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僕が彼女を異世界に転移させたわけ  作者: 柚木 潤


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10話 再会

 最近のハナは、蔵に残された書物を見ながら、色々な薬を作る事に挑戦していた。

 そしてケイシ家の主人であるソウに相談に乗ってもらっていたのだ。

 ハナがいつものように蔵の中に入って、いくつかの生薬を吟味していた時である。

 タルフは、以前にハナの前に現れた時と同じ猫の姿になって、蔵の入り口からそんなハナの様子をそっと覗いたのだ。

 


 僕は彼女に何が起こったかを説明しようと思ったのだ。

 僕は、単純に・・・謝りたかったのだ。

 今まで遠くから彼女の様子を見ていたのだが、この世界の親切な住民に助けられたようで、僕はとてもホッとしたのだ。

 しかし、笑顔の裏ではきっと辛い思いをしていただろう・・・ 

 僕はこの一ヶ月、時空の亀裂を探すため、この世界を隅から隅まで見ようと動いていた。

 元々この世界のリサーチも仕事の一つではあったため、元の世界から少しは情報はあったのだが、降り立った今、他の世界とはだいぶ違う事がわかったのだ。

 一見、ひとつに見える世界だが、実はいくつかの小さな世界に別れて存在する事が確認されたのだ。

 元々、僕達がやっている仕事に従事する者は、ポラリス様のアクセスが無くとも、空間や時間を操作する能力が生まれ持って備わっていたのだ。

 もちろん、ポラリス様のような強大な力とは比べ物にはならない訳で、僕だけでは簡単には移動する事が出来なかったのだ。

 つまり、ポラリス様の扉のような物が必要だったのだ。

 今の僕には、それを解析するには少し時間がかかるのだ。

 だが今回時空の亀裂を探す為には、すべての場所に行ってみるべきなのだ。

 本来、自分の事を知られてはいけないというルールはあるのだが、アクセスを遮断された今、もうどうでも良くなっていたのだ。

 彼女に僕の存在を知ってもらいたかったのだ。


 

 タルフは入り口からじっと視線を向けていると、ハナは何かを感じ取ったようで、すぐに振り向き猫であるタルフに気づいたのだ。


「え?

 あの時の猫!

 あなたも私と一緒にここに来ていたの?」


 そう言いながら、ハナはタルフである猫に近づいたのだ。

 すぐにタルフを抱えると、その綺麗な青い瞳を見て、何度も頷いたのだ。


「うんうん、絶対あの時の猫です!」


 そう言うと、タルフを抱きしめて顔を擦り付けたのだ。


「何だか嬉しい。

 私はここではひとりぼっちと思ってたから。

 あなたがいたなんて。」


 もちろんタルフはその行動に、心臓が飛び出るくらいドキドキさせられたのだ。

 だから、急いでハナの腕からすり抜けると、ハナを見てタルフは一言話したのだ。


「ちょっと、やめてくれ。

 僕は猫では無い。

 僕はタルフ。

 今は一時的に猫と同じ体を作り出しただけだよ。」


「え、猫が喋るのですか?」


 ハナはとても驚いて、幻覚や幻聴の類いなのだろうかと不安になったのだ。

 しかし、これまで自分自身に起きた事を考えると、そんな事もあるのかもしれないと、すぐに考えるのをやめたのだ。


「僕がこれから言う事は、他の人には言ってはいけないよ。

 ・・・君をこの世界に転移させたのは僕なんだ。

 本当にすまない!

 でも、僕が必ず君を元の世界に連れて行ってあげるから。」


 猫の姿のタルフは、力強い言葉でそう言い、真っ直ぐにハナを見たのだった。

 ハナはそんな喋る猫を見て、初めは目を丸くしていたが、少しだけ間が空いた後、黒い瞳を輝かせて笑顔で話したのだ。


「・・・ええ、わかりました。

 あなたを信じますよ。

 私はハナと申します。」


 こうしてタルフは、どうしてハナがこの場所にいるかを事細かに話し出したのだ。

 しかし、話が進むにつれ、あっという間にハナの理解の超える話となってしまい、ハナはニコニコしながら喋る猫を嬉しそうに見ているだけになったのは言うまでも無いのだ。

 二人の生きていた世界の科学力、文明のレベルが違いすぎたのだ。

 途中で気付いたタルフは、ハッとして咳払いをしたのだ。


「ゴホン・・・だから、大丈夫。

 すぐには無理かもしれないけど、必ず帰る方法を見つけるから。」


 焦りながらそういうタルフを見て、ハナは笑顔で大きく頷いