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魔術師転生  作者: サマト
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閑話 狂神侵入 IからAへ

シモンの薔薇十字の祓いによる浄化の光に焼かれ体を構成するヒルの九割を失ってしまった狂神はただひたすらに逃げていた。地下へ地下へと潜っていた。

(あの光は一体何なのだ? 我より何万倍も強い狂神を屠る事が出来る魔法の人形に呪いの武器、そして我を焼いた不可思議な魔法の光……そんなものを作り出すとは……人とはかくも恐ろしい……)

この狂神は他の狂神に比べれば遥かに弱い。人数と装備があれば人でも倒せてしまうぐらいだ。それ故より強い狂神の腰ぎんちゃくになり、おこぼれで人を食らうコバンザメみたいな狂神だった。己がどんなに強くなったとしても人という存在を軽視しないし神特有の慢心もない。相手が強ければ逃げに徹するしたたかさもある。強さではなく生き残るという事で言えば最高の狂神と言えるかもしれない。

(人を滅ぼすなど他の狂神に任せるべきだ。時々人を食む事が出来ればそれでいい。我は逃げる……)

逃げる事を選択し地面をひたすら掘っていたのだが不意に岩盤の抵抗がなくなった。

(底に出たのか? いや違う、ここは……)

サンサンと降り注ぐ日の光。穏やかな風。植物が生い茂り生命に満ち溢れているこの場所は……。

(ここは神界か? いいや違うここは……)

そこはサフィーナ・ソフの居住区にある治療院の庭だった。ひたすら地下へ掘り進んでいたのだがどこをどう間違った他のか上に向かって掘り進んでいたようである。

(我は間抜けか……こんな魔の巣窟にいつまでもおれぬ、早く逃げねば)

再び地面を掘ろうとした狂神に陰が下りる。ふと見上げると栗色の髪を三つ編みにした少女と目が―――ヒルであるため目がないのだが―――あった。少女の顔色が変わりが悲鳴を上げる為口を開く。だがその前に狂神は動いた。数百匹のヒルが素早く絡み合い棒状になり少女の足を払い転倒させる。更に体をひも状に変化させ少女の手足を縛り拘束する。数匹のヒルが額と下顎を押さえ口を無理矢理開かせ、そこに一匹のヒルが入り込む。少女はヒルを吐き出そうとえずくが吐き出せずもだえ苦しみ気を失った。動かないのを確認して狂神は少女の拘束を解く。次の瞬間少女が目を見開き体を起こした。

「体の乗っ取りは成功したか……」

少女の体内に入った狂神は中枢神経を乗っ取り体の支配権を奪い取ったのだ。少女に悲鳴を上げられ誰かが来たら厄介だと思い咄嗟に体を奪ったのだがそれからどうするか全く考えていなかった。

「とりあえずこの体を操って逃げるか……我が分身たちよ、この体に入れ」

少女―――狂神は口を開くとそこに数百匹のヒルが一斉に入り込む。全てを飲み込み一息つくと狂神は少女の記憶を検索し始める。逃走経路を探る為だったが……

(この体の個体名はイネス・モース。母親は狂神に食われている。父親と一緒にサフィーナ・ソフに移住。父は神殺しの一員、今回の狂神との闘いで負傷しこの治療院で治療……ん? ここではあの男も治療を受けているのか……そうだ!)

「いい事を思いついた……」

思わず口に出ていた。少女―――イネスの顔には邪悪な笑みが浮かんでいた。イネスの体を奪った狂神はイネスの記憶にある、とある男性が治療を受けているだろう部屋に向かった。

目的の部屋には簡単に入る事が出来た。その部屋のベットに横たわっている男性は意識を失っており都合がよかった。

「お前の体……貰った!」

イネス―――狂神は口を開き本体である数百匹のヒルを吐き出した。



一時間後、イネスはある男性が収容されている部屋の入り口で倒れているのを発見される。イネスには一時間前後の記憶はなく自分がどうして倒れていたのか分からなかった。だからその部屋に治療を受けていたある男性がどこに行ったのか分かる筈がなかった。

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