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魔術師転生  作者: サマト
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第九十七話 新たな技法と新たな謎

廃村に足を踏み入れたシモンとルーナ・カブリエルは適当な家に入ってみた。ドアを開けた事により風が室内に入り埃が宙に舞う。埃を吸い込んだシモンは激しく咽た。

「ゲホゴホゲホッ……これはキツい。中で休むのは無理だな」

「こんな所を指定するなんてファインマンのおじさんもひどいことをするね。こんなのイジメだよ」

シモンの扱いに憤慨するルーナ・カブリエルを宥める。

「イヤイヤ、そんな事するはずないでしょう。子供じゃないんだから」

シモンは呆れつつ床に落ちていた人形を拾う。人形に積もったほこりを払いながらシモンは疑問を口にする。

「この村の人は一体どこに行ったんだろう?」

「どこに行ったって?」

「この世界で生きる人にとって今まで住んでた場所を捨てるなんて一大事、それこそ死を覚悟をしなければ出来る事じゃない。それだけの覚悟をしてどこに行ったんだろう? それにこの村に結界は張って周囲から隠すなんてそんな事する必要はあるのだろうか? ここを潜伏場所に指定した以上結界を張ったのはファインマンさん何だろうけど……ここに一体何があるんだ?」

シモンの疑問にルーナ・カブリエルが不安そうな顔をする。

「これからどうするの? お兄ちゃん」

シモンは数秒考えて答えを出す。

「……この村を少し調べてみよう」

「勝手に動いても……」

「いいと思うよ」

シモンはルーナ・カブリエルの言葉にかぶせてきた。

「見られて困る場所に隠れてろなんて言わないだろうしいいって事だよ」

「……それは都合よすぎじゃ」

「四の五の言わない。さあやるよ!!」

シモンは意気揚々として外へ出た。その後をついて外に出たルーナ・カブリエルは前に回り込みシモンの顔を見つめ怪訝そうな顔をする。

「何か楽しそうだね?」

「エッ、そう?」

「すっごい笑顔だよ」

「……こういう謎の探索って好きなんだよね」

「何か不謹慎……まあいいか。じゃあ私はこっちの方を調べてみるからお兄ちゃんは……」

「そうじゃなくてルーナが全部調べるんだよ」

「エッ!?」

いきなり無理難題を吹っ掛けられルーナ・カブリエルは焦る。

「私一人でこの村全部を調べる何てムリムリムリッ」

「ところがルーナなら出来るんだな、これが」

「私が? どうやって?」

シモンはどこからか取り出し伊達メガネを装着し教師モードとなって話を続ける。

「ルーナは今、水の大天使と一体化している。これがどういう事か分かる」

「いやそれよりお兄ちゃんどこからメガネを?」

「それはいいから早く」

「と言われてもなあ……」

ポリポリと頭を掻くルーナ・カブリエルをシモンは呆れ顔で見る。

「今の自分が出来る事を少しは考えてよ……水の諸力を操れるというのはどういう事かを」

「と言われてもなあ……」

「……もっと別の言い方ないの? まあいいか……水の諸力が操れるって事は大気中の水分を操る事が出来るって事。大気中の水を集めて攻撃に用いる事も出来れば大気中の水を触覚として全域を探査する事も出来る」

「私にそんな事が出来るの!?」

ルーナ・カブリエルは驚きのあまり素っ頓狂な声を上げた。

「……自分の能力に無自覚というの何というか……」

「呆れないでよ、お兄ちゃん。いいよやってみるから」

ルーナ・カブリエルは深呼吸をして目を閉じて意識を集中する。すると目を閉じているというのに周囲の状況を感知する事が出来た。

(周りの状況事が分かる、水分がある所ならどこまでも感知する事が出来る。これが周りの水分を触覚にするという事なんだ。普段は水を集めて攻撃に用いるけどこんな使い方もあったんだ。凄いけどちょっと怖いかも)

