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■風間竜之介VS小早川秋人

 竜之介はチェスとの戦いの真っ只中にいた。


「竜之介……止めを刺せ」


「分かりましたッ、姫野さん!!」


 竜之介は低く息を吸い込むと炎の残像を残しながら火虎を上段に構えた。


[小僧ガあッ!!]


 ナイトは剣を振り翳して斬り掛かってきた。


「火虎……隼」


 心を落ち着かせ、宗政と同じ波動を火虎に送り込む。


火虎の炎はぐるりとナイトの剣を巻き込み、一瞬にして地に叩き付けた。


[グォオオッ!!こノッ……]


竜之介は、抵抗する間も与えず、刃を返し下から上へと一気に斬り上げた。


[ヒギャアアアッ!!]


ナイトは断末魔の声を上げながら鎧毎分断され、頭に埋め込んでいた魔石が地に落ちて砕け散った。


その竜之介の背中を銀組隊長の武田瑠璃が頬を染めながら、熱い眼差しで見つめる。


「竜之介さん……凄いッ!!」


瑠璃は几帳面に二つに束ねた髪を大きめな紫の丸いピンで留め、弓を構えながら心ときめかしていた。


「瑠璃様」


その横で四角い黒縁の眼鏡を掛けた男が怪訝そうに呼び掛け、瑠璃を現実に引き戻す。


「あのナイトは瑠璃様が足を射抜き動きを封じたからこそ、彼が簡単に仕留められたのです」


「小早川、あ、貴方も見ましたよね?あの宗政殿の火虎を使いこなし、隼の技で最後にナイトを討伐したのは、り、竜之介さんです。竜之介さんを見ていると本当に宗政殿がそこにいるのかと、さ、錯覚してしまいます」


