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■頂点への険しき道

 竜之介は、桜子から貰ったメモを見ながら部屋を目指していた。


「あ、確かここは桜子さんが2階から見てた場所か!!」


「うおお……懐かしいな!! 昔と全然代わり映えしねえな!! おいっ!!」


「そうなんですか?」


「おお、あの頃と同じだ」


 竜之介が建物を移動している中、銀組の瑠理とばったり遭遇した。


「あ!! あの、竜之介さん、こっ、こんにちわ!!」


 瑠理が思い切って声を掛けてきた。竜之介は急ブレーキを掛け、瑠理の目の前で止まってから、


「あ、瑠理さんこっ、こんちわ!!」


 そう言ってからその場をやりすごそうとした時、


「竜之介、ちょっと待てっ!!」


 長信に急に呼び止められた。


「なっ、何ですか?長信さん」


「お前なぁ、勿体ねえぞ!! せっかくこんな美人がお前みたいなへたれに声掛けてくれてるっていうのによお。」


「いや、俺はこういうの苦手で……」


「かーっ!! 情けねえっ!! いいか、俺様が手本を見せてやるから、俺様の言った事を口に出せ!!いいな?」


「ええっ!?」


「つべこべ抜かすなッ!! 赤玉、お前もさっきから煩いッ!!」


 竜之介は渋々それに従う事にした。


「まずは、瑠理に近づいていって壁に追い込め」


「え?竜之介さん……!?」


「追い込んだら、瑠理の頭上に右手を置いて距離を縮めろ、獲物を逃がすなッ!!」


「ああ……どうしましょう?」


「よし、ここでこの台詞っ!!」


「瑠璃さん、開いているか開いてないか分からない瞳が、凄く可愛いね」


 瑠理は竜之介の後ろに存在する長信の姿を感じ、その心音が聞こえるほどに動揺していた。


「あ、あのっ、ありがとうございます!!」


「ほれ、ここで止めの台詞ッ!!」


「もっと、瞼を開けて、その綺麗な瞳を俺に見せてみろよ?」


「あ、あああああ……」


 竜之介はそっと左手を顎に添える。瑠理は足をがくがく震えさせ、その場でふにゃりとへたりこんだ。


「よっしゃあああ!!! 上出来だ、竜之介、捕獲成功ッ、次に行くぞおッ!!」


「だああああっ!! 長信さん!! 俺になんてことさせるんですかっ!!」


 竜之介はまた走り出した。


 竜之介が廊下の角を曲がった後、蛍が顔を真っ赤にして呆然としている瑠理と遭遇した。


「ん? そんなところでどうしたにゃ? 瑠理にゃん」


 様子がおかしい瑠理を覗き込み、その表情を見て、蛍は大きな声を上げた。


「る、瑠理にゃんの目が、お、大きく、ひ、開いてるにゃあああああああ!! ひいいっ!!」


 竜之介は桜子が居る建物の前に辿り着く。扉の前では手に薙刀を持ち、女が二人入り口を塞いでいた。


「あっ!! あなたは、竜之介様っ!!」


 前田の一件で竜之介は既に有名人になりつつあった。


「よおし!! ここで第二弾、いくぜえええ!!”