感覚的なもので気のせいであると思われるが自分の意識が平べったく引き伸ばされ薄れて消えてしまいそうでルーナ・カブリエルは少しゾッとした。そんな事を考えながらも探査を続けると一つだけおかしい反応を見つけた。

ルーナ・カブリエルが目を見開きシモンに向き直って言った。

「お兄ちゃん、一軒だけおかしい家があったよ」

「おかしいって?」

「一軒だけ廃れてボロボロじゃない家がある」

「人がいるって事?」

ルーナカブリエルが首を横に振る。

「私の感知できる範囲には人っ子一人いないけど……人の手入れが入ってて今すぐ生活できそう」

「こんな廃村の中で唯一、人の手が入っている家があるか……ヨシ、そこに行ってみようか。怪しい感じはないんだよね」

「ウン、それは大丈夫。まあ近づいたらもう一度確認してみた方がいいかもだけど」

「罠なんてないと思うけどその時はお願い」

「分かった。じゃあこっち、着いてきて」

シモンはルーナ・カブリエルの案内で唯一人の手が入っているという家に向かった。



そこは村の一番奥の庭付きのやや大きめの屋敷。庭に生えている樹々や芝生は綺麗に刈り込まれており、花壇には花が咲き乱れ気が休まるであろう優しい香りが漂っている。窓や壁には汚れはなく清潔感がある。ここを管理しているであろう人物に思いを馳せ、感心するようにシモン呟く。

「確かにここだけは他の家と違う……ここを管理している人の人柄が現れてるのかな。優しい、それでいて明るい雰囲気がある」

シモンの感想にルーナ・カブリエルは頷く。

「だね……なんか今にも幸せそうな家族が顔を出しそうな……」

「見る限り、妙な罠とかはなさそうだけど……入ってみる?」

「私に聞かれても困るけど……それしかないね」

シモンとルーナ・カブリエルがお互いに頷き屋敷の中に入る。屋敷の中は埃っぽい感じがない。日差しが入る事で室内は程よく温かく心地よい。過度な調度品はなくいたって質素だがこれもまた人柄が出ている。

「……ここを管理している人はどんな人なんだろうな。多分神殺しの誰かなんだろうけど」

「お兄ちゃん、ちょっとこっち来て!!」

シモンが考えている間ルーナ・カブリエルは他の部屋を見にいったようだ。いつの間にか姿がなかった。ルーナ・カブリエルの声がする方にシモンは向かう。そこは十数名の人がまとめて入れるような広い食堂だ。ルーナ・カブリエルは食堂の壁にかけられた肖像画の前に立っていた。

「ルーナ、勝手に動かれては」

「それよりお兄ちゃんコレ!?」

ルーナ・カブリエルは驚愕の表情で肖像画を指差す。ルーナ・カブリエルが何に驚いているのかとシモンは肖像画に目を移す。そして同じように驚愕の表情を浮かべた。

肖像画には二人の人物が描かれていた。椅子に座っている女性とその傍らに立つ男性。男性の方はは¥見覚えがある人物だ。ファインマン・ハロウスその人だ。ただ今よりも若々しく豪華な礼装を身に纏っている。これだけなら驚くの値しないのだが問題はもう一人の女性の方だ。この女性の顔は自分の目の前にいる人物とうり二つなのだ。

「これって……私?」

「いやいや違うでしょ。これって……サリナさん? いいや、サリナさんより年が上。ファインマンさんの年齢を見るにこれはサリナさんの祖母なのか?」

肖像画に書かれているもう一人の人物の顔、それはサリナ・ハロウス、そしてルーナ・カブリエルとうり二つだったのだ。

「これはどういう事だ? 親から子、子から孫に特徴が受け継がれるって事はある話だけどここまでうり二つってあり得るのか? それにサリナさんとルーナもこれもまた容姿がうり二つ。これだけ似ている者が揃うなんて偶然ですむ話なのか? これってまるでクロー……」

新たな謎に困惑するシモンの耳に着信音のような音が聞こえてきた。

「ワッ、ビックリした!! 今度は何だ!?」

シモンとルーナ・カブリエルは音のする方向に向かって走り出した。 














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