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魔術師転生  作者: サマト
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第百十三話 狂神が……試している!?

シモンの複製体体白騎士、黒騎士の戦いは膠着していた。

黒騎士と白騎士の苛烈な攻撃を前にシモンの複製体は十二の翼を防御に使うしかない。背の翼を足元に移し己の身に包み込み花の蕾のようになり全方位攻撃からを守る。翼はともかく肉体の強度は普通の人間とほとんど変わらないのだ。

翼と翼の隙間から白光を放つがそれでは威力が足りない。防御力の高い白騎士はもちろん黒騎士の鎧さえも溶解する事が出来ないでいる。

白騎士も黒騎士も疲れという物を知らず延々と大剣を振るえるし、シモンの複製体から伸びる光の翼もそう簡単に貫けるものではない。どちらも有効打が出せずに膠着状態が続いている。この膠着状態を打開すべくシモンの複製体はシモン本体から吸い上げた記憶の中から打開策を検索する。そしてその方法を見つけシモンの複製体は実行する。

まず翼と翼の隙間から威力を高めた白光を放出する。これにより白騎士、黒騎士は後ろに飛び大きく距離を取る。その隙に己が身に纏う十二の翼を変形させる。蕾をギリギリと捩じる。その様は銃口のようだ。そして蕾の先端を白騎士、黒騎士の方向へ向ける。

攻撃が止んだのを見て白騎士、黒騎士は光の蕾に対して突進する。蕾の中で内が行われているのか知らずに。

シモンの複製体は蕾の中で五芒星を描き、たどたどしく呪文を唱えていた。

「……ベ……イ……エー……トー……エム」

言霊と象徴から引き出された赤い光は十二の花弁に装填され花弁に沿って高速で走る。螺旋を描き先端で合流し解き放たれる。螺旋を描きながら走る赤い光は白騎士に向かっていた。大剣を目の前に掲げ赤い光を防御する。だが大剣は赤く染まり一瞬にして飴のように熔解、その後ろの白騎士本体にも直撃し赤い光は防御力の高いはずの白騎士の鎧を貫通した。その後蕾の先端は複雑に動かしレーザーカッターよろしく白騎士を切断した。

超高熱の熱線を放ったまま蕾の先端の位置をずらし黒騎士にも赤光が直撃、白騎士より防御力の低い黒騎士は抵抗など出来るはずもなく一瞬にして切断された。

切断されてもまだ生存していた黒騎士に視覚、聴覚を接続していたファインマンは蕾の中から出てきたシモンの複製体と目が合った。穏やかな微笑を浮かべつつもこちらを探るような視線を向けられる。ファインマンは内側を探られたかのような感触を感じ、この瞬間居場所がばれた事を悟った。



「すぐに来るぞっ!!」

シモンの後ろでファインマンが叫ぶ。それと同時に十メートルほど離れた先の地面に穴が開きそこから光が溢れる。

「この力は……」

肌で感じられる力の奔流にシモンは息を飲む。力の放出ではなく収束され無駄がない力の流れ。

「やっぱり学習されたかっ!!」

魔術や体術をどの程度戦い方を学習されたのか警戒しつつ左三体式の構えを取る。形意拳において必ず最初に取る三体式の構え、これを行うと全身がリラックスされながらも淀みなく力が循環されているのを感じる。これでいかなることがあっても動ける。

「さあ、来いっ!!」

その言葉と同時に穴の中から光源であるシモンの複製体が重力に逆らってフワリと浮かび上がり地面に着地した。十二の翼を体内に納めシモンの方を見る。その表情にシモンは嫌悪感を覚えた。自分とは思えない菩薩の様な穏やかな微笑に作り物めいたものを感じたからだ。

「狂神が……人を食らう物がそんな表情を……浮かべるなっ!!」

嫌悪感と怒りをばねにシモンが突進する。その様子に危険な物を感じながらもファインマンは叫ぶ。

「手はず通りにやってくれよっ!!」

そしてファインマンは背後にある偽神の足元に隠れる。ファインマンはすでに戦力外、戦う手段がない以上こうするよりない。

ファインマンの声は聞こえていたがシモンは答える事が出来ない。シモンの複製体の間合いに入るまであと一歩という所まで来たからだ。迫りくるシモンに対して微動だにしなかったシモンの複製体に動きがあった。それはシモン本体を鏡映しにしたかのような右三体式の構えだった。

(これはっ!?)

