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■露天風呂に行こう!!

「……うむ、いい夜空だ」


「いい月、いい星、いい温泉ってね!!」


 竜之介は小梅に教えてもらった道を登ってゆく。山道だが温泉に続く道は点々と照明が取り付けられているので、歩くには困らなかった。


 どんどん登って行くと、小梅が言っていた通り立て札があり”十洞山温泉”と書いてあった。


「ふむ、こっちか」


 立て札に従って道を進む。次第に湯気が立ち込めてきた。目的の温泉はもう、すぐ目の前だった。


 温泉は、かなり広く、やろうと思えば泳げる位の広さがあった。


「では、早速……!!」


 そう思い、服を脱ごうとした時、何かの注意書きに目が付く。竜之介はそれを読んでみた。


「竜之介の脱衣場はあっち→」


 名指しで書かれている為、竜之介は訝しげな顔を一瞬したが、素直にそれに従う事にした。


 服を全部脱ぎ捨て、生まれたままの姿になった竜之介はご機嫌で湯船に向かった。


「とりあえず、湯加減を……お、いい感じ!!」


「ひゃっほーっ!!」


 竜之介は波渋きを激しく撒き散らしながら、勢い良く温泉に飛び込んだ。


「くぅううっ!! 最高おっ!!」


 竜之介が感動して叫んだ時、


長信「ガキだな」


宗政「ええ。子供ですね」


 竜之介は二人に冷ややかに言われ湯に顔を半分浸け、蟹のように泡をぽこぽこと出した。


 十洞温泉の近くには川が流れており、竜之介はその音を楽しみ、夜空を仰いだ。すると宝石のようにちりばめられた星がどこまでも広がって見えた。


 この景色を三人で楽しむ。長信と宗政はとても満足していた。


 竜之介の体が程よくあったまってきた頃、少し離れた場所で人の気配を感じた。


「……むっ?」


 その気配は足音へと変わり、竜之介の方へゆっくりと向かって来ていた。


 竜之介は、こんな時間に来る者は”野朗”だと直感で判断し、岩陰から脅かそうという暴挙に出た。


 温泉の真ん中は丁度岩陰みたいになっており、仕切りの役目を果たしている。


 竜之介は脅かすには絶好な場所だと考えた。


 その足音がどんどん近くなり、竜之介は岩陰に身を潜めて、脅かす準備をした。湯気が絶妙にカーテンの役目を果たしていた。


 やがて……衣服が擦れる音がする。どうやらターゲットが脱衣を始めたらしい。


「ははん、服を脱ぎだしたな……見てろよッ!!」


 湯船の波紋が竜之介の方まで広がった時、ターゲットが温泉に浸かったのを竜之介は把握した。


――いいぞ、こっちにこいっ!!。


 狙ったとおりにターゲットは竜之介の方へ向かって来ていた。その音はだんだん大きくなっていく。


 竜之介は岩陰からターゲットを確認しようとしたが、湯気が邪魔して相手の顔はまだ確認出来なかった。


「……介?」


 その時、誰かが竜之介の名を呼んだ。だがその性別については、川の音が邪魔して良く聞き取れなかった。


 ターゲットはもう目の前にまで迫ってきていた、


 竜之介は襲い掛かるタイミングを計り始めた。


――5……4……3……2……1……。


 ターゲットが丁度岩陰の仕切りを越え、竜之介の横にさしかかった時、


「おらぁああああっ!!」


竜之介は思いっきり、ターゲットにタックルを仕掛けた。


「きゃああっ!!」


 波飛沫をあげながらニ人湯の中に沈んだ。その時、竜之介はとんでもない事に気付いてしまった。


 それは相手の体がごつごつではなく、ふにふにだったのだ。


「え……やっ、柔らかい?」


 そう思った瞬間、竜之介は太ももと太ももの間に顔を挟まれてしまい、身動きが取れなくなってしまった。


「ぐぉっ……がばばば……」


長信「かっ観音さピー」


宗政「ごっ、後光がっピー」


 この時、長信と宗政は拝み倒し、竜之介はくだらない行動に出た報いとして、温泉の湯をたらふく飲む羽目になった。


「いやあーーーーーーっ!!」


 湯船の中で女の声が響いた。


「がぼがばがぼがべ(お願いだから、頭離してくれないかな……)」


 気力を振り絞り言ってみるが湯の中なので、口の中から泡が空しく出るだけだった。


 この時竜之介は思った、俺はこんなところで死んでしまうのか?死に方が情けないが、太ももと太ももの間でなんか凄いもの見えたから悔いはない!!と。


「がぼあっ!!」


 そこで竜之介は意識を失う。


「……介!!」


「之介!!」


「……竜之介!!」


 この時竜之介は思った、ああ……頭上に手に余りそうな桃が2つ実っている。ここは桃源郷か? 成る程、俺は溺れ死んでしまったんだなと。


 そして、その桃を取ろうとして手を伸ばす。


 この時竜之介は考えた、うむ、実にやわらかい大きな実だ、と。


「ちょ、竜之介……っ!!」


 ここで竜之介は意識が回復した。竜之介が伸ばした手は桃ではなく、小梅の胸を掴んでいた。


 竜之介は、その小梅の太ももの上に布切れ一枚を敷いてその上に頭を乗せられていた。


「竜之介って……意外と大胆さね」


 小梅が潤んだ目で竜之介を見つめた。


「……へ?」


「あれ? ……小梅さんが、何でここに!?」


 竜之介は慌てて起き上がろうとしたが、


「竜之介、まだ頭打ってるかもしれないから動いたら駄目さね」


 そう言って、強引に押さえつけられ頭を撫でられる。その力は相当なものだった。


「うお……動けない」


「それにしても……竜之介は着やせする体なのさね? 意外としっかり筋肉がついてるさね」


 小梅が竜之介をゆっくりと品定めし始めた。


「ふーん……竜之介はちゃんと鍛錬してるみたいさねぇ」


――凄い!! 分るんだ!!。


 流石香組の隊長だと竜之介は感心してしまった。


 小梅は竜之介の割れた腹筋の溝を人差し指でつつつつと優しく辿った。温泉の湿度が高いのか、小梅の顔が真っ赤になっていた。


 小梅の人差し指は下半身をゆっくりと目指し始めた。


 竜之介は慌てて下半身を見たが一応タオルを巻いてたので安堵の溜息を付いた。


「ねぇ……竜之介、ここには私とお前二人だけしかおらんさね。この意

味お前は分かるか……さね?」


 そう言って小梅は顔を竜之介にゆっくりと近づけてきた。


 竜之介はこの時思った、ああ、俺は喰われる!! と。


 竜之介は必死に抵抗してみたが、小梅にツボを押さえられて金縛り状態になっていた。


「無駄な……足掻きさね……」


 小梅は冷ややかにほくそ笑み、更にもっと距離を縮めてきた。


「ああ……もう駄目だあっ!!」


 そう、竜之介が観念した時だった、


「にゃあああああああああっ!!」


 その声と共に小梅の頭ががしっと掴まれた後、強引に引き戻された。


「あだだだだだっ!! そっ、その声、ほっ、蛍さねっ!!」


 蛍は仁王立ちしてふふん!! と息巻いた。


「小梅、あんたの悪巧みなんか、いちのを通して、お見通しにゃっ!!」


「くっ、いちの!! お前、裏切ったさねっ??」


 顔を歪めていちのを睨む。


「だっ、だって!! 竜之介さんと二人きりなんて……やっぱり駄目ですっ!!」


 いちのは首をぶんぶん横に振っている。


 竜之介はいちのの可愛い仕草を見て、山で感じた不安は気のせいだったのだと安心した。


「竜之介、危なかったなりね!! ささっ、こっちに非難するなり!!」


 何処から現れたのか、音々が竜之介の金縛りを解いた後、手を取って誘導する。


「音々っ!! 甘いっ!! そう簡単に私の竜之介は渡さねえぜぇえ?」


 美柑が中指を立てて叫んだ。


「ちっ!」


 竜之介捕獲計画がばれた音々が舌打ちをした。


「あ、あのっ、美柑さん!! な、何を言ってるんですか!! 竜之介さんは誰の物でもありませんっ!!」


 大きなタオルを体に巻いたいちのがムッとした声で反論する。


「あんだとう? おめえ、いちの、かわいこぶってタオルなんざ巻いてるんじゃねえ!! 十洞っ娘は恥らうべからず!! うりゃあっ!!」


 美柑は訳の分からない事を叫んだあと、いちののタオルを剥ぎ取った。


「きゃああああ!!」


 竜之介は今、目の前で起きている修羅場を目にしていた。


 左を向く。温泉の中央で、足を踏ん張り両手を握り合い力勝負をしている小梅と蛍の姿があった。


「にゃにゃにゃにゃーーっ!!」


「ふぬぅうううううう……!!」


 右を向く。きゃあきゃあ言いながら、いちのと美柑が口論している。


 正面を見る。


「……竜之介。疲れただろう?背中を流してやる」


 姫野が両手に石鹸とタオルを持って照れながら何か言っている。一緒に付いて来ていた黒丸は頭に小さいタオルを乗せ温泉に浸かる気満々だった。


「姫野、それは、私がやるからいんです!! こっちによこしなさいっ!!」


 桜子が姫野の石鹸を取ろうとする。


「……桜子姉さん、嫌だ。大体桜子姉さん、竜之介の事が嫌いなんでは?」


「だっ、だっ、誰が何時そんな事いいましたッ!? 私は一事も言ってませんよっ!!」


 何とも言えない雰囲気の中、こっちでも静かなバトルが始まってしまった。


 この時竜之介は思った、あれ? 俺は確か自分を癒しにここに来たんだよな……。なのに何なんだこの状況は? と。


 気が付けば、竜之介の知っている隊長が温泉に集結していた。


 こうして、騒動はなんとか落ち着き、竜之介は皆の中心に囲まれるように温泉に浸からされ、温泉から出ると順番決めによって、部分部分、隅々まで体を洗われてしまった。


 竜之介が桃源郷に囲まれながら天を仰いだ瞬間、一筋の流れ星が竜之介の涙を物語っている様に、眩しく輝く星々の間を流れ落ちていくのであった。


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