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■光と影

――長信がこの世から去り、私の心の中には大きな穴が開いたまま、今日まで何気無く生きていた。その穴は決して塞がれる事は無い。


――そう思っていた筈なのに……。


「光と影は共にあり、互いを際立たせ支え合う――」


「……竜之介、何故貴方はこの光と影の詩を知っているの?」


 長信の墓の前で桜子が手の内にある首飾りを強く握り締めた時、その背後に大きな男――影虎が立っていた。


「桜子さん、またここに来てたのか?」


「影虎……」


 毅然とした態度で影虎と擦れ違い、そこから立ち去ろうとする桜子の背に両拳を震わせた影虎が声を掛ける。


「桜子さん、俺は竜之介を長信さんの意志を継ぐ男としては、断じて認めていねえ! あんただってそうだろ? なぁ、桜子さんよ!?」


 桜子の足が一瞬止まり、冷ややかな視線だけが影虎を見据えた。


「影虎……お前には関係の無い事で――」


 一蹴する言葉を影虎が覆う様に言葉を重ねて叫ぶ。


「いーやっ! 関係は大有りだっ! 俺はそうやって何時までも未練がましく長信さんの墓の前に立つあんたの姿を見るのが辛いんだよ! あの人の代わりが出来るのはこの俺しかいねえっ!」


「桜子さん、長信さんはもう死んじまったんだ! あんたのすぐ近くには頼れる俺がいるじゃねえか! あんただって俺の気持ちを分ってくれてるんだろう? まさか本当に竜之介が長信さんに見えてしまってるんじゃねえだろうな?」


「黙りなさいっ! 影虎!」


 感情的に口を開く影虎を桜子は一喝する。視線を前に戻した桜子は感情を押し殺しながら言い放つ。


「影虎、自身を驕るのも大概にしなさい。お前如きが長信と肩を並べているなどと思い違いも甚だしい。竜之介も同じ事。獄龍がたまたま使えた――それだけの事です」


「――くっ!」 


 歯軋りをしながら地面に視線を落とす影虎を背に桜子は再び歩き始めた。仏頂面をした表情で桜子の横を歩く長信の足音はもう聞こえない。その寂しさを感じながら桜子は長信と出会った時の事を思い返す。


 当時桜子は角組の隊長として活躍していた。戦の真っ只中、桜子のと成りでもあった秀光が自分達に剣を向ける手負いのナイトと対峙していた。


[き、貴様ァアア! 餌の分際で、こ、こノ俺ヲここまデ追い込ムとハ!]


「ふん。勘違いするな、お前より我の方が圧倒的に強い、ただそれだけの事」


「何ヲ――!」


伊弉弥いざなみ――摩砕まさいっ!」


 秀光の持つ長剣が横一閃に走ると、一瞬にしてナイトの胴体が鎧毎両断された。叫び声を上げる暇も無く、ナイトは骸と化す。


「ふぅ……秀光、これで任務完了です。これより拠点へ帰還します」


「秀光?」


「クハハハハッ! 我に歯向かう愚か者が! 死ね! 死ねっ! 死ねいいいっ!」


 秀光は息絶えたナイトに執拗まで伊弉弥を突き刺している。両腕を切断し、首を切り落とし、何度も振り下ろす。その度骸は、まるで生きているかの様に胴体を躍らせた。


「無様! 無様! クハハハハアっ!」


 再度秀光が伊弉弥を振り下ろしたとき、桜子の腕剣がその残酷な行為を止めた。


「秀光、止めなさい! 敵といえどその者は位のある戦士、それ以上は無礼です」


「無礼? 桜子隊長、何を言っているのですか? こいつは我々を殺そうとした愚かな屑だ。情けなど一切無用っ!」


 叫びながら伊弉弥を振り翳した。


「秀光……それ以上やるというなら、私が許しません、直ちに伊弉弥を納めなさい」


「――ちっ!」


 秀光は地面に唾を吐き捨てると、武装を解除して桜子の命令に従う。各組の中で最も最強のコンビという噂で持ちきりだった二人が拠点に戻ると、今回の戦での活躍に、隊の者達が一斉に注目した。


「お! 角組が帰ってきたぜ!」


「あの最強コンビかっ!」


「クールな秀光様と、桜子隊長ってお似合いよね」


「本当、ベストカップルだわ!」


 二人の実力と仲を認める会話の中で一人の意味深な発言が割って入った。


「でも、なんで桜子隊長は身に付けている光と影の首飾り、『影』の方を秀光様にあげないんだろうね?」


 その言葉は桜子の耳にも届いた。怪訝そうな顔をし「また、その事か」という仕草を見せながら隊の者達の間を通り過ぎる。


――皆は私達の事を騒ぎ立てるけど、正直私は男などに全く興味は無い。父様は何故こんな不要な物を私にくださったのかしら?。


 自身に不要な首飾りを見つめながら、桜子がそれを渡された時の事を思い返すと、直ぐに首飾りを嬉しそうに目の前に翳した父親――道山の姿と会話が脳裏に浮かんだ。


「――桜子、こっちに来い、お前に良いものをやろう!」


「良いもの?」


「ふふふふ。これだあああっ!」


「……父様、なんですか? これは?」


「聞いて驚くでないぞ! これはな、つがいとなっている『光』と『影』の首飾りじゃ!」


「――そうですか。では、私はこれにて」


 無表情を保ちながら、桜子が部屋から出て行こうとする。


「こっ、これっ! 話は最後まで聞かぬかっ!」


「……で、その光と『禿』がなんですか?」


「誰が、禿じゃっ! 影じゃ! 影っ!」


「――はぁ」


「良いか桜子、お前はまさに斉藤家の光、皇后しく、気高く育ってくれた、と言っても少々おてんば過ぎるのが難点ではあるが――」


「だがな、光は影があるからこそ眩く輝けるのじゃ!」


「そして――影もまたしかり」


「父様は結局、私に何をおっしゃりたいのですか?」


「この首飾りは正にその象徴、この光と影は、ほれ! この様にニつに分かれるのじゃ」


「そして、この首飾りには重要な詩が込められている。桜子、今からわしが言う詩をお前の胸にしかと刻んでおくのじゃぞ?」


『光と影は共にあり、互いを際立たせ支え合う、光と影が交わりし時、指し示されたその道を共に歩まん』


「おほん、つまりじゃ、お前が気に入った男が影になると言う事じゃな。そして二人は夫婦と成って――」


「ばっ、馬鹿馬鹿しいっ! そんなくだらない事で私をわざわざ屋敷まで呼びつけたのですか!」


 踵を返した桜子が怒りの足音を立てながら立ち去ろうとする。


「まっ、待て待て待ていっ! お前も早く『影』を見つけて、わしを安心させてくれい、頼むっ!」


「それは、生涯叶わないかもしれませんよ? 私は、私を越えない男でない限り認めませんから」


「そう言うな、ほれ、あの秀光という男はどうじゃ?」


――秀光、確かに腕は立つが、あの者からは何か嫌なものを感じる。


 その答えが桜子の顔にあからさまに表れた時、道山は首を横に振りながら深い溜息を吐いた。


「気にいらんのか、残念じゃのう。じゃが、これはたった今から身に付けよ。もしかすると嵐の様に強い男がお前の前に突然現れるかもしれんからの!」


――この私を凌ぐ男、そんな者等おらぬというのに!。


「あ! わし、その首飾りの情報を広報へ既に通達してるから。今頃この首飾りの話で、隊の男達はさぞかし盛り上がっている事じゃろう。では、これを」


 道山は首飾りを強引に桜子の手に握らせると、一目散に部屋を出て行った。


――にっ、逃げたあっ!。


「ちょっと……父様っ! 父様あっ!」


 道山の逃げ姿を最後に脳裏へ浮かべ、桜子は我に返った。


「桜子隊長」


 気が付けば、横で秀光が自分に呼び掛けていた。動揺する心をなんとか押さえ返事をする。


「秀光、今日はよくやりました。疲れたでしょう? もう部屋に帰って休みなさい」


「桜子隊長、白を切らないで頂きたい。我は皆が梃子摺っていたナイトを葬ったのですよ? そろそろその胸に付けている『影』を外して、我に差し出してくれても良いのではないですか?」


