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■変化

 頭の中で規則的に時間を刻み何かの雫が落ちていく音を感じながら、竜之介の意識は徐々に回復し始める。


 ゆっくりと目を開けた竜之介はとりあえず自分の手に力を入れて見た。その感触から自分はまだ生きている事を実感した。


「ああ……点滴か」


 だんだんと状況が掴めてきた竜之介がベットからのそりと起き上がると、


「お!! 竜之介にゃんが目を覚ましたにゃあ!!」


「くっ……まだ、頭がぐらぐらするな」


 竜之介がそう思った瞬間、


 何かが、竜之介の体をぎゅっと締め付けた。


「ぐえええええっ、中身がでっ、出るッ!!」


 このショックで意識が更にはっきりとした。蛍が馬鹿力で竜之介に抱きついていたのだ。


「こらこらこらあっ!! 蛍、離れるなりよッ!!」


 それを、音々が強引に引き離そうとする。よく見るとその手の数が多い。


 その手の持ち主は姫野だった。姫野はムッとした顔で竜之介から引き離そうとしていた。それを見た竜之介は、


「このギャップがなんとも可愛いな」


 などと、邪な事を考えていた。


「竜之介が3日も起きないから、ずっとこのままかと思って心配したにゃあ!! 目覚めてほんと良かったにゃあ!!」


「……ええ?3日ぁ?!」


「そうさね、お前は初陣でぶったおれて3日も呑気に寝てたさね」


「……立てるか? 竜之介?」


 姫野が心配して竜之介に言う。


 竜之介は3日ぶりに立ってみる。最初は足に少し痛みを感じてぐらついたが、その問題はすぐに解決した。


 それを皆が見届けると安堵のため息を付く。


「でにゃ、でにゃ、竜之介にゃんは本当にすごかったんにゃ!!」


 蛍が、興奮気味に竜之介の武勇伝を切り出した。


「私達、みな半身まで沈んでもう駄目にゃと思ったときにゃ!!」


 ばんばん机を叩く。


「意識も途切れかけた傷だらけの私のにゃいと様が……」


 と、言ったところで蛍が冷ややかな目で睨まれた。


「あー……えへん、おほん、竜之介にゃんが濁流に向けて火虎をこう、ざくうっと!!」


 ばんばんとまた、机を叩く。


「そしたら、にゃんと!! 真っ赤な炎が、ばばばーっと吹き出して、あっというまにただの土に戻ったにゃあ!!」


「く~っ!! あの時の竜之介にゃんは、女心を揺らしまくりにゃあああ」


 ばんばんばん!!みしみし、ばん!!みしっ……徐々に机の高さに変化が生じてきた。


「コラ!! 蛍、いい加減にするさね!! 机がこわれるさねっ!!」


 小梅がキレかかっている。


「……いや、あの技は見事だったぞ」


 姫野が腕を組んだまま、こくこく頷いた。


「あーあ、私も合流すればよかったなりなぁ……」


 音々が残念そうに言う。


「残念。私も見たかったです」


 瑠理も続いて残念そうに言った。


「にしても、久々にあのシヴァが現れた時は本当にもう駄目かと思ったにゃあ」


「不思議なことに、大人しく帰っていったにゃ、疲れていたのかにゃあ?」


 蛍はうーん? というような仕草を見せる。


 竜之介はその理由を理解していた。シヴァは宗政と再び剣を交えたいが為にそこに現れた。だが、その時既に虫の息だった自分を見て別人と判断し、そこから立ち去ったのだと。


「竜之介、お前は寝ていて何も知らないんだろうが、大変だったさね」


「誰が、竜之介を着替えさせるか、体を拭くだとか」


「……え?」


 その事実を知らされ、竜之介は固まった。


「凄い言い争いになってきてな、終いには抜刀する奴も出てきて結局勝った者が!! と大人気ない事を言う始末さね」


 小梅がふっという仕草して姫野を見て言った。


 竜之介がすかさず姫野をじとーっと見ると、姫野はささっと目線を逸らした。


「まぁ結局公平にじゃんけんって事で収まったけどにゃあ」


「で、結局服を着替えさせたのが瑠理なり……ちっ」


「え……瑠理さんが?」


「で、体を拭いたのが姫野にゃあ。あーあー残念にゃ……」


 竜之介が瑠理を見ると体をくねくねさせながら、モジモジしていた。次に姫野を見ると得意げにVサインをしていた。


「あはははは……」


 竜之介が苦笑いをした時、


 誰かが強引に足をドアの隙間に引っ掛けて大胆に開けた。


「なんだよぉ? こんな所に隊長集団が揃いも揃って何サボってんだよ!!」


 美柑が、何かの薬品を抱え、入ってきた。


「お? 竜之介、やっと目覚めたか。起きたのならさっさと、ここから出ていきなッ!! ここは病人が来るところだからな!!」


 竜之介の点滴を速攻で外しながら、怪訝そうに言った。


「全く、お前ら、こんななよなよした男の何処が……ん?」


そう美柑が言いかけて、途中で言うのを止めた。


「お、おぃ、竜之介……お前、なんか雰囲気変わってないか?」


 美柑が、竜之介に近づき、そして突然臭いを嗅ぎだした。


「くんくん……む? むむむ?」


 美柑の表情に驚きが表れた。


「驚いた!! こないだまでガキの臭いだったのに、うまそうなおとこの臭いがするっ!!」


 そういった途端、がばーっと僕に抱きついて来た!!


「こらああああああああああ!!」


 怒号と共に美柑は一気に竜之介から引き離された。


「美柑、なっ、何しとんじゃああなぁりぃいいいい!!」


 音々がブチ切れた。


「てへっ」


 美柑が、おどけてシラを切り、すぐマジメな顔になった。


「驚いたね……漢の原石がこんなところに転がっているとは!! いやぁ、美柑ちん失敗失敗」


 その発言に部屋がシンと静まり返った。


 そして、再び顔を近づけ人差し指を竜之介の唇に当て、それから自分の口に当てた。


「竜之介さぁ、こんな小便臭いガキよりも、魅力ある大人の方がいいんじゃね?」


 同時に全員の頭に100tのハンマーが落ちる。勿論イメージだ。


 この爆弾発言の後、皆が小競り合いをし、もみくちゃになりながら医務室を出て行ったのであった。


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