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婚約者が二股宣言をしたので、生意気な令嬢とアホ婚約者に報いを受けていただきます!

作者: 大井町 鶴

短編15作目になります。アホな婚約者にはお灸を。

最後まで読んで頂けたら嬉しいです(♥︎︎ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾

「妻は2人がちょうどいい」


目の前のエモニエという自分の婚約者が“はい、そうですね”なんて言えないことを言い出した。


いつもなら、大人しく逆らうことなく“そうですわね”と答えている。でも、妻が2人とは、どういうつもりで言っているのかと思うと、さすがに“そうですわね”とは言えなかった。


「あの、どういったお気持ちでそのようなお考えに?」

「君は浅はかだな。いいか?君は子爵家令嬢であって、僕は伯爵家の跡取りなんだ。だから、尊重されるべきなのは常に僕だ。よって、妻は1人よりも安定する2人がいい」


シャルリーヌにはサッパリ彼の言うことが理解できない。彼は、自分の頭が良いと自負しているようだが、常々、バカだなと思うことがあった。


「もう少し、私にも分かるように教えて頂けませんか?」


丁寧に聞く。全く、好きになれないエモニエの家には借金の肩代わりを条件に婚約を結んでいたから丁寧に接している。


「人はお互いを支え合うためにも2人が丁度いいと考えがちだ。だが、あれを見ろ。どうだ?安定しているのは“3”なんだ」


彼が指さしていたのはイスだ。なるほど、脚が3本ある。


「イスと人間は違うと思いますけれど……」


控えめに否定してみたらスゴイ勢いで言い返された。


「なんだって?床に接する面が3つあることで2つより安定しているだろう?僕はいつだって盤石でいたいんだ」


(3本脚は体重のかけ方でバランスが崩れやすいのに)


「安定と言うならば、4本脚の方が安定するのに」


言うつもりではなかったがつい、口から言葉が出た。


「は?3人妻がいるより2人の妻の方が君だっていいだろう?気遣いだよ。僕の」


彼は結局のところ、愛人を持ちたいのだった。


「つまりは、愛人、ということですわね?」

「違う。妻、と言っただろう。君には本妻という地位をやる。だが、愛情はもう1人の妻に与える。.......ということで、じゃあな」


エモニエは言いたいことを言うと、定期的に開いているお茶会の場からサッサと去って行った。


(やっぱりこうなるとは思っていたわ)


エモニエを信頼したことはない。彼とは言わば横暴な上司と部下という関係である。


(愛人に子ができるとややこしいことになるわね)


政略結婚の最大のメリットとも言える継承権を得られなければこちらのうま味がない。自分の子どもが引き継ぐから意味があるのだ。


そこで仕方なく、エモニエが妻にしようと考えている女性は誰なのかを調べることにした。


...........浮かんで来たのはマルゲリットという男爵令嬢だった。


(自分より立場が下で言いなりになる可愛い子を選ぶと思ったわ)


だけど、あまりにもマルゲリットは年下過ぎた。彼女は、まだ13歳だ。ちなみに、シャルリーヌは17歳、エモニエは20歳である。


バカなうえに、7つも下の令嬢を選ぶなんて気持ち悪い、と思ってしまう。


さっそく、彼女がエモニエの餌食にならないように接触することにした。シャルリーヌはまだ学園に通う年齢であって、同じく学園に通うマルゲリットにはいくらでも近づくチャンスがあった。


シャルリーヌがお昼休みに彼女のいる棟の方へと探りに行くと、彼女は驚くことに男子生徒たちを侍らせていた。


「あら、ずいぶんと年増な女が近づいてきたと思ったら、エモニエ様の婚約者ね」


4歳も年下なのに、ずいぶんな口の聞き方である。


(これが本当にエモニエの妻にしたい女?すごく気が強そうだけど)


見た目は幼い感じのカワイイ子だ。彼女は自慢らしい金髪の長い髪をかき上げながら言った。


「なに?驚いて声も出せない?私、ちゃんとあなたのことを調べているんだから」


こちらがどう出ようかと考えていたら、怖気付いたと考えたらしい。


「私は……」

「マルゲリット!こら!」


駆けつけて来た人がいると思ったら、自分と同じ年齢位の美しい男性だった。制服を着ているから同じ学園の生徒だろう。


「妹がすまないね。オレはジャルベールと言って、マルゲリットの兄だ。君より学年は1つ上だな」

「初めまして。私はギマール子爵家のシャルリーヌと申します」

「ああ、知っている。というのも、オレも君に用事があってね」

「お兄様、エモニエ様の形だけの妻になろうという人になんの用事ですの?」

「お前は聞く耳をもたないから。オレは彼女と話すことにしたんだ」


そう言うと、ジャルベールはシャルリーヌを庭の方へと連れて行く。


「君、どうか妹の目を醒まして欲しい。妹の目は曇りまくっていてね、プレゼントと甘い言葉でずいぶんとその気にさせられているみたいなんだ」


(エモニエは私に全くプレゼントなんてしないのに)