自ら虎の尾を踏む様なヤバさを感じ踏みとどまるべきだと考えたが遅かった。既にシモンの複製体の間合いに入ってしまっている。お互い攻撃出来る距離に入っていしまっている為、ここで立ち止まると一方的に攻撃を受ける事になる。

(クソッ!!)

そう思いながらシモンは右の崩拳を放つ。ことわざに曰く『攻撃は最大の防御』、先に攻撃を出しそれが当たれば相手にダメージを与えるし本人にしたら防御になる。それにこの攻撃をどう捌くかによってシモンの複製体がどれだけ自分の知識を吸収し経験を積んだかの目安にもなる。

(これをどう躱す?)

意識が集中し自分を含めたすべての動きがスローモーションになる。俗にゾーンに入った状態である。その中でシモンの複製体の動きを見る事が出来た。

シモンの複製体も同じように左の崩拳を放ったのだ。シモンの拳の内側に入ったシモンの複製体の右拳、そして腕同士がこすれシモンの右拳は外側に弾かれシモンの複製体の左拳はシモンの胴体に迫る。そしてシモンの腹部に直撃する。

「グゥッ!!」

シモンは呻きながらも吹き飛ばされる。だが足から着地したたら踏みながらも再び左三体式の構えを取った。そしてダメージを軽減すべく浅い呼吸を繰り返し、追撃を警戒する。だが追撃はなかった。シモンの複製体はシモンに放った右拳とシモンを交互に見て不思議そうな顔をして棒立ちになっていたからだ。

今の一撃、シモンが放つ崩拳と遜色のない威力が込められていた。つまり殺す気で放った一撃であるのに目の前のシモンはまだ生きている。それは不思議でならないのだ。

シモンの複製体の左拳が迫る瞬間、シモンの頭脳が考えるより体が勝手に動いていた。崩拳を放つ瞬間もう一方の拳は腹部に添えられる。シモンの場合は左拳が右腹部に添えられるのだがその左拳が勝手に動いてシモンの複製体の左拳を真下から弾いてくれたのだ。これにより威力は分散され殺すには至らなかったという訳だ。

シモンの複製体が動揺しているうちにシモンは自分の体確認する。

(痛みはある……だが骨は折れていないし内臓に損傷はない……呼吸により痛みは軽減出来るけどあまり無理は出来ない……最小で無駄のない動きを心掛けろ)

シモンは呼吸を整え次の戦いに備える。今度は負けないという意志を籠めた視線をシモンの複製体に向ける。それをどう感じたのかシモンの複製体は微笑を浮かべ左三体式の構えを取り、足元から力を噴出、滑るようにして一直線にシモンの間合いに入った。そして崩拳を放つ。

ギョッとしながらシモンは左足を起点に右足を左に移動、そうする事でシモンの体が回転し攻撃を逃れる事が出来た。シモンの複製体はそのまま通りすぎ数メートル先で止まった。足に力を集中しての突進は一直線にしか動けないようで次の動作に繋げる事が出来ないようだ。

シモンの複製体はシモンの方を向くとまた不思議そうな顔をして首を捻る。そんな子供のような動作を見てシモンは唐突に理解した。

(コイツ……試しているんだ。自分の力と僕から引き出した魔術、武術の技術、知識を融合出来ないか……危険だ、コイツはここで絶対に倒さなければ……)

シモンは下腹の丹田に意識を集中し呼気を吐く。丹田に集まった力が全身に行き渡る。その瞬間シモンの体が大きくなったかのように感じシモンの複製体は巨大化が出来るのかと不思議そうに首を捻った。







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