としてしまう。

「……特別に神殺しから拔けるのを許可するがどうする?」

狂神に対する戦力を自ら手放すという選択をカルヴァンがするとは思わなかった。

「アナタがそんな事を言うとは……思いもしなかった」

「俺を時間の檻……いやタイムリープというんだったか? ともかく俺を普通に死ねる体にしてくれた礼だ。死ぬ事が出来ないバケモノを普通の人に戻してくれたんだからこれくらいは許してやらないとな」

「でも……僕は戦う事を止めません。特にコルディアとは絶対に戦います」

シモンの迷いのない答えにカルヴァンは意外そうな顔をする。

「……恩のある神とは戦わない、戦えないと言うと思ったんだがな……こうも迷いがないのは逆に気になる。どうしてそこまで迷いもなく戦うと言えるのか……教えてくれるか?」

カルヴァンの表情が変わった。この迷いの無さはシモンを転生させたコルディアの罠ではないかと考えているようだ。疑り深いと思ったがカルヴァンはもう時間をループする事が出来ない、今度死ねばそれが本当の死となる。狂神を倒し世界を救い最後を良いものにしたいと思うならば怪しきを排除したがるのは当然の事だ。だからシモンはカルヴァンの眼を見て真摯に答えた。

「僕を転生させてくれた神―――コルディアがそれを望んでいるからですよ」

「望んでいるって……コルディアが!? そんなバカなっ!?」

「カルヴァンさんにとってコルディアは不倶戴天の強敵でしょうが僕があったのは狂神なる前のコルディアですから」

「どういう事か聞かせてくれるか?」

「ええ……僕が転生する直前、コルディア本人が言ったんです。再び出会う時自分は敵になっている。その時は迷わず……ここで僕も意識は途絶え次に目を覚ました時僕は赤ん坊で母の腕の中たった……最後の方は聞き取れなかったんですが何を言わんとしていたかは容易に想像がつきます」

「そうか……そうだな」

シモンとカルヴァンはお互い意を得たりという感じに頷くがルーナ・カブリエルは訳が分からず置いてきぼりだ。

「二人だけ納得してないで私にも教えてよ」

ルーナ・カブリエルが不満顔で訴えるとカルヴァンがやれやれと言った感じでため息をつく。

「ルーナの人格はやはり女性の物なんだな。こういう男の世界が分からないとはな」

「ウウ~ッ」

ルーナ・カブリエルがカルヴァンを睨む。涙目で頬を膨らせて睨むその姿は何の迫力もなく微笑ましい。

「ルーナをいじめないでくださいよ……というか僕も予想でしかないんだけど多分間違いないと思う。ルーナ、コルディアが僕に言おうとしていた事、それは―――」

「それは……」

「―――倒してくれなんだよ」

「倒してくれって……お兄ちゃんに倒される事を望んでいるのっ!? そのコルディアって狂神はっ!?」

「間違いないだろう」

カルヴァンが確信を持って頷いた。

「あの野郎……コルディアは俺がどれだけ強くなろうとも倒す事が出来なかった。今考えると何か思いもよらない力に守られているようなそんな感じがあった。運命に守られてるとかのようなそんな偶然が俺の剣を届かせなかった。もしかしたらコルディアは自分を倒す事が出来る相手を決めているのかもしれない」

「カルヴァンのオジサンの時間をループさせる、因果律を操る……神であるとしても尋常じゃない。そんな相手と戦う何て今更ながら恐ろしい……」

ルーナ・カブリエルは言いながら身震いする。召喚魔術で大天使カブリエルを召喚、すなわち神の御使い、神に近しい存在を身に纏っているがそこまでの力を有する事は出来ていない。今更ながら戦っている者との力の差を感じ恐怖しているのだ。

そんな風に震えるルーナ・カブリエルの頭をシモンが優しく撫でる。

「ルーナ、大丈夫……とは言えないけど君は一人で戦う訳じゃない。僕も一緒に戦うしそれで勝つ事が出来なかったらその時は僕も君も死んでいる。誰かに責められる事もない、気に病む事もない。だから安心して戦おう」

シモンの後ろ向きな自信にルーナ・カブリエルもカルヴァンもずっこけた。

「お兄ちゃん……」

「シモン君……負ける事前提で話してくれるなよ」

「それぐらい力が抜けた方が力を出せるってもんですよ。ルーナ、少しは安心したでしょ」

「ウ、ウーン……」

ルーナ・カブリエルの中ではイマイチのようで素直に頷く事が出来ない。だが少しは落ち着いた事は間違いない。

「……まあ、勝とう、世界を救おうと気負って実力が出せなくなるよりはまだましか……コルディアが出現した時は丸投げする事になるだろうがその時は頼んだぞ」

「任されました。ルーナも頼むよ」

「ウ、ウン。私頑張る」

ルーナは少し戸惑いながらもガッツポーズを作る。

「さて、これで話も終わったし二人は地上へ戻って……」

「ちょっと待って下さいっ!!」

シモンがカルヴァンの言葉を遮った。

「何をイイ感じで終わらせようとしてるんですかっ!! まだ表面上の事しか聞いていません。全てを話してくれないと困りますよっ!!」

カルヴァンが嫌そうな顔をしてシモンを見る。

「全てって……他に何を聞きたいんだ?」

「カルヴァンさんが如何にしてそこの女神さまと出会い如何にてタイムリープ能力を獲得したのかとか、何より聖霊石は一体何で出来ているのかとか色々ですよ」

「ウーン、話すのか……面倒くさいな」

「面倒くさいって……」

カルヴァンの気まぐれな態度にシモンは頭を悩ませ困ったように頭を掻いたその時だった。地の底まで届くかのような衝撃波が体を震わせた。

「この振動はっ!?」

「どうやら上で何かが起こっているようだな」

カルヴァンは険しい表情で上を見上げた。戦う戦士の顔になっていた。

「俺は先行して上に行く。シモン君とルーナは後から来てくれ」

「行くなら一緒に……」

「俺が開けられる空間の穴は人が数名通り抜けるのが精一杯だ。上での戦闘が狂神の襲来であった場合、偽神が必要となる。だから二人で地上に戻ってきてくれ。それまでは俺や皆が食い止める」

「分かりました。ルーナ行くよ」

「ウン」

いうや早くシモンはルーナ・ノワに駆け出した。ルーナ・カブリエルが空間を飛びいち早く聖霊石の中に戻る。聖霊石が強く輝き出し人工血液が勢いよく循環し始め魔術力が巡り起動準備が終わる。シモンが操縦槽に入り込み始動キーである言葉を叫ぶ。

「同調開始っ!!」

シモンとルーナの意識が同調しルーナ・ノワの巨体が己の己の身体の様に操れるようになる。

「行くぞっ」

跳躍すると同時にルーナ・ノワからルーナ・プレーナに変身し己の身体から作り出した四大魔術武器の力場を利用して飛行し洞窟内を高速で移動し地上を目指した。

カルヴァンはシモンとルーナを見送ると眼前に空間の穴を開ける。チラリと眠り続けている女神を見て己が開けた空間の穴の中に消えた。洞窟内は先程まで戦闘があったとは思えないほどの静寂に包まれ女神は嫌そうに顔をしかめながらも眠りについた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