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【資本主義無双】異世界が太平洋に出現したが、狂った転生商社マンとマッハ1のウサギ村長が地球の超大国を丸ごと買い叩く  作者: 月神世一


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EP 7

レオンハートの特攻(歴史を覆す牙)

ポポロ村を包囲する、日本の出雲艦隊。そして、ルナミス帝国による経済的な兵糧攻め。

大国同士が互いの出方を牽制し合う、息の詰まるような膠着状態が続いていた。

だが、その「人間たちの盤面」を、森の奥深くから冷ややかに見下ろす黄金の瞳があった。

「……愚かな。人間どもは、常に己の作ったシステムと理屈に縛られて身動きが取れなくなる。歴史を覆すのは、いつだって剥き出しの『牙』だ」

レオンハート獣人王国の近衛騎士団長、クルーガー。

美しい豹の毛皮に身を包んだ彼は、音もなく樹上の太い枝に降り立った。

彼の背後には、気配すら完全に森と同化させた、数十名の獣人精鋭部隊が控えている。

彼ら獣人族は、個々の戦闘力において他種族を凌駕するが、決定的に「数」が足りない。いずれ人間の数と近代兵器に飲み込まれるという歴史的危機感を、彼らは本能レベルで抱えていた。

だからこそ、ポポロ村の『月光薬』という無尽蔵の回復資源と、それを生み出すキャルルは、種族の生存のために何としてでも手に入れなければならない最重要ターゲットだった。

「大国が法と算盤で睨み合っている今こそが、最大の好機チャンス。……目標は、ウサギの確保と月光薬の奪取。以上だ」

クルーガーが短く命じる。

「団長。日本の自衛隊とかいう連中が、村の周囲に『地雷』や『無人機ドローン』を張り巡らせていますが」

副官の問いに、クルーガーは凶悪な牙を剥き出しにして笑った。

「下を見ているから、喉笛を食いちぎられるのだ。……我々は地を這う虫ではない。狩りの時間だ。死狂いにて、使命を全うせよ」

シュッ……!

風が吹いたかのような微かな音だけを残し、クルーガーたち獣人の姿が樹上から消失した。

ポポロ村、防衛線。

「……ん? おい、レーダーの様子がおかしいぞ」

監視モニターを見ていた信長が、眉をひそめた。

地上の熱源反応や、魔導センサーには一切の異常はない。だが、空気のわずかな乱れを示す気圧センサーが、村の「上空」で不規則な波形を描いている。

「……まさか!」

信長がタクティカル・グラスを上空へ向けた瞬間。

「遅いッ!!」

頭上の巨大な樹木の天蓋を突き破り、黒い影たちが雨のように降り注いできた。

「上だ! 迎撃——」

信長がアサルトライフルを構えるより早く、獣人部隊は重力を無視したような異常な跳躍力で、張り巡らされた地雷原も自動追尾ドローンの射程も完全に「飛び越え」ていた。

人間の近代兵器は、人間同士の平面的な陣形戦闘を想定して作られている。

樹冠を伝い、立体的な三次元軌道で急降下してくる野生の特攻部隊に対しては、その防衛網はあまりにも脆かった。

「ちっ、すり抜けられた! 第一防衛線、突破されたぞ! 奴らの狙いは広場だ!」

信長の怒声が響く。

だが、豹の獣人であるクルーガーの速度は、すでに音速の領域に足を踏み入れていた。

「ウサギ……見つけたぞ」

広場で村人たちに配給の芋を配っていたキャルルの背後に、クルーガーが音もなく着地する。

「え……?」

キャルルが振り返る暇も与えない。

(殺しはしない。ただ、気絶させて連れ去るのみ!)

クルーガーは、法を司るガオガオンの雷が「宣戦布告なき大量虐殺」に落ちることを熟知していた。だからこそ、局地的な『拉致と窃盗』というグレーゾーンを突いたのだ。

クルーガーの手刀が、キャルルの華奢な首筋に叩き込まれようとした、その刹那。

シュガァァァァンッ!!

クルーガーの鋭い爪と、彼の目の前の空間を『真っ二つ』に切り裂いて、一枚の長方形の紙片が地面に突き刺さった。

「……なにッ!?」

あまりの殺傷力に、クルーガーは本能的にバックステップで距離を取る。

地面に突き刺さっていたのは、刃物でも手裏剣でもない。

ただの、分厚い『名刺』だった。

【ポポロ村 宰相兼執事 —— リバロン】

綺麗に印字されたその文字を見た瞬間、クルーガーの全身の毛が総毛立った。

同族の、それも極めて高位の「捕食者」の匂い。

「おや。裏口からアポイントメントも無しに押し入るとは。レオンハートの騎士団は、ずいぶんとマナーが悪いご様子で」

キャルルの前に、ゆっくりと歩み出た男。

完璧にアイロンがけされた燕尾服を纏い、銀のトレイを片手に持った人狼族の執事、リバロン。

「……ルナミス帝国の裏社会を牛耳っていたという、はぐれ者の狼か。貴様ほどの男が、なぜこんな人間の真似事のような服を着て、ウサギに仕えている?」

クルーガーが、低く喉を鳴らして威嚇する。

「お答えする義務はありませんね。強いて言うなら……ここのお茶の時間が、私の人生で最も心地よいからです」

リバロンは、トレイを傍らのテーブルに置き、スッと右手を首元のネクタイにかけた。

「さて、泥棒猫の皆様。当村の財産に許可なく手を伸ばした罪……高くつきますよ」

「ほざけ、飼い犬が! 圧倒的な『個の力』こそが、我ら獣人の誇りだ!」

クルーガーが、全身の筋肉を爆発させて大地を蹴った。

その速度は、先ほどまでの比ではない。空気を切り裂く衝撃波を纏い、幾重もの残像を生み出しながら、四方八方からリバロンの死角を抉るように襲いかかる。

圧倒的な野生の暴力と、洗練された執事の戦闘術。

大国同士の睨み合いのど真ん中で、歴史のルールを真っ向から食いちぎろうとする獣人同士の頂上決戦が、今、幕を開けた。

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