「まっ、またですか!! とほほほほ」


 竜之介は諦めてそれに従う。


 そして、何のためらいもなくその警備の一人に近づいていく。その距離は顔と顔が接触しそうなくらいだ。


「その調子!! その調子!!」


「……と、いう訳でよ、俺様は桜子に呼ばれたから、中に入るぜ?」


「はっ、はいっ!! どうぞっ!!」


 そのまま、どかどかと中にはいる竜之介。入り口では、きゃあきゃあ喜んでる声が聞こえた。


「よし、これでお前も立派なジゴロだ!!」


「うう……なんて事を俺はしてしまったんだ!!」


 竜之介は階段を登り、2階を警備している女にさっきと同じように話し掛け、部屋に案内してもらっていた途中で偶然桜子と遭遇した。


 だが、桜子の手を摑み、何かを言っている男が一緒にいた。その人物は「王将」明智秀光だった。


「桜子、待たせたな!! 約束どおり来てやったぜ!!」


 桜子は竜之介に気づき、秀光の手を払いのけすがった。


「長信……?本当に貴方なのっ!?」


 竜之介はにかっと笑った。


「な、長信……っ!!」


 桜子の言葉に反応した秀光が表情を強張らせ、ゆらりと竜之介の方を向いた。


「何ぃいい? 長信……だとぉおおお?」


 秀光はもの凄い殺気を放ち、竜之介と目が合った瞬間、ククククと嘲け笑った。


 「笑わすでない!! 小僧、貴様が長信だと? クハハハハハハ!!」


 そして、その笑いはすぐに止んだ。


「分ををわきまえろ小僧、ここは貴様が来るような所では無い、命惜しくば、早々に立ち去るが良いッ!!」


 普通ならこの殺気に圧倒され、誰もが尻尾を巻いて逃げるだろう。だが、今の竜之介は別だった。


「秀光……ッ!! 貴様、貴様良くもこの俺様を……っ!! 竜之介ッ!! こんな奴に怖気づいてんじゃねえよ!! こう言ってやれっ!!」


「ふん、……嫌なこった。人を見かけだけで判断してると、足元救われるぜ?王将さんよぉ……?」


「きっ、貴様あああああ!!」


「ここで、特別授業だ!! お前に殺気の放ち方を速攻で教えてやる!! いいか、良く聞けッ!!」


 竜之介は長信からその手法を教わると、軽く頷きそれを実行に移した。


「相手を喰らえ……」


 竜之介はぼそりと呟くと、秀光に劣らない殺気を放ちだし、その殺気はやがて黒い闇と化し、おぞましい龍へと変化していく。


「竜之介!! おめえ、才能あるじゃねえか!! まさか速攻で殺気の具現化を遣って退けるとはなああっ!!」


 その重圧が秀光を徐々に押さえていく。


「もっとだ、もっと……!!」


「あ?なんだ?この桁外れな闇は……?」


 長信は竜之介から放たれる異質な闇に一瞬、不快感を覚えた。


「きっ、貴様…………っ!!」


 秀光は竜之介の背後に存在する長信の姿を見た。


「ぬぅうううううう」


「そうだった、俺様はこれを言うのを忘れてたな……」


「てめえ、良くも俺様を殺しやがったなああっ!!」


「なッ!!」


 竜之介の言葉に桜子と秀光の表情が引き吊った。桜子は鬼の形相で秀光を睨んだ。


「秀光……今の話は本当なのですかっ!!」


「くっ!! お、面白い・・っ!! 己の愚かさで、崖から転落した阿呆が、亡霊となって我の前に現れたというのか?クククっ、これは傑作だああ!!」


「ウがあああああああああッ!!」


 秀光が吠えると、竜之介の闇が全て打ち消された。


「ちいいッ!!」


 秀光はそのまま踵を返し、少し歩いた所でピタと足を止め、再度振り返り、竜之介を鬼の形相で睨んだ。


「良かろう……ならば長信の亡霊よ、実力で全ての強者を倒し、再び我の地位まで上って来るがいい!! クク……ククククッ!! ふははははははあっ!!」


 そういい捨て、そのまま去っていった。


「各組の強者を全て打ち負かした者は王将への挑戦権が与えられる」


 桜子が重い口を開いた。


「……今までは、飛組のと成が居なかったため、今日まで実現されないものとなっていましたが、今は貴方がいます」


「これで、その条件に当てはまりました」


「そして、竜之介も挑戦権を得られる代わりに……貴方もまた、他の強者に挑まれる事になるのです」


「今は、皆かなり実力があがっていると、姫野から聞いています。その道は辛く険しいものとなるでしょう」


「竜之介……貴方はそれでも頂点を目指しますか?」


 桜子の問いに、長信が竜之介に言葉を伝える。


「まぁ、誰が来ても俺様は負けないけどな」


「そう。あくまでもあなたの中に長信が居ると? ……そうやってあの人と同じ仕草を……そうですか、それでは」


 桜子は、はぁ~っと深く深呼吸をした後、


「この浮気者めえっ!!」


 竜之介は桜子に一喝された。


「うおおっ!!」


 その声に長信が本能的に反応する。桜子はそれを見ると静かに微笑んだ。


「長信は無類の女好きで……」


「いつもドタバタしていて……」


「本当に暴れん坊で……私をやきもきさせ」


「……そんな貴方を振り向かせるのに幾度時間を費やしたのやら」


 そう言うと竜之介の頬にそっと手を触れた。桜子の瞳は涙で潤んでいる。


「桜子さん……」


 竜之介はそっとその涙を拭った。


「桜子、お前をそんな風に悲しませてしまって、すまねえ!!」


「竜之介、もういい、ここから引き上げるぜ……」


「え?……長信さん?」


「いいから、今すぐ離れろッ!!」


「わ、分かりましたっ!!」


 竜之介は桜子から離れると、一目散に廊下を走り出した。


「……っ!!」


 その走り去る竜之介の背中を見つめる桜子の瞳はとても悲しいものであった。


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