「……先ほどの状態ではマルゲリット嬢の目を醒ますなんて無理ですわ。私を排除したい気持ちでいっぱいな様子」

「あの子は、どうしても格上の貴族に嫁ぎたいという夢があるんだ。自分の容姿に自信があるものだから、君を簡単に追い出せると思っている」

「失礼ですわね。........私だってあちらの家に借金の負担をしてもらっているのでなければ、こんな結婚などしたくありませんけれど」


ジャルベールはうなずいた。


「……そうだよなあ。まともな人ならあんなクズ男なんかと結婚したくはないよな」


彼は笑っていた。


「笑いごとじゃありません」

「いや、失礼。貴族って大変だなって思っただけだよ」

「あなたも貴族でしょう」

「そうそう」


彼と話しているとだんだんグチの言い合いになって自然と打ち解けた。そして、最終的にここはお互いのために一致団結しようということになった。


それからは、彼も学園にいることもあって、放課後にエモニエのことを一緒に調査を続けることになったのだった。


………そして、また気乗りのしないエモニエとの定期的なお茶会の日がやってきた。


「今日は、未来の妻を紹介する」


エモニエはマルゲリットを連れて来ていて、シャルリーヌに引き合わせた。


「私~、学園でシャルリーヌ様に突撃されましたのよ。きっとエモニエ様のご判断に耐えられなかったのですわ」

「なんだって?僕が紹介する前に接触するなんて、バカだな」


今日も、エモニエは通常運転だった。イライラしてくる。


「シャルリーヌ様は私の前で一言も発することができませんでしたの。だから、きっと社交界で役に立ちませんわ。私がパートナーでないとダメだわ」

「ああ、そうだな。僕には機転の利く妻が必要だ」


彼らは好き勝手言っていた。


「……マルゲリット嬢、あなたは本気でエモニエ様の愛人になるつもりですの?」

「愛人なんて言葉を言うな!彼女は妻になるんだ!」


エモニエが吠える。


「だとしても、政略結婚で結ばれる私はどうしたって本妻ですわ。彼女はまぎれもなく愛人でしかありません」

「はっ!そういうことならこちらにも考えがある。そんなねじ曲がった考えを持つ女に子など生ませてやるものか。マルゲリットは若いし、丈夫で良い子が生まれるだろうしな」

「私とは子をなさないと?マルゲリット嬢の子どもを跡継ぎにしようと思ってますの?」

「そうだ!優れた子どもを跡継ぎに決めるのは自然なことだ!」


エモニエはさも当たり前のように腕を組みながら言った。


「では、私はなんのために……?」

「お前の家が持つ領地が欲しいに決まってんだろ!」


思っていた通りの答えが返ってきた。


その時、扉がバンと開いた。


「悪いがね、そうはできないのですよ」


シャルリーヌの父であるギマール子爵とジャルベールが大量の書類を持って入って来た。


「なんなんだ!立ち聞きしたのか!無礼だぞ!」

「あなたに言われたくないですな」

「なんだと!?」


シャルリーヌはついにこの時が来たのだと思った。


「ジャルベール君とあなたのことをいろいろと調べたら、あなたはバシュロ伯爵の正当な血筋ではないですね。さっき、バシュロ伯爵夫人宛てに同じ書類を送りましたから今頃、あちらでも大騒ぎになっているでしょう」

「正当な血筋ではない?僕が?そんなわけないだろう!」

「そうよ!」


エモニエとマルゲリットは馬鹿らしい!と笑い飛ばしたが、ジャルベールが書類をテーブルに叩きつけた。


「あんた、娼婦の子だよ」

「はあ!?」


バシュロ伯爵は派手に遊ぶのが好きだった。妻に子ができた時、エモニエの母にも子ができていた。


バシュロ伯爵の妻は大変な難産で、ようやく生まれた子どもを育てるどころではなかった。だから、バシュロ伯爵が領地まで赤ん坊を連れて行き、そちらである程度になるまで育てると宣言したのだ。


だが、実際は夫人が生んだ子は身体が弱く、生きられる見込みがないと思った伯爵が、同時期に生まれた愛人の子と入れ替えたのだった。夫人の生んだ子は想像通り、しばらく後に天に召されてしまった。


愛人の娼婦も夫人と同じ髪色だったし、夫人は全くすり替えられた事実に気付かなかったらしい。自分の子どもだと信じて、非常に可愛がった結果、横暴なエモニエが出来上がったのだった。


