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ポテト  作者: 春 茜
9/19

世界で一番になれる力

 学校の補修授業が終わった。

 校門を出る。

 同じ制服の少女たちがポテトの前後を歩いている。


 「このスカート、よくなくな~い」

 「なんで?」

 「こないだ、階段で、風が下から吹いてきて、スカートがまくれて、下が見えないんだよ。階段、下るとき、困んない?」

 「それ、ある。ある」


 「なんで難しい問題が分かるの?」

 「だから~♪」


 「ブカツぅ、きつくね?」

 「チクる人、気持ちって、分かんないね」

 「うん。感じ、分かんない」

 ポテトの周りで、少女たちが笑う。おしゃべりが聞こえる。


 ポテトは、声をかけない。

 一人で歩いている。

 波に乗れない。

 駅前まで、下を向いて、歩く。


 ポテト、時間かけておにぎり十個ぐらい食べろって、城山さんにいわれていたね。

 スーパーで、80円のおにぎりを買った。

 三つ、食べた。

 後は、コンビニ袋の中に入れておく。マジソン・バックの横に下げた。

 「なんか、へんなオマジナイみたいだ」


 ポテトは、学校嫌いか?

 「キライじゃないよ。なんで?」


 あまり、話さない。友達と今日は話していない。

 「話をあわせるの疲れる。私、差別されてるから。違うから。お金ない。親もない」


 差別、されてるって、自らいっていない?

 「そうかも。でも、違うよ。中学で働く人と、大学まで働かないで楽しめるのと」


 自転車に乗っている女の子、いないしね?

 「ママチャリじゃ、話しにならないよ。本気で踏んでる娘、いないモン」


 自転車が一番?

 「遠くまでいける。どこまででもいける。自由だよ。楽しい。お金になる」


 仕事で走るってこと?

 「それもあるけど……。一番になれるかもしれない」


 一番になれば、変えられる?

 「すべて変えられる。私を知った人が、私を使って売り出す。体じゃ、悲しい。けれど、能力なら未知数だ。キャラクターなら無限」

 駅前のガードレールに腰掛けて、蒼空を見上げて、話している。


 暴力団の会社から帰るときに、話してたね?

 「うん。あの時、分かったんだ。私のからだ、百万円になるって。裸になれって、脅された。脱がされた。怖かった。でも、そん時、分かった。体なら百万円程度。でも、資本だ。この体を一億円にできるのは私だけ。もっと魅力的な人間になる。私の魅力は足だもん。世界で一番の女性サイクリストになる。そこなら私の魅力は無限大だ。女性でレースに勝てる人は少ない。私ならできるって。そして、世界の子供のために……走る。走れば、きっと、いや、ぜったい何かが生まれるんだ」


 駅前。待ち合わせの場所に、かわいいカブリオが停まった。

 ポテト、フランス車ゴルディーニの赤だ。リッターでツインターボ相当出力のインバータ・モーター搭載、最新エレクトロニック・ビークルだよ。


 ドアを開けて、細身のジーンズに、フレアのシャツを着こなしたショートカットの女性が降りてきた。

 純子さんだ。


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