「あ、秀光……これは」


 桜子が返事に困り、困惑の表情を浮かべた刹那、試合会場の方から隊の者達の歓声が沸きあがった。


「おおおおおおおおっ!?」


「あいつ、またやりやがったああああ!」


「な、何事です?」


 これ幸いと桜子ははぐらかす様に、試合会場へと急ぐ一人を捕まえて問いただす。


「あ、桜子様! それが、最近入隊した者なのですが、その者がいきなり『面倒臭いから、一気にやらせろ!』とか言って各組のと成相手に下克上を挑んでいるのです」


――何? 全員を相手にですって?。


「それで、上の者も面白がって、『何かの余興になるだろう』という感覚で許可が下りてしまって……」


「で、その世間知らずが今、痛い目にあっているということですね?」


「そっ、それが、全戦連勝中でして、棋将武隊始まって以来、前代未聞の状況になっているらしいんですっ!」


――はぁっ!? 全勝っ!?。


「はっ、はい! その者は闇を使うのですが、恐ろしく強いらしく……」


「今は誰と戦っているのですか?」


「これから、飛組の石田成三と戦うところです! さぁ、桜子様も早く! 一緒に見に行きましょう!」


「分かりました。それで、その者の名は何というのですか?」


「確か――織田、織田長信という者です。」


――織田長信。


 桜子は試合会場へと急ぐ。歓声が渦巻いている会場のど真ん中で、鍔を握り締め、堂々と立つ長信の姿が見えた。長信は体勢を低くすると大きな声で叫んだ。


「抜刀――獄龍っ!」


 周りが騒然とする中、長信の掛け声で、鍔から黒い光を放ちながら獄龍がその姿を現した。


――な、何? あの剣、全体が黒いなんて! それにあの剣から沸き出る闇の力は何て凄まじいの!?。


「へへっ、さあて、黒子。またまたお前の出番だぜえっ!」


 長信は黒子を召還する。水晶から勢い良く出てきた黒子は皆の前で長信の頭に向け、いきなりとび蹴りを食らわした。


「ごはああっ!」


 そのまま長信は吹き飛ぶ。桜子はその信じられない光景を見て唖然としてしまった。


*うつけの癖に何度も何度も何度も何度も黒子をこき使いやがって。 そのまま三途の川を渡るがいい*


「馬鹿野郎! 俺様達の相手は向こうだろうがっ、向こうっ! 何てことしやがる!」


 頭を摩りながら長信が成三を指差して叫ぶ。


*馬鹿が馬鹿馬鹿言うな。 それに黒子はか弱い女の娘。 野郎言うな、この草履虫*


 二人の会話とそのやりとりで試合会場が一斉に爆笑の渦に巻き込まれる。桜子は手を額にやり首を横に振った。上位戦にも関わらず、神聖な試合会場を茶番にされた成三が静かに口を開いた。