「バシュロ伯爵は、同時期に生まれたあんたを連れ帰って夫人との子として育てたわけだ」

「そんなわけない!」

「そうよ!そんなのでっちあげだわ!お兄様はなにを考えているの!!」

「ウソじゃない。領地での圧政に耐えられずに秘密を知る人物が証拠をこんなに出してくれたんだ。何度もあんたの領地に調査に通った甲斐があったよ」


エモニエは書類を凝視している。書類はバシュロ伯爵の不正を明らかにするものだった。


「ウソだろ……僕が娼婦の子だって?じゃあ僕はどうなる?」

「私......目が醒めましたわ。騙されていたのですね。許せません!お兄様、もう帰りましょう!」


マルゲリットはエモニエをさっさと見捨てた。


「お前は屋敷には帰れない。まともな思考とマナーが身につくまでは領地で過ごすんだ」

「はい?学園は?学園には私を慕う者がたくさんいますのよ!?」

「学園で今の話が広まったら、お前は一躍、話題の人になる。悪い方でな。我が家の恥になるだけだ」


マルゲリットは叫んだ。


「そんなのイヤ!!私の未来は!?順調だったはずなのに!お兄様はシャルリーヌ様に利用されたのでしょう!?余計なことをして!」

「お前は真実を知らずに偽の人生を歩むつもりだったのか?しかも愛人として」

「私はいずれ本妻になる予定だった!」

「うるさい!!!」


座り込んでいたエモニエが絶叫した。


「皆、勝手なんだよ!なんなんだ!!僕の気持ちを考えろ!!」

「誰があなたの気持ちなど考えるものですか」


シャルリーヌは冷たい声を出した。


「は?僕に逆らうのか?……いつもそうやって心の中で僕をバカにしていたんだな!?この野郎!」


エモニエの手が伸びて来た。シャルリーヌは目をつぶる。


「お前は大バカ野郎だな!」


目を開けると、ジャルベールがエモニエの手を掴んであらぬ方向に捻じ曲げていた。


「折れる!折れるって!!」


パッと離された手をさすり続けるエモニエは相当、カッコ悪かった。


………そうして、慌ただしかった季節が過ぎようとしている。


「あれは、なんだか夢みたいだったわ」

「ああ。あんなバカバカしいことはなかなかないね」


今、シャルリーヌはジャルベールと並び、学園の庭でランチを食べていた。


「妹さん、領地に行くのに大暴れしていたけれど、その後はどう?」

「嘆いている。脱走しようとして使用人を誘惑して、サイアクだ。あれの矯正は難しい」


もはや、マルゲリットの更生に匙を投げているらしかった。


「それより、あのバカ野郎もなるようになったな」


エモニエは、バシュロ伯爵夫人が大切に育てていたのもあって、複雑な状況になっていた。結果的に彼は、領地の中でも僻地に追いやられていて、いずれ重労働に従事させるらしい。


「バシュロ伯爵夫人は夫の裏切りを許すつもりはないから、ギマール子爵家の借金を個人的に支払うように言い放ったそうよ。しかも、重大な秘密を知らせた私との婚約話も無くしてくれたわ」

「君は自由になれたということだな」

「まあ。父がまた借金を作らなければ」


父は、領地経営がまるでダメな人だった。借金をつくったらまたどこかの家と婚約を結ぶかもしれない。


「それなんだけど……君のお父さんはオレの能力を見込んでくれているみたいなんだ」

「というと…?」

「オレがあのバカ野郎の調査をして書類をまとめあげただろう?それを評価してくれたらしい。君がいいと言えば、一緒になっていいって...........。あの、その、そういうわけで順番が逆になったけど、君が良ければ僕と結婚してくれないか?」


彼がモジモジしながら言った。エモニエに事実を突きつけている時とは違って緊張した顔をしている。


「お父様が許すなら、それはもう……」

「お父様が許すからオレを受け入れるの?」

「だって、そもそもあなたとは妹さんのことがあって知り合ったわけで……」

「あれは君の人生には関わらせないよ。オレがそうはさせない」


ジャルベールとは本心で語り合ううちに、お互いを意識するようになっていた。伝えたことはないけれど、彼と一緒にいたいと自分も思っていた。


「私のこと、きちんと好きですか?」

「ああ。大好きだよ。愛してる」

「........奇遇ですね。私もです」


二人で微笑み合った。


.........その後、2人はお互いを支えながら手堅く領地経営をこなしていった。今では名産品もできて領地は豊かな状況だ。ちなみに、ギマール子爵家はシャルリーヌのほかに弟がいたのだが、彼は格上の貴族令嬢と恋仲になり、入り婿となっていた。


「あなたと巡り会えて良かったわ」

「だろ?今となってはあのクソみたいなキッカケに感謝だね!」


お互いに目を合わせてニコリと微笑んだのだった。

最後までお読み頂きましてありがとうございました(◍ ´꒳` ◍)!いかがでしたでしょうか?


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