■原因
竜之介は目覚めた。そしてすぐに今自分が居る場所が医務室である事を把握した。
「じゃあ、とっとと起きるか」
「せーの、よっと!!」
勢いに任せて起きると、その勢いの何倍も体中にあちらこちら激痛が走った!!!
「うっぎゃあああああああ!!」
竜之介は激痛に耐え切れず、思わず叫んでしまった。
――そうだ!! ……念のため!!。
「おーぃ、長信さーん、宗政さーん!! 聞こえますかー!!」
竜之介は二人に話し掛けてみたが、やはり反応は無かった。
「やっぱりかぁ、うーん??」
竜之介は納得がいかず腕を組んで悩んでいると、医務室の入り口あたりで言い争っている女の声が聞こえた。
「ん?あの声は……」
――一人は……姫野さんだ。もう一人は聞いた事のない声だな?。
竜之介はその話に集中すると、なんとなく会話の内容が聞きとれた。
「だから、桜子姉さん、何度も言ってるけど、あれは長信じゃない宗政なんだ……」
「いいえ!! 試験の日に姫野も見ていた筈です。あれは紛れも無い長信です!!」
「いや、違う、私の黒丸は、長信には懐かないッ……!!」
「あの、差し出がましいのですが、姫野も、桜子様も竜之介に宗政殿と長信様の幻をすげ違えているだけなのです。竜之介さんは竜之介さんかと……」
――あ、瑠理さんが頑張って説得している。
「違う(います)!! 姿は違えど宗政(長信様)は再び私の前に現れてくれたのだ・・!! (です!!)」
――……姉妹だけあって流石、息がぴったりだな。
「とにかく姫野、竜之介を明日から私の護衛役として傍に置きます!!」
「駄目……!!」
「桜子様!!それは少し横暴なり!! (さね!、にゃ!、です!)」
――なんか、修羅場ってるなぁ……。
竜之介は今までの力が自身の力では無かっただけにその口喧嘩が他人事の様に聞こえていた。
「しょうがないですね姫野、では百歩譲って一日交代としましょう」
「……それなら、良い」
「ええええっ、そんな!!!」
各組隊長が一斉に不満の声を上げた。
辺りが急に静かになり、口論が終わったかと思われた時、おもむろに医務室のドアが開いた。
そして足音がどんどんこちらの方へ聞こえてきたかと思うと、
仕切りのカーテンが開かれ、数人の女中を連れた桜子が竜之介の前に現れた。
「さぁ竜之介、今すぐ長信に会わせなさいッ!!」
桜子の発言が余りにも突拍子すぎた為、竜之介は目を丸くした。
「あの……俺、おそらく長信さんらしき人には会ったんですが、その姿は人魂で姿も分からなくて……」
竜之介はしどろもどろで返事をする事しか出来なかった。その態度をみるや否や、桜子さんの表情が曇った。
「人魂? 竜之介、あなたは一体何処で長信と出会ったのですか?」
桜子に問われ、竜之介は自分を指差し、苦笑いをした。
「えっ? 貴方の中でですって・・? ふ、ふふふふっ!!」
すると、突然桜子が笑い出した。
「なんて可笑しい事を言うのかしら? そんな馬鹿な話がある訳ないでしょ?」
――いえ、あるんですって……実際。
竜之介は目で訴えかけたが、
「私はあなたではなく、長信に会いたいのです!! 居ないのならここには用はありません、帰ります!!」
桜子は出口に向かう途中でぴたと足を止め踵を返し、
「竜之介、いいですか? 明日までに長信に取り計らい、再び私のところに来なさい。分かりましたね?」
そう言うと、桜子は何かのメモらしきものを女中に手渡し竜之介はそれを受け取った。
そして、ここにいるだけ無駄というような怪訝そうな表情をし、女中をぞろぞろ引き連れ医務室を出ていった。
――流石姉妹だ、どこか似てるな。
再び医務室がしんと静まり返り、その中で竜之介は頭の中をフル回転させて考え始めた。
――俺が、別の人と入れ替わるのには何か法則性がある筈。確か最初の時は石段から足を踏み外して気を失って……前田との試合は死にかけて気を失って……。
「あ、そうかッ!!」
竜之介はその度に気を失っている事に気付いた。
――意識が朦朧としてる時、つまりだ、寝てる時に中の人を意識すればもしかしたらあの二人に会えるのかもっ!!。
「有言実行!!」
竜之介は早速布団を被って寝始めた。
「ぐー……」
2時間後……。
「ふぁあ~……良く寝たな」
竜之介は普通に目覚めるだけであった。
「なんだよ!! 疲れが溜まってるせいか普通に寝てしまったではないかっ!!」
そう言って枕を叩きつけた。
「でも、少しは意識した筈……寝るってのは駄目なのかな?」
竜之介は落胆し、何気に目を泳がした時、薬品が並んでいる棚に気づいた。
それを順に目で追っていくと「バクミン」と書いてある薬に目が止まった。
ラベルの裏側には「夜はこれでイチコロ」と書いてある。
――イチコロって何だよ……。
「ん? ……待てよ? もしかして眠りが浅くて、もっと深い領域に行けば……ひょっとするかも?」
竜之介はそのバクミンを手に取り、説明書きを読んで見ると、
「1日1錠、水いらずで効果は約半日」
「薬が切れたら半日は服用を禁ずる。命に関わります」
と、書かれてあった。
「何だか……凄い睡眠薬だな」
竜之介は蓋を開けて一錠手のひらに乗せた。
「原因を解明するためにも……!!」
それを思い切って口に運び飲み込んだ。その瞬間どんどん意識が遠くなっていくのを感じた。
「流石、いち……ころ……だ」
竜之介はそのまま倒れ込んでしまうのであった。