構えを解き、溜息を吐きながら再度、微笑んでいる竜之介を見つめる。


「確かにそうですね……」


小早川の心中は穏やかではなかった。自分達が追い込んだナイトを横取りされた挙句、瑠璃が他の男に心惹かれている事に激しい憤りを覚えた。


「瑠璃様、理解されてるとは思いますが、異性に心をときめかすなどと貴方の兄、弦真様の耳に入ると監視役を仰せつかっている私の立場がありません」


小早川は最もらしい事を言っていたが本心は、弦真に気に入られ瑠璃を自分の女にしたいと思っていた。


瑠璃は兄の名を聞かされるや否や、見る見る内に顏が強張り始めた。


「あ、兄……上」


自分の体を両腕で抑え小刻みに震え出す。その様子を見て小早川はほくそ笑んだ。


「そうですよ瑠璃様、貴方は弦真様のご命令に逆らう事は許されないのです」


肩を抱きながら瑠璃の耳元で呪文の様に囁く。


「わ、分かってます……」


俯いて力無く返事をする瑠璃に小早川は言葉を重ねる。


「瑠璃様は少々勘違いをされているようですね。そうそう、近日に私と竜之介君との試合が執り行われます」


「無論、私が勝利しても銀組を離れる気はありません。私は瑠璃様の傍にいたいですから」


震える瑠璃の背後から両腕を回しながら囁く。瑠璃の両肩がびくっと大きく震えた。


「い、嫌ッ!! 離してください!!」


瑠璃は魔の手を振り解き離れる。小早川は空を掴まされた両腕をゆっくりと見ながら言う。


「ふふふふふ。本当に貴方に釣り合う男が誰なのか直ぐに分かりますよ、直ぐにねえ」


竜之介を見ながら不敵に笑って言い放つ。


「風間竜之介、私は貴方を解析済みですよ……?」


竜之介達が飛組の詰所に帰って来た時、小早川との試合の日程について本部から通達が入っていた。


「小早川秋人……」


姫野がその名を口に出した後に顏を曇らせた。


「強いのですか?その小早川って人は?」


真剣な顏して竜之介が問う。


「銀組は……遠隔からの攻撃が主、。隊長の瑠璃は弓の雀羽、そして……小早川は双獣という二丁銃を使用する」


「銃ですか……」


この時竜之介は、銃なら俊敏に動いて的を絞らせなければ問題ないと考えていた。だがこの考えは後に大きな誤算となる。


試合当日、会場へ向かう途中、通路で小早川と偶然対面した。


「やあ、これはこれは竜之介君。偶然だねえ、会場まで一緒に行きましょうか」


友好的に穏やかな表情で竜之介に話し掛ける。


「はい。今日は宜しくお願いします!! 互いに良い試合をしましょう」


「勿論だよ竜之介君」


「良い『死合』にしましょう、フフフフ」


眼鏡を光らせながら下に俯き、口元を怪しく歪めた。


竜之介達が会場に踏み入れると一斉に観衆が湧いた。


「出てきたぜ!! 討伐数上位に付けてる銀組の小早川がッ!!」


「今回も必見だぜ!!」


「小早川様あ!! 素敵っ、頑張ってええ!!