「先程から見るに耐えない態度だな。こんな輩に名誉あると成が敗れるとは、情けない……」


 その声を聞いた途端、長信の口元が不適に歪んだ。


「――黒子、お前のせいで俺様達、舐められてしまったぜ? いいのかよ?」


*……ふん。 後で十洞団子、忘れるな? うつけが*


「おおよ!」


 怪訝そうな顔をして黒子が獄龍にリンクすると、刀身に五つの刻印が表われた。それを目の辺りにした桜子は思わず驚きの声を上げる。


「れ、レベル五――ですって!?」


 今まで爆笑の渦だった試合会場が一斉に静まり返る。長信のふざけた態度に反し、桁外れな力を認めた成三が自身の鍔を握り、戦う姿勢を見せた。


「まがまがしい剣だな。そのような妖刀が二度と現れないよう、この成三が鍔もろとも斬り捨ててやろう……」


「抜刀――雷電」


 成三がゆっくりと抜刀する。鍔から激しい光を伴いながら、雷電が現れた。


「ここまで勝ち進んだ事は褒めてやる。だが、それもここで終わりだ……」


「来い、来香らいか


 来香を召還し、リンクを完了すると刀身に四つの刻印が表れた。


「お前に、刻印の数だけが強さの証で無い事をその身を以って教えてやる……」


 挑発の言葉に長信は大きな欠伸をし、獄龍をだらしなく構えている。見兼ねた審判が慌てて声を掛けた。


「君っ! 早く剣を構えんかっ!」


「構えるぅ? ったく、だりぃなぁ、どうせこいつもすぐ負けちまうんだからよぉ」


 ぶっきらぼうに言葉を吐く長信に成三の表情が冷酷に変化した。


「貴様、今言った言葉、もう一度俺に言ってみろ……」


「あ? 俺様は同じ事を二度言うのがでえっ嫌いなんだよ」


「貴様、このわしを怒らせた事を心底後悔するが良い……」


――相手はあの冷静沈着な雷使いの成三。流石にあの無作法者も、勝てないでしょう。


 最初は手加減をするつもりであったのだろう、桜子はそれに気付いていたが、今の成三が既に本気となり長信が無傷で済まされない事を直感した。


「それでは――始めいいっ!」


 成三は試合が始まると、雷電を起こし少し左に傾けた。


「へぇ……隙が無い。中々やるねぇ、おっさん!」


「おっ――おっさんとは心外な! わ、わしはお前より少し年上なだけだ!」


――ぷうっ! 何? あの長信という者。あの冷静な成三が先程からあの者のペースに乗せられてしまっている。こんなの初めて見た。


「そんじゃ、まぁ――」


 長信は片手で獄龍をだらりと下げた。


「そろそろ本気だすかあっ!」


 叫んだ瞬間、そのままの姿勢で強引に成三へ斬りかかる。


「馬鹿が! そんな強引な太刀筋が俺に通じると思うたかっ!」


 雷電で受け止め、互いの刃で周辺に火花が飛び散った。


「片手でここまでの力とは、なかなかやるな! だが力比べならわしもお前に負けはしない、そのまま押し返してやるっ!」


「――さあてね、そいつはどうかな?」


「おりゃああああ!」


 長信が大振りをしながら何度も雷電を叩き始める。その強引な剣技に呆れ果て、成三が口を開いた。


「お前、そんないい加減な太刀筋、隙だらけだ、それでは――」


「どっせいいいい!」


 長信の一振りは大雑把で強引だった。だが何故かそれを受け流している成三の方が押され始める。後退し、次第に隙をこじ開けられそうになった成三は焦りの表情を見せた。


「なっ、何故だ!? わしは奴の剣を受け流している筈なのにっ!」


「そりゃあああっ!」


 獄龍に打ち込まれる度、雷電が悲鳴を上げる様に激しく火花を散らす。


「い、一撃が、一撃が重いっ! 技を繰り出す姿勢に入れないっ!」


 長信に何度も大きな隙が出来るものの、成三は反撃する事を許されなかった。強者の成三がじりじりと追い詰められる様を桜子は心を躍らせて見入っていた。


――成三が力負けしているですって? それにしても、あの者の太刀筋は滅茶苦茶。あれで本当にここまで勝ち進んできたというの?。


「ちいいっ! わしも現役の飛組のと成! そう易々と貴様には負けられん!」


