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魔剣に転生したけど使い手がチート過ぎて私の存在価値が危うい  作者: ゆとりの和田
第六章 金の精霊剣
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もてなしと不意打ち

 もてなし――というのは当然良い意味ではないだろう。現状では四対一だが、ハマれば(・・・・)強いのが精霊剣である。多少の数的優位などいつひっくり返されてもおかしくはない。


 ナナミたちも迎撃の体勢を整えスノウの出方を伺う。それに対してスノウは薄く笑い、一瞬でその姿を消した。


 「……は?」


 思わず呆けて隙を晒してしまう。目を離したつもりはないが、動きを全く感知できなかった。まるで最初からいなかったかのような、そんな錯覚を覚える。


 意識を切り替えろ。後手には回ったが、まだこちらに被害は出ていない。相手が次に何を仕掛けてこようと、半径五メートル以内ならば察知できるはずだ。


 しかし、どれだけ待っても攻撃は来なかった。アズールやセイブルと目を合わせるが、向こうも何も感じていないようだ。


 「……まさか、逃げた? まだ何もしていないのに?」


 「あれだけ煽っておいてそれはないでしょう。どこかで不意打ちの機会を狙っているとか……?」


 その時、不意に扉が開かれた。張りつめた状況だったために、皆が弾かれたように扉の方を見る。


 「えっと、どうしたの? 何かあった?」


 困り顔のマスターの姿がそこにはあった。部屋を一通り見回し、小さく首を傾げている。


 「失礼ですが、本物のショウ様ですか?」


 「本物って、どういうこと?」


 「大丈夫、今度は本物のマスターよ。……ええと、何から説明したものかしら」


 混乱しているマスターに、スノウが現れたことを説明する。現状では何もされてはいないが、どうやら敵対しそうであることも伝えた。


 「それで、どうしようか。スノーホワイトは姿を消しちゃったんだよね?」


 「そうね。追撃してくる様子がないのは妙だけど……とにかく宿から出ましょうか。このままじゃ良い的だわ」


 特に反対意見も出なかったため、移動をすることになった。しかし、次に何をするべきかわからないのは問題である。スノウが姿を消した以上、まずはスノウを補足するところから始めないといけないのだが――と、そこまで考えたところで異常に気付く。


 壁だ。いつの間にか部屋が壁で分断されていた。アズールとセイブルがいた場所と私たちの間に、無機質な壁が出現していた。一瞬遅れて、スノウの仕業だと気づく。くそ、まただ。スノウの動きが見えない。あまりにも早すぎる――あるいは、緊張が途切れた瞬間を狙っているのか。


 突然マスターが剣(わたし)を掴んで窓から飛び出した。ナナミも同時に脱出している。一瞬遅れて、ついさっきまで私たちがいた場所を、壁や床からはえてきた巨大な針が通過した。マスターの反応が無かったら、今頃私たちに風穴があいていただろう。


 だがこれで、アズールたちと完全に分断されたことになる。あの二人ならそうそう後れを取ることはないだろうが、まずい状況であることに変わりはない。


 「姿が見えない……厄介だね」


 「本体を探して叩くしかないわ。アズールたちは心配だけど、ここは信じましょう。あの娘たちなら簡単にやられはしないわ」


 他人の心配より、まずは自分のことである。これだけ正確で力強い攻撃をしてくるということは、おそらくスノウの本体も近くにいるとは思うのだが――少なくとも目に見える範囲にはいない。


 「この町は全体が金で覆われています……つまり、スノーホワイト様はどこにでも潜めるということです」


 ナナミが辺りを警戒しながら言う。私たちにとっては趣味の悪い町にしか映らないが――間違いなくここは、スノウにとってのホームグラウンドだ。


 「また仕掛けてくるわよ!」


 今度は街灯が鞭のようにしなり、私たちがついさっきまでいた場所を通過した。よく見ると街灯の片面が刃のように鋭く砥がれている。おい。あまりに殺意が高すぎるだろう。


 「通りに出ましょう。ここは障害物が多すぎてどこから攻撃が来るか読めないわ。広い所に出れば、ある程度は攻撃が来る方向を絞れるでしょうし」


 「了解。……素直にそうさせてくれるとありがたいんだけどね」


 マスターは走り出し、壁や床からはえてくる巨大な針をある時は避け、ある時は切り捨てながら進んでいく。この調子でいけばすぐに通りに出られるだろう。


 だが、何か違和感がある。踊らされているような、誘導されているような感覚だ。何かがおかしい。スノウが現れた時と今の状況の違いはなんだ。


 「そうか。おかしい。攻撃が遅すぎる(・・・・・・・)」


 マスターに変装していたことがバレた時も。部屋から姿を消した時も。そしてアズールたちを分断した時も。スノウの動作は一瞬(・・)で完了していた。それにもかかわらず、今の攻撃はマスターが見てから避けられるほど動作が遅い。


 そこまで考えたところで――剣(わたし)の体に衝撃が走った。スノウが剣(わたし)の腹を思いっきり殴っているところは認識できたが、それだけだった。当然、私は踏ん張ることなどできず、マスターの手を離れ、近くの建物内まで吹き飛ばされることになる。


 ばきん(・・・)、と剣(わたし)の折れる音が聞こえた。

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