夏前:旅行予定
暑い。もう7月なのだから当然だ。部屋のテレビからは今日の最高気温は28度なんて流れている。すっかり海やプールに行きたい季節になってしまった。せっかくの日曜日。九九でも誘ってみようかな。
でも、さすがに急すぎるか。やっぱ、今日はゴロゴロして過ごそうかな。開けている窓は心地よい風で震えている。のんびり昼寝をするのも悪くない。
そういえば冷凍庫にチョコアイスがあったような。今、家には誰もいないことだしこっそり食べてしまおうか。そう思い自室のある二階から一階に降りる。ガチャっと冷凍庫を開けるとひんやりと冷気が伝わってくる。そこからお目当ての物を取り出して部屋に戻る。
部屋に戻ってアイスの包装をはがして舐めようとしたとき、置いていたスマホに着信があったことに気付いた。誰からだろう。アイス片手に開いてみるとそこには九九からのメールが有った。
「もう少しで夏休みだな、きゃはは。つい俺もテンションが上がっちまうぜ。ところでお前夏休みがはじまってから丁度2週間後の火曜日から予定は入っているか?弥生、知ってるよな。同じクラスなんだから。あいつがその日から自分とこが持ってる島に行くんだと。そんで、俺たちも着いていっていいってことになった。期間は四泊五日を予定している。メンバーは俺らの他にも東西姉妹やら他のクラスの奴らも何人か来るそうだ。行けそうなら連絡くれぃ」
島ねえ。弥生、金持ちだとは聞いてたけど島を所有してるってどういうことだよ。しかも友だち何人か呼べるってことはでっかい別荘が有るんだろうな。
特に指定された日に予定が無かったのでオーケーの返事をしたら、その他の諸注意と楽しみにしてるということを告げられた。
「そんな訳なんで、一緒に行きましょう」
「良いのかい、僕、確か嫌われてるよね」
月曜日の放課後になり、僕は先輩を誘いにきた。もちろん九九たちには黙ってだ。断られるに決まってる。先輩は気を遣っているようだが、嫌がってるわけでは無さそうだ。
「大丈夫ですよ。当日来た人を無理に帰すようなことしませんって。それに僕の先輩と友人が仲悪いの嫌じゃないですか。ここは親睦会ってことでどうですか」
「ホストに相談もして来なかったんだ。ま、いいか。晶君と一緒にいるのはなかなか楽しいしね。断じて君の物では無いけれど」
「あー、それで注意なんですけど、ケータイ持ってきたら駄目なんだそうです」
先輩が不思議そうな顔をする。僕はおかわりの紅茶を注ぎに行きながら理由を説明する。
「今回招待してくれた弥生 人形っていう人が、嫌いなんだそうです。同じくパソコンも駄目らしいです。持ってきてもインターネット繋がってないらしいですけど」
いまどき珍しいと思う。普段は絶対使わないという程ではないだろうけど、島では使う必要もないから持って来ないし、持ってくるなってことだ。
「了解だよ。僕もケータイ使わないんだよね。電話帳、番号一個しか無いんだよね」
「…………メアド、交換してもらえます?」