一部の小早川ファンから黄色い声援が飛んだ。


「竜之介ッ、そんな屁理屈男に負けるな!! 頑張ってさね!!」


「そうにゃ!! 竜之介は無敵にゃッ!! 小早川なんか、けちょんけちょんにしてやるにゃッ!!」


負けじと小梅と蛍が竜之介に向けて激を飛ばした。


「ちょっと、隊長の貴方方が見っともないったらありませんわ」


玉美は怪訝そうな表情をして言ったが、心の中では竜之介の顏が描かれた応援旗を大きく振っていた。


そして瑠璃はつぶらな瞳で竜之介を静かに見ていた。


「竜之介さん……」


 互いに試合の準備を始め、小早川が先に精霊を召喚する。


「さあ、来なさい沙美阿さみあ織美阿おりびあ


小早川は一度に二人の精霊を召喚し、もの静かな沙美阿、織美阿が冷気と共に現れると、二人は直ぐに小早川の耳にそっと口を当てた。


「ん? ああ、そうだよ沙美阿。あそこに平和そうな顏をしている奴が今日の私達の敵です」


沙美阿は竜之介を見て静かに頷いた。


「フフフ、駄目だよ織美阿、そんな事を言っては竜之介君に失礼じゃないか。例え弱そうでも全力でいかないとね」


織美阿はじっと竜之介を見ているだけだった。


次に小早川は両腕に二つの鍔を同時に握り締め抜刀する。


「抜刀……双銃」


 小早川の声に反応して、青白い光を放ちながら両腕の鍔が銃に変化した。


「さあ、始めようか……」


小早川が静かに呟くと二人はそれぞれの銃にリンクする。二つの銃身に4個の刻印が表われた。


「同時に二人の精霊を召喚して共にレベル4……」


竜之介は今迄の相手とは明らかに雰囲気が違う小早川を目の前にして息を呑んだ。


「何をやる前から、相手に飲まれてるんだ?」


天竜が戦具ポケットから顔をちょこんと出した。


「あれ?師匠、今日は二階席にいかないのですか?」


竜之介が不思議そうな顏する。


「調子に乗るな竜之介。目の前の相手は明らかに別格だ。これ以上のクラスは今のお前では少々頼りない。この俺が直々に指南してやるから有難く思え」


「は、はいッ!! お願いします、師匠!!」


「礼はいいから、さっさと準備しろ。皆待ってるぞ?」


「え? あ、しまったッ!!」


竜之介は心を落ち着かせた後、抜刀を開始する。


「抜刀……火虎!」


 鍔から赤い光を放ちながら火虎が姿を現す。次に竜之介は火目子を召喚した。


*マスター!! また一緒に戦えるなんて夢のようです。私、頑張りますねッ!!*


 召還されるや否や、火目子は喜びながら竜之介に抱きつく。


「うわっ! と、とにかく相手は氷属性だし、俺達が優勢だ。頼むよ、火目子」


*はいッ、分かりました、マスター!!*


ぱっと竜之介から離れた火目子は元気一杯な笑顔を見せリンクした。火虎に5つの刻印が刀身に表れた。


竜之介の火虎のレベルを見た観衆のどよめきの中、腕を組み、鋭い目つきで竜之介を見ている男がいた。


「風間竜之介……」


 男は竜之介の名前を口に出した後、歯軋りをした。


小早川と竜之介が全ての準備を終え、定位置に着いた時点で試合開始の合図が告げらた。


「行くぞッ!! 一気に走り込んで勝負を付けてやるッ!!」


火虎を構えた瞬間、小早川の姿が残影だけを残し竜之介の目の前から忽然と消えた。


銃声が後方から聞こえ、少しずれてもう一発側面から銃声が聞こえた。


「右に避けろ、竜之介」


天竜の指示に咄嗟に反応した時、後方と側面の岩が一瞬で凍り付き、粉々に砕け散った。


その破壊力に竜之介は目を疑った。


「おや? まさかあの攻撃を交わすとは、なかなかやりますねえ、竜之介君」


だらりと両腕の銃を下げた小早川が姿を現した。


「速く動ける者が剣士だけに限られるなどと思わないでくださいね?」


そのままの姿勢で不敵に笑った。


「竜之介、こいつはまずいぞ。奴はお前を……」


天竜が竜之介に何かを伝えようとした時、小早川の表情が冷酷になった。


「ああ……、竜之介君、気をつけたまえ。僕の弾丸は今回、君用にひとつひとつに物凄いエネルギーを圧縮しているから……当たると……死んでしまいますよ?」


その異常な破壊力に観衆も気付き始めていた。


「おぃ……あれ……まともに喰らったら竜之介の奴、死んでしまうんじゃ……?」


「……ああ。俺もそう思う。止めろよ!!」


観衆の言葉の通り、その弾をまともに受けた場合、無事ではいられない。竜之介は小早川からしたたかな”殺気”を感じた。


だが、試合を止める様子は一向に見られない。


「では、続けましょうか? 死合をッ!!」


 再び小早川の姿が消え、続けざまに銃声が鳴り響いた。


「上に飛んで身体を左に捻ろッ!!」


竜之介は、右足を大きく踏み込み高く飛んで身体を左に捻った。


刹那、


竜之介の眼下に地面が土煙を上げながら弾丸が通過していくのが見え、身体を捻った先にほくそ笑みながら、銃口を向ける小早川が見えた。


「死ねえッ!!」


竜之介の頭を目掛け弾丸が襲い掛かって来たが、天竜が先読みしていた為、火虎でそれを受けた。


殺傷能力のある弾丸は爆風だけで竜之介を簡単に吹き飛ばした。


「右だッ!!」


天竜が叫んだ瞬間、すかさず二発目の弾丸が右方向から竜之介の心臓を目掛け襲い掛かる。


「竜之介君!! これは交わせないでしょう!!」


竜之介の居た場所に激しい爆煙が立ち上り、立ち所に周りを凍り付かせた。


小早川は氷漬けになった竜之介を想像し、ほくそ笑んだが、その先に赤く燃え滾る火虎を構え自分の攻撃を凌いだ竜之介の姿が飛び込んできた。


「師匠、大丈夫ですか?ちゃんといますか?」


「ああ、前回は思いっきり振り落とされたからな。今回は改良して落ちないようにした。それより学習出来たか?奴の弾道を先読みする術を?」


「ええっと……分かりません……」


「馬鹿者ッ、お前は何を見ていたッ!! 神経を張り巡らせて周りに集中しろ、奴が弾丸を発射する時、銃身を安定させる為に一瞬だが、足を止める必要がある。その時には必ず銃口が光る。それを把握して対処すれば避ける事など造作も無い事だ」


「さ、流石、師匠ッ!! よし、それさえ分かればッ!!」


小早川は、火虎を構え自分を睨み付けている竜之介に驚いた表情を見せた。


「ふむ……なかなか厄介ですね……。普通なら確実に君を『殺せた』筈なのですが……」


竜之介は、その言葉を聞いて叫んだ。


「やはり!! 貴方は俺を最初から殺す気だったのですねッ?!」


「困るのですよ、竜之介君。やっと恋敵が死んでくれたと胸を撫で下ろしていた所へ君みたいな風雲児にいきなり現れて貰っては……」


小早川は拳銃をだらりと下げてボソリと呟く。


「まさかここまで君に私の動きが読まれるなどと思っても見ませんでしたよ。もはや出し惜しみしている場合ではありませんね……」


怪訝そうに呟いた後、小早川の姿が消え銃声が鳴り響く。竜之介は左から銃口が鈍い光を放ったのを見逃してはいなかった。


「見えたッ!! 左だあッ!!」


「馬鹿がッ!! 双獣暴壁そうじゅうぼうへき!!」


その瞬間、弾道の先にから2枚の氷プレートが出現し、上空に展開した。


弾丸が一枚目の氷プレートに接触した瞬間、弾道があらぬ方向へ変化した。


「なッ!?」


更に二枚目の氷プレートが弾道を変えて、竜之介を襲った。


「かっ、交わしきれないいッ!!」


物凄い爆音と共に周りが凍り砕け散った。


「フハハハッ!! 今のは確実に当たりましたねっ、流石に凍り漬けでしょう?」


「きゃああああああっ!! 竜之介っ!!」


観衆から悲鳴が上がった。


小早川は狂気な笑みを浮かべ、竜之介が居た場所を見たが予想を見事に裏切られ唖然とした。


「な……あり得ない!! 私の弾は竜之介君を確かに捉えた筈!!」


竜之介への致命的な一撃を火虎が炎を燃やして何とか威力を抑えたが、その大きな代償として刻印が1つ消滅していた。


更に甲冑は部分的に凍り付いて破損し、生身の部分まで深い傷を負わせていた。


そんな竜之介を見ても小早川は納得してはいない。呆然として驚きの言葉を漏らす。


「何故、君はまだ生きて立ってられるのですか? そんな事は絶対にあり得ないのですよ!!」


暫く口を開けて竜之介を見ていたが、何かに気付くと、その口をゆっくりと閉じた。


「成る程、君が持つもう一つの力――ですか」


小早川に言われて、竜之介は目を見開いた。


――ああ……そうか。チェスの力か、こんなところで威力を発揮するとは……。


竜之介は苦笑した。


「フフフフ、本当にしぶといですね!! ですが、私の攻撃に何時までその力が持ち堪えてくれますかねえッ!?」


「――!!」


その言葉を最後に小早川は消え、不気味な笑い声がだけが響き渡る。


直ぐ様銃声が鳴り響き、2枚の氷プレートが弾丸の軌道を変え、あらゆる角度から竜之介に襲い掛かった。竜之介は弾丸の雨から逃れるのが精一杯で、徐々に刻印と甲冑が無惨にも削り取られていった。


「火虎の刻印があと2つ……小早川を捉える事が出来ない限り勝機が見出せないッ!! どうすりゃいいんだッ!!」


「竜之介、どんな強力な武器でも弱点は必ずある。冷静になれ」


天竜の言葉に竜之介は、暫く小早川が自分を撃って来ない事に気付いた。それを悟った天竜が鼻を鳴らして言った。


「やっと気付いたか。奴は弾丸を打ち尽くすと必ず俺達の前に姿を現し、弾丸を装填する時間を稼いでいた。そこを攻めろ」


「師匠、ですがあの2枚の氷プレートが火虎の一太刀を阻み、その間に装填を完了されてしまったら、間違い無く俺は双獣にゼロ距離から撃ち殺されてしまいます」


天竜はその言葉を聞いた後、竜之介にヒントを与える。


「目には目を歯には歯を。お前は鍔を何枚持っている?」


「鍔を何枚……あっ!!」


竜之介の表情がパアッと明るくなった時、小早川が攻撃範囲内に姿を見せた。


「フフフ、どうやら火虎の刻印が残り少ない様ですね? このまま全て削り取った後、君を蜂の巣に……」


小早川の台詞が言い終わらない内に竜之介は火虎を右手に握り走り出した。


「どうやらやっと双獣の弱点に気付いた様ですねえ?ですがその一太刀は受けて……そこで終わりですッ!!」


小早川は2枚の氷プレートを自分の元に引き寄せた。


「フハハハアッ!! 竜之介くうんッ残念ですが、私の勝ちですう!!」


 2枚の氷プレートを盾にして狂気の笑い声を上げた。


「誰が一太刀だって言ったああッ?!」


竜之介は小早川に走り寄りながら水晶に触れ、叫ぶ。


「こいッ!! ハルッ!!」


*なっ、なんじゃあ?*


ハルは水晶から現れるや否や駆け出している竜之介を見て慌てて追いかけた。


直ぐ様竜之介は風神の鍔を握り締め心を研ぎ澄ます。日々実戦を積み重ねた今の竜之介には瞬時に無の境地に達するのは容易かった。


「……抜刀風神……」


予想だにして無かった竜之介の行動を見て小早川は声を荒げた。


「きっ、君が二刀流だとッ!? うっ、うおおおッ!!」


「つあああッ!! 火虎灼牙しゃくがあッ!!」


火虎は炎の牙で2枚の氷プレートに噛み付き一瞬にして消滅させた。


「ひっ、ひひぃッ!!」


小早川は悲鳴にも似た声を漏らしながら、装填が終わっていない双獣の銃口を慌てて竜之介に向け始める。


「遅いいッ!! ハルッ、力おおおッ!!」


*あい、分かったあ!!*


振り上げた風神にハルがリンクし、瞬く間に5個の刻印が刀身に表れる。


「まっ、待ちたまえッ、まだ、そ、装填が、装填が……あッ!!」


「風神……昇龍刃しょうりゅうは!!」


風神が小早川に振り下ろされた瞬間、風の波紋が一気に広がり、凄まじい迄の竜巻が砂と小早川を巻き込んで一気に空中へと上り詰めていった。


「ああああああああああっ!!」


小早川は悲鳴を上げたまま、落ち葉の様にくるくると回転しながら急降下した後、そのまま地面に激しく叩きつけられた。


激しい衝撃音と砂煙が上がりそれが徐々に収まった時、地面が大きく削り取られた中心で、2枚の鍔が転々と散乱したまま、完全に気を失っている小早川の姿があった。


その映像が中央モニターに映し出された瞬間、試合終了のアナウンスが告げられた。


「かっ、勝ったあ……ッ!!」


竜之介は火虎と風神を両手で構え叫んだ。


途端に観衆から一斉に称賛のシャワーを浴びる。


「凄いッ……二刀流なんて初めて見たッ!!」


「ステキすぎるッ、竜之介様ああッ!!」


直ぐに蛍が反応する。


「こらああッ、お前らさっきまで小早川を応援してたじゃにゃいかああッ!!」


*マスターッ!!*


喜びの声を上げながら火目子が火虎から飛び出して抱き付いた。


ハルも風神から抜けその様子を何気に見ている。


*竜之介も……中々いい面構えになってきたかのう……。*


急に穏やかな気持ちになり、竜之介をじっと見つめていた。


「ハル、本当にありがとう!!」


意表を突かれ竜之介に感謝の言葉を言われたハルは、見る見る内に顔が赤くなっていく。


*お、おうう!!*


ハルは何故か竜之介の顔をまともに見れなくなり、火目子の襟首を掴みながら慌てた表情を見せた。


*ご、ご苦労だったな竜之介。じっ、じゃあ、また!!*


「あっ、ハルっ!?」


そのまま火目子を巻き込み水晶へと戻っていく。


*ああッ!! ま、マスターああッ!!*


残念な言葉を残して火目子も水晶に引き込まれていった。


「……はは」


竜之介はその場で呆然としてしまった。


「竜之介さん、ほ、本当に凄い……に、二刀流なんて恰好良過ぎです」


そんな竜之介を遠目に、憧れの表情を見せながら瑠璃は深い溜息を付いた。


「風間竜之介……。貴様は我が妹を拐かす天敵と見なす……」


 その様子を見た男は殺気を込めて一言呟いた後、マントを翻しそこから静かに立ち去って行った。


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