明星2
そう言われるとなんだか照れてしまう。私は彼から目線を外すとポリポリと痒くも無い頬を照れ隠しの様に掻いた。
「礼など瑠璃様から返しきれないほどいただいています。だからお礼ではなく贈り物として受け取りますね」
意味が分からない。どう違うのだろうか。
クスクスと笑う青年に首を捻った。しかしながら。まぁ、もらってくれるのであれば、迷惑と彼が思わないのであればいいのかとも思う。
ただ『瑠璃』という存在が少し気になっただけで。
――確か芹が好きな人だ。
なんだろう。靄の様に心に引っかかるものが私には分からない。とにかく考え無いように顔を上げた。
「では。今度は私の番ですね――何が良いです?」
覗き込まれて私は思わずたじろいでいた。わざとではないのだろうか。と思う程に近い。顔が先ほどまで以上に赤くなるのを感じて思わず隠すようにして顔を反らした。
心臓が自身でも驚くほど波打っている。
「い、いいよ。いいから、十分もらってるし。いろいろ迷惑かけているような気がするし」
『それは義務ですから』言いながら芹は少し考えるように宙に目を移す。何となく助かった気がして私は思わず息を付いてしまっていた。
「ああ。では今度また『ドーナツ』を食べに行きましょう。晃子様も誘って」
暫く何やら考え込んでいたが、彼はパンと軽く嬉しそうに手を合わせた。どうやら甘みが好きらしい。ケーキやドーナツ。先ほどまでとは比べ物にならないほど目が輝いている。なんだかそれは少年の様に見えて可愛らしく思えた。外見はどう見ても大人なのにそのギャップがさらにそれを際立たせている。
――やっぱり『そっち』にすればよかったと私は苦笑を浮かべる。クッキーなら日持ちもある程度はするだろうから。
やっぱり喜ばれないものをあげても意味はないのだ。私は小さく自嘲するかのように口許を歪めていた。
「うん――そうだね。けど芹は『お金』持っているの?」
見たところ持っていなさそうだけれど――というかそんなもの必要なさそうだ。人の生活とはどう見ても無縁に見えた。
「葉っぱをお金に変える技術ならありますが。あと、混乱させて払ったと思わせるとか」
やっぱり。私は思わず肩を落としていた。なんだろう、それ。昔アニメか何かで見たことがある気がする。
私は頭を抱えるように額に手を当てた。
「あのね」
芹はなんだか自慢気に見えたが、そんな技術自慢されても迷惑だし困る。おまけにばれたら大変なことになるのは目に見えていた。――特に前半葉っぱがどうのこうのと言うくだりだ。この歳で刑務所とは仲良くなりたくはない。
とにかくにこりと私は笑顔を浮かべていた。
「だめ、絶対」
低く言うと彼は大きな目を丸くし不思議そうに『どうしてでしょうか?』と答えていた。