 成三が大きく後退し、距離を取ると雷電を中断に構え、技の姿勢に入った刹那、長信が勝ち誇った様に声を上げた。


「お前、今、自分から後ろに下がったな! 俺様の勝ちだああっ!」


 獄龍を両腕で握り締め、上段に構えた長信の周りの空気が振動し始める。今まで見た事も無い試合に桜子は目を逸らす事が出来なくなってしまった。


――なんという、豪快な構え! あんなに隙だらけなのに、それなのにっ!。


「何を寝言を! 受けてみよっ、わしの雷撃おおっ! 雷電撃――!」


 自身の技を繰り出そうとした瞬間、手に握った雷電が上下に激しく揺れ始めたかと思うと、そのまま成三の片膝が地に付いてしまった。


「あ、ぐぅううううっ!」


「こっ、この重圧! これは、まさかっ!」


 頭を抑えつけらるのを堪え、顔を上げるとその頭上に黒龍が赤い瞳をぎらつかせ、今にも食らいつかんとばかりに成三を睨んでいた。


――あの者、なんと計り知れない殺気の具現化を! それにこの闇の力、秀光と同等か或いはそれ以上かも知れない! 織田長信……面白い、なんて面白い男なのでしょう!。


 秀光も桜子の後を追い、この試合を見ていたが、長信の持つ力よりも桜子が今まで自分に一度も見せた事がない無邪気な表情を、長信に向けている事に全身を震わせながら嫉妬感を全面に出した。


「何故だっ? 何故、桜子隊長はそんな目であの者を見るっ!? 織田長信という者、気にいらん! 気にいらんっ!」


 秀光の嫉妬の表情は一瞬殺意の表情へと変化する。成三は長信の殺気を押し返そうと懸命に立ち上がろうとしていたが、そこから一歩も動く事が出来なかった。


「俺様の闇からは何人たりとも逃げれねえよ」


「な、なんの、まだだ! まだああっ!」


 そのままの姿勢で成三が咆哮を上げると、抗う様に闇の中で雷鳴が轟き始めた。


――駄目! 私、もう我慢できないっ!。


「この俺様相手に良くやったぜ、流石飛組のと成だけの事はあるな!」


「あんたは確かに強い、だがな……」


「この俺様は、もっと強えええ!」


「吹き飛べっ! 獄龍――尖牙せんがああっ!」


 大声で叫び、上段から一気に獄龍を振り下ろした。放たれた膨大な闇が瞬く間に黒龍へ変化すると、唸り声を上げながら、口を大きく開け成三に襲い掛かった。


「くうっ! もはや、これまでかっ!」


 敗北を覚悟したその時、二人の間に桜子の声が割って入った。


「白雪――閃布陣せんふじん


 成三を食らおうとした黒龍の口の中が皇后しく光り出すと、威力を増した光が黒龍の口を裂き、一瞬で吹き飛ばしてしまった。


 長信や試合を見ていた隊の者達は、一体何が起こったか理解出来ず、口を開けたまま呆然としていた。


「さっ、桜子隊長!? な、何故此処に!?」


 動揺している成三を横目に、桜子は審判から強引にマイクを奪い取ると、試合を観戦している席に向け、声を張り上げた。


「ここにいる皆の者、良くお聞きなさいっ! この勝負、角組隊長、斉藤桜子が預かりますっ!」


「なっ、何だってええ!?」


 周りが騒然する中で桜子は長信を真っ直ぐ見据える。


「なっ、何だ? だっ、誰だ? お前は!?」


 武装を解除した長信がその視線を辿る様に、慌てて桜子を見つめ返し口を開いた。


「おっ、お前、さっきこの試合を預かるとか何とか言わなかったか? どうなんだ?」


「長信とかいいましたか、先程私はちゃんと言いましたよ? 覚えておきなさい、私は同じ事を二度言うのが大嫌いなのです」


 悪戯っぽく笑い、長信に舌を見せた。


「――てっ、てめ、そ、それ俺の台詞っ!」


――光は影があるからこそ眩く輝ける……か。


「織田長信……私は貴方に興味が湧きました」


「はあっ? 俺様に?」


「長信――貴方、本日を以って角組『二人目』のと成として、私の部下になりなさいっ!」


 人指し指を長信に向けながら桜子が言い放った瞬間、周りのざわつきに一層拍車が掛かる。長信は自分を指差しながら、ただ呆然とするのであった。


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