初日:最初の出会い
初投稿ですね。拙い文章で、投稿ペースも未定ですけど、よければ見てくださいな。
僕がどうしてこんな場違いな所にいるのか、それは僕にもわからない。僕はいたって普通のモブキャラみたいな存在で、普通の高校に通い、適当に進学して、当たり前に中小企業に就職して。しばらくしたら、丁度いいかんじに結婚して、王道的人生を送るタイプの人間のはずだ。
だから、こんなとんでもない場所にいて良いわけがない。こんな「西ノ宮高校」なんていうとんでもない、名門校に。
まずは、「西ノ宮高校」について説明しなくてはなるまい。この学校は、あらゆる才能を持った高校生が集められる。これまで輩出してきた卒業生には、天才サッカー選手や、天才デザイン家、天才ゲーマーなど、天才とよばれる人達がほとんどだ。ほぼ全ての、と言っても過言ではないほどの業界でこの学校の卒業生が活躍している。これが僕の知る「西ノ宮高校」の情報だ。
もちろん僕、朝日 晶は地元の普通の公立高校に入学する予定だったし、その準備もほとんど終わってた。それが、高校生活スタートまであと1週間かそこらって時に急に僕の家に「西ノ宮高校」への入学届がやってきたのだ。もちろん僕は反対したのだが、親や友人に絶対行くように言われ、それでも何かの間違いだ、入ったところで恥かくだけだ、とごねていたらしまいにはここに行かないんだったら地元の高校にも行かさない、と強行手段を取られ泣く泣く入学を決意した。
そして、今日が入学式当日というわけだ。
入学届には、僕はG組と書いてあった。自分のクラスの場所を探すため、校内案内図を見ようとしたときだった。
ツンツンと背中をつつかれた。が、振り返ってもだれもいない。もう一度案内図を見ようと前を向いたとき、ツンツンとつつかれる。振り向くが誰もいない。不思議に思いながらも、案内図の方に向き直したとき、そこには僕より少しだけ背の低い男が立っていた。
「やあ君、新入生だね。私は九九 八十って言うんだ。君、名前は?何組かな?」
「ひいっ」
突然目の前に出てきて、高めの声で話しかけてきた彼に失礼ながら驚いてしまったが、よく見るとなかなかかわいらしい女性受けの良さそうな顔立ちをしている。ゆらゆら揺れる肩まで伸びた黒髪や、色白な肌、薄い唇など、もしかすると一部の男子からの受けもいいかもしれない。まさに、美少年という感じだ。
「ちょっと、大丈夫?ぼうっとしてるよ」
「すいません、僕は朝日 晶といいます。よろしく」
「ああ、うんよろしくね。って、そろそろどかないと邪魔っぽいかな、歩きながら話そうか」
それに賛成した僕は急いで教室を確認して歩き出した。
「私、実家はこの辺じゃなくて、今は一人暮らしなんだよね」
「そうなんですか、じゃあ九九君は大変ですね」
「ううん、むしろ気楽だよ。親の支配が無くなって好きにやらせてもらってる」
「そうか、確かに一人暮らしはちょっとした憧れでもありますね」
「ただねー、ご飯だけはどうにかしないと。私、料理が壊滅的に下手なんだよね」
「自分でわかってる分良いじゃないですか。僕の母なんて下手なくせにそれが分かってないもんだから大変なんですよね」
「ハハハ」
いろいろと話しているうちに、九九には丁寧で、好感の持てるいいやつだ、という印象を持った。感覚も一般人とそれほど変わらないようだし、天才の集まるこの学校でとても頼もしい友人となるだろう。これは、ラッキーだ。
「ところで」
九九は急に真剣な雰囲気で聞いてきた。
「朝日君は何組なのかな?」
最初にもされた質問だ。すっかり忘れていた。せっかく仲良くなれそうだし、同じ組だといいんだが。
「G組ですよ」
こう言った瞬間、九九のまとっている空気が変わった。柔らかい周囲を明るく惹きつけるものから、強引で自らに引き寄せるようなものに。
「きゃはははは、お前、上3組だったんか。だったら遠慮することないなぁ。俺もG組だ。もう敬語なんて使うなよぉ。あー猫かぶってたら疲れちゃった。失礼、やっぱしこれ舐めてないと」
突然の九九の変わりように呆然としている僕の前で九九は棒付きキャンディーを舐めだした。
「く、九九君?」
どうにか声を出したが、九九はそれには取り合わずに歩いていく。
「早く来いよぉ。老いていくぞ、違うか、置いていくぞー、だな。きゃは」
僕は九九に付いていくしかなかった。