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【資本主義無双】異世界が太平洋に出現したが、狂った転生商社マンとマッハ1のウサギ村長が地球の超大国を丸ごと買い叩く  作者: 月神世一


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EP 8

電脳のアリスvs完璧な執事

護衛艦『出雲』のCIC(戦闘指揮所)。

薄暗い室内は、数十名のオペレーターたちの怒号と電子音で殺気立っていた。

「司令! 目標の集落周辺から、未知の周波数帯のエネルギー波を検知! 当艦のレーダーが一部干渉を受けています!」

報告を受けた坂上真一総司令官は、ハイライトの煙をくゆらせながら、部屋の片隅に視線を向けた。

「おい、蘭。出番だぞ。あの村の通信網ネットワークを丸裸にしろ。裏で糸を引いてる他国の気配もな」

坂上の視線の先には、ヨレヨレの特大パーカーを着た若い女が、椅子の上で膝を抱えて座っていた。

月給3億円で防衛省にヘッドハンティングされた特A級AIエンジニア、早乙女蘭。彼女は、モニターではなく自分の爪を見つめながら気怠げに口を開いた。

「あー、ダメ。糖分切れた。思考速度低下、70%」

蘭は引き出しを開け、カラフルなマカロンの箱を取り出した。

「おい早乙女技工士! 司令の命令が――」

副官が怒鳴るのを、蘭は「うるさいなぁ」と片手で制し、マカロンを三個まとめて口に放り込んだ。

強烈な糖分が脳髄に達した瞬間、蘭の瞳孔が限界まで開いた。

「……糖分充填完了。帽子屋さんは黙ってて」

ターンッ!!

凄まじいタイピング音がCICに響き渡る。残像が見えるほどの速度。

「『ゼロ・トゥ・ワン・プロトコル』起動。異世界の未知波長を逆アセンブル……電波に変換。セキュリティ突破、村のメインノードに接続開始――」

蘭の脳内では、『不思議の国のアリス』のウサギの穴に落ちるように、ポポロ村の魔導通信網の奥深くへとダイブしていく感覚があった。

(どんな暗号化技術だって、私の前じゃ開いたドアと同じ。さあ、全部頂くよ)

だが。

「……は?」

蘭の手が、ピタリと止まった。

モニターを流れていた緑色のコードが、突如として文字化けを起こし、奇妙な螺旋を描き始めたのだ。

「エラー? 違う……ファイアウォールじゃない。なにこれ……物理的な『壁』?」

蘭は眉をひそめた。

ネットワークの奥底に存在していたのは、高度な電子防壁ではなく、分厚い『紙の帳簿』と『鍵のかかった引き出し』という、極端にアナログな概念の塊だった。

「どういうこと……デジタルデータが存在しない? 全部、手書きで管理してるってこと!?」

さらに異常な事態が起きた。

出雲のコンソールから、ふわりと『アールグレイの香り』が漂ってきたのだ。

「ちょ、ちょっと待って……システムが、『紅茶の匂い』でコーティングされてる!?」

魔導波長に乗せて送られてきた逆ハッキング信号――それは、闘気を帯びた紅茶の魔力ジャミングだった。電子回路が物理的にショートしかけ、火花が散る。

蘭は慌てて接続を物理的に強制切断した。

「あちっ!」

コンソールが熱を持ち、プシューと煙を吹いた。

静まり返るCIC。坂上が怪訝そうに眉を寄せる。

「どうした、蘭。あの村のシステムはどうなっとる」

蘭はパーカーの袖で額の汗を拭い、信じられないものを見る目でモニターを見つめた。

「……司令。ごめん、弾かれた」

「何? お前がハッキングに負けただと?」

「負けたっていうか……土俵が違う。この村、ネットが通じないどころか、情報そのものに『意思』があるよ」

彼女の『月と六ペンス』のような完璧なコードの芸術は、紅茶の香りを漂わせる得体の知れない化け物によって、完全に拒絶されたのだ。

――同時刻。ポポロ村、村長宅。

政宗は、窓の外を飛び交う極小の偵察ドローン(米軍や中国軍のもの)を睨みつけながら、赤マルの灰を落とした。

「おい執事。外は目に見えない電波とドローンだらけだぞ。村の機密情報や、月光薬の製法が引っこ抜かれたらどうするつもりだ」

「ご心配には及びません、力武様」

リバロンは、政宗の前に新しく淹れた紅茶を静かに置いた。

カップからは、芳醇なアールグレイの香りと共に、微かな『闘気』が陽炎のように立ち上っている。

「我がポポロ村の帳簿および機密情報は、すべて私が『手書き』で記し、金庫に保管しております。いかなる魔導通信も使用しておりません」

「は……? アナログかよ」

「ええ。『プロフェッショナルマネジャー』の極意は、無駄なシステム化を避け、人間の目で直接数値を追うことにあります。それに……」

リバロンは不敵に笑い、ティーポットを揺らした。

「外部からの下劣な魔導探知に対しては、私が淹れたこの紅茶の魔力が、村全体を覆う『ジャミング(妨害電波)』として機能するよう設定しております」

政宗は、目の前の紅茶をマジマジと見つめた。

(電波を……紅茶の匂いで物理的に妨害するだと?)

「さきほど、無作法に村の情報を覗こうとした輩がいましたので、紅茶の香りと共に『闘気のノイズ』を少しばかり送り返してやりました。今頃、向こうの機械は使い物にならなくなっているでしょう」

涼しい顔で言い放つ人狼の執事に、政宗は思わず天を仰いだ。

「お前……ガチの化け物だな」

「恐縮です。ただの事務方ですよ」

地球の最先端AIエンジニアすらも手玉に取る、完璧なる執事の手腕。

だが、情報戦で手出しができないと悟った地球の怪物たちが、次に選ぶ手段は一つしかなかった。

「……来るぞ。腹を空かせた猟犬どもがな」

政宗の視線の先、村の郊外の森が、不自然な殺気を孕んで揺れていた。

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