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魔剣に転生したけど使い手がチート過ぎて私の存在価値が危うい  作者: ゆとりの和田
第五章 金の寄生剣
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幕間の物語 姉ケ崎シロウその2

 日差しが差し込み、ふと目が覚める。どうやら机に突っ伏したまま眠っていたらしい。無理な体勢で寝ていたからか、体の節々が痛む。二、三度肩を回して凝りをほぐす――この体になってから肩凝りが増えた気がする。前世では縁のなかった研究職をしているからだろうか。いや、今は無職なので研究職というのはおかしいが。


 「目覚めのコーヒーをどうぞ」


 お付きのメイド――カレンが机にコーヒーカップを差し出した。見透かしたかのようなタイミングだ。相変わらず気の利くメイドである。


 「ありがとう。……スノーホワイトをカナリアに届けられたのか?」


 「はい。土の精霊剣(マシコット)も指定された町に配備してきました」


 「ご苦労。これで精霊剣の配備は終わったわけか」


 五本の精霊剣は定位置に着いた。あとは寄生剣の方だが、残すは木と水だけである。もっとも、核はすでに作製済みなので、何に寄生させるかを決めるだけだ。それもすでに選定してある。


 「今のところは順調……あとは使い手の到着を待つだけか」


 先ほど炎の精霊剣の様子を見てきたが、良い感じに仕上がってきていた。あと五十年もすればほぼ完成形に近づくだろう。欲を言えばもう百年ほど修行をさせたいところだったが、時を遡(さかのぼ)る魔法ではあれ以上過去に戻ることはできなかった。


 魔力が足りないというのもある。だが一番の要因は千年ほど前に決定的(・・・)な出来事が起こったため、それ以上過去に戻ることができなかったのだ。前の世界の歴史で言えば、新大陸の発見や電気の発明、インターネットの普及のような――その後の世界の行く末を決定づける、歴史のターニングポイント。


 「原初の魔物。はるか昔にこの世界にやってきた魔物が世界を滅ぼす。そういう話でしたね」


 「その通り。それを食い止めるために、俺たちはこうして準備をしているわけだ」


 約千年前、ある一体の魔物がこの地に墜落してきた。その魔物は地中奥深くに姿を消したが――地上には多種多様な魔物があふれかえった。魔物たちは命あるものを無差別に襲い、食い尽くした。地上の魔物が摂取したエネルギーは地下に眠る原初の魔物に送られている。今、この瞬間も。


 何もしなければあと五十年と少しで原初の魔物は目覚め、地上の全ての生命を食い尽くすだろうと俺は予想している。成長する前に倒せれば良かったのだが、あれは無理だ。現状では勝てない。戦力が足りない。


 「戦力を育てるために、色々と無茶をやらないとな。精霊剣たち……特に炎には負担を強いている。お前にも協力してもらうことになるだろう。恨んでくれて構わないぞ」


 「ええ、そうしましょう。本当にひどいお方です。シロウ様には人に血が流れていませんね」


 「ストレート過ぎる。まあ、俺もろくな死に方をしないことはわかってはいるが。世界を救うためだの言っているが……結局俺は、やりたいことをやるだけなのだろうな。できそうだからやってみたいだけだ」


 五十年後に世界は滅びるかもしれないが、逆に言えばそれまでは安泰とも言える。二回目の人生もそれなりに楽しんで――それなりに大往生できる。だが、それではあまりにつまらない。せっかく人生をリトライできたのだ。おまけに今回の体は基礎スペックが高い。ならば活かした方が良いだろう。


 「む、コーヒーがなくなったな。もう一杯頼む」


 「かしこまりました。少々お待ちください」


 カレンがカップを回収し、部屋から出ていく。数分後には新しいコーヒーが入るだろう。それまで資料の整理を行うことにする。


 目についたのは金の精霊剣の設計図だ。今振り返ってみると徹夜明けのテンションで設計してしまった気がする。寄生剣と同様に体を変化させて他人に変装できるようにしたのは良いが――金属を伝って移動できるようにしたのはやり過ぎたかもしれない。まあ、なんとかなるだろう。


 「お待たせいたしました。今回は砂糖を大目に入れています」


 カレンが持ってきたコーヒーを少し口に含む。ふむ、濃さもちょうどよい。相変わらず俺の好みをきちんと理解しているようである。


 「おまえの分も淹れてこい。俺も休憩がしたいから、話し相手になれ」


 「かしこまりました。シロウ様はご友人がいませんからね。僭越ながら私が話し相手を務めましょう」


 「言って良いことと悪いことがあるからな? お前自分がメイドだってこと忘れていない?」


 冗談ですよ――などと言いながらカレンは自分のコーヒーを用意している。やはり上下関係というものを理解させなければならない。


 一方で今の関係も悪くないと思っている自分もいる。今回の人生で軽口を叩き合える関係になれたのはカレンだけである。友人ができなかったのは自分のせいでもあるが、カレンがいればそれで十分だと思えたのも要因の一つである。


 思考を止め、机の上を整理する。残る寄生剣は後ふたつ。それを作り終えれば、しばらくは待ちの期間になる。


 「これだけやっても原初の魔物に勝てるかはわからんが……まあ、なるようになるだろう」


第五章完結です。次回の投稿は7/16(月)を予定しています。

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