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エピローグ リセット
半年後。 執行猶予付きの判決を受けた真田は、秋葉原の雑踏の中にいた。 銀行界からは追放されたが、彼の元には、いくつかのセキュリティ会社からオファーが届いていた。 彼は小さなパソコン修理屋の看板を見上げ、店に入った。 そこは、かつて阿久津とよく通ったパーツショップだ。
「いらっしゃい」
店主の親父が、はんだごてを握ったまま顔を上げた。
「よう、真田ちゃん。久しぶりだな。……ニュース見たぞ。大変だったな」
「まあね。……これ、買い取ってくれないか?」
真田は、鞄から一台のノートパソコンを取り出した。 銀行時代に使っていた、ハイスペックなマシンだ。
「いいのか? 商売道具だろ」
「新しいのを組むんだ。ゼロからね」
真田は笑った。 銀行という巨大なシステムはリセットされた。 阿久津の無念も晴らせた。 ここからは、自分自身の人生を再起動する番だ。
店の外に出ると、初夏の風が吹いていた。 電子音が溢れる電気街の喧騒が、今日は心地よい音楽のように聞こえた。
(完)
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件等とは一切関係ありません。




