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■風間竜之介VS前田和利

 周りはギャラリーの取り巻き、目の前には香組のと成、前田和利が立ちはだかっていた。


 竜之介の額に冷や汗が滲み始めた。


 このお膳立てに前田は非常に満足していた。姫野の取り計らいにより、棋将武隊の本部から、今回の試合が正式に認められたのだ。


 また、正式な試合会場を使用しない件については、双方が未熟者故、大事には至らないと判断された為だった。


「行くぞ風間竜之介……、抜刀蛇眼!!」


 前田が持つ鍔が鈍く光りだし、剣が現れ始める。


 頭の中が真っ白になった竜之介も物凄く頼りない声で精一杯「抜刀~」と叫んだ。


 竜之介に皆の視線が一斉に集まる。当然あの力がまたここで見られるという期待を持っていたからだ。


 竜之介の鍔から見事な青剣が出現した途端、観衆からどよめきが巻き起こった。


「おおお!! あの青剣、今度は期待できるぜ!!」


「ああ、入隊試験で桁外れな力を見たからなっ!!」


「ちいっ、青剣だと!? 生意気なッ!!」


 前田が面白くなさそうな表情をして、舌打ちをした。


 周囲に注目されながら、次にお互い精霊を召還する。先に召還したのは前田だ。


「来い……魔蛇羅まだらっ」


 前田が精霊を召喚すると、水晶が水色の光を放ち、水の精霊の魔蛇羅が目の前に出現した。


 魔蛇羅は、肩まで掛かった水色の髪に、頭には悍ましい赤い目が描かれた黒のヘアバンドをしており、蛇にも似た鋭い目付きをしている。


 前田は首に掛けていた兜をゆっくりと頭に装着しながら、


「本物のと成の実力……貴様に見せてやるっ!! 武装ッ!!」


 その瞬間、前田の体が光で覆われ甲冑が装着される。


「え?ぶ、武装?」


 竜之介が兜を手にとって、首を傾げていると姫野が


「竜之介……それを頭に付け武装と叫べ、そうすればお前の甲冑が装着される筈だ」


 その言葉を聞いた前田が、


「何だ?こいつ本当に初心者なのか……?」


 と、訝しげに竜之介を見た。竜之介は慌てて「武装!!」と叫んだ。すると竜之介にはもったいない程の見事な紺色をした甲冑が装着された。


「こっ、これが俺の甲冑!? 凄い、凄いぞッ!!」


 竜之介の姿に周りはざわめき、更に注目された。


「貴様あああ!! いちいちムカつくううッ!!」


 前田は竜之介の甲冑を見て、一層険しい表情をした。


「ハル、ごめん、また出てきて……っ!!」


 今度は竜之介がハルを召還する。水晶が白く光りだした後ハルが不敵な笑みを浮かべながら現れた。


*ふふふふ、どうやらまた、わしの実力を拝みたいらしいのぅ……*


 余裕余裕!! という感じで現れたハルは、前回より少し成長しただけに過ぎなかった。


――あ、前とは少し違うような。ちょっとだけ成長しているぞ、特に胸のあたりが……。


 本人は気づいているのだろうか?そう思いながら竜之介は汗を拭った。


 暫くして、ハルが自分の姿に異変を感じ、自分の体のあちこちを触り始めた。


*む? むむむむむっつ??*


――あ、気づいた。


*おい、お前……*


 ハルが竜之介の方をギロリ睨んだ。


*なっ、何でお前はいつも中途半端な力しか引き出せぬのじゃあああ!!*


「いててててっ!!」


 ハルは竜之介の頭を何度も叩いた。


*主人、あのガキをさっさと痛めつけてやりましょうよ*


 その光景を見ていた魔蛇羅が、竜之介を指し、冷ややかに言い放った。


「ああ魔蛇羅、こいつを皆の前で半殺しにして、見世物にしてやる」


 言って前田は、口元を歪めほくそ笑み、リンクを始めた。


「竜之介、せいぜい俺の為に皆の前で滑稽に踊ってくれよ?」


 魔蛇羅が前田の剣にリンクすると、3つの刻印が現れた。


――LV3……!!。


 それを見た竜之介も慌ててハルにリンクを促す。ハルはぶつぶつ文句を言いながらリンクを開始した。


 竜之介の剣には2つの刻印が現れた。


――……まぁ、仕方ないよな。


 竜之介は覚悟を決めた。


「はぁ? その剣でLV2ぃ? 貴様俺を舐めるのも大概にしろよ?」


 前田が怒りを露わにして叫ぶ。


「さぁ、姫野隊長!! 開始の合図を!!」


 この試合の審判は姫野が行なう事になっていた。姫野は試合開始の合図を双方に告げた。


「すぐにその化けの皮を剥いでやるっ!!」


 前田はそう吐き捨てる様に言うと、竜之介の顔面目掛けて、鋭く光る剣先を突き入れてきた。


「うわっ!!」


 竜之介は無様にバランスを崩し倒れそうになる。先程視線の先に居た前田の姿が見えなくなっていた。


「ど、何処だ!?」


「ふん!! がら空きだ!!」


 その声は竜之介の胸元から聞こえた。そこへ視線を戻すか戻さないかの一瞬、刃先が下から上へ切り込んで来た。


 竜之介は必死に後ろへ飛んだが、殺意に満ちた剣が竜之介の右肩を切り裂いた。


「ひっ!! かっ、肩がっ」


 竜之介は無惨に斬られた肩の切り口見て、悲鳴には至らない恐怖を声にして漏らした。


 今まで経験した事のない痛みが、右肩から脳天へと突き抜け、竜之介の情けない悲鳴が広場に響き渡った。


「おらぁあああっ!!」


 前田は間髪入れず、竜之介の鳩尾みぞおちに蹴りを入れる。


 竜之介は勢いに任せ吹っ飛び、地面に叩きつけられた。


「ああっ!! こっ、呼吸が出来ない!! 苦しいッ!! 息がしたいっ!!」


そのまま、だんご虫の様に地面でのたうち回った。


「なんだぁ? 貴様、本当にあの時のお前か??」


 前田は剣を構え直し、ぺっと唾を地面に吐き捨てた。


*竜之介、何をしている!! 早く立て!! 次が来るぞっ!!*


 ハルの声ではっと我に戻る。


 竜之介は右肩の痛みに堪えながら力任せに青剣を振った。


「あ? 何だこの緩い攻撃は?」


 前田が自身の剣で軽く交わした竜之介の攻撃は、一太刀とは呼べないに等しい、余りにもお粗末な物であった。


 その一撃を前田は呆れながらも弾き返し、この光景を見ていた周りも騒がしくなってきた。


「おい……一方的じゃね?」


「ああ、全然話にならない」


「ほんとにと成の実力者か??」


 これには、前田も唖然として言った。


「貴様……弱いっ!! 弱過ぎる!! 何なんだ!!」


 つかつかと近寄り、竜之介は横腹に思いっきり蹴りを入れられる。


「かはあっ!!」


 竜之介は2転、3転地面に転がり口が切れ、そこから血が滲み出てきた。


「立て! お前はカス以下だな!!」


 竜之介は前田に玩具のように殴られながら、色んな事を考えていた。


――どうして僕はこんな痛い目をしなければならないのだろう?。


――こんな場所に本来なら俺はいない筈なのに。


戦意喪失の中、ふらふらと立ち上がる。


「ちっ、違うんだ!! お、俺は……前の俺じゃない……んだ」


 この場を逃げ出したい気持ちが竜之介の口から出た。


「何を?! 今更命乞いか? みっともない!!」


 前田が汚いモノを見るような目で竜之介を睨みつけた。


「俺は、俺じゃなくて……別の誰かなんだ」


 語りかけるように前田に歩み寄る。


「ええい!! 煩い!! 貴様が姫野隊長の傍にいる資格は無いっ!! ここで死ねええぃ!!」


 前田は竜之介に剣を向け、殺気を込めて叫ぶ!!


 すると、前田の傍におぞましい殺気を纏った水蛇が出現し、竜之介をギロリと睨んだ。


「なっ……!! 何だッ!?」


 竜之介が水蛇に睨まれた瞬間、急に体の自由が効かなくなっていた。


「かっ、体が……動かないッ??」


「はん、お前、殺気の具現化も知らないのか?」


「殺気の……具現化……??」


「もういい!! 貴様と話をするだけ時間の無駄だッ!! お前は今すぐここで死ねえええッ!! 蛇眼水檻ッ(じゃがんすいかん)!!」


 もう、半分しか開かなくなった竜之介の視界が捕らえたものは、水蛇が大きな口を開けて、襲い掛かる姿であった。


 やがて竜之介は完全に呼吸を遮られてしまった。


 どんどん意識が遠のいていき、竜之介は体に流れている血の勢いがゆっくりと止まっていくのを感じた。


――ああ、今度こそ俺は死ぬ。


――……もう……何も聞こえ……ない。


 遂に竜之介の武装は強制解除され、鍔と共に広場に崩れ落ちるのであった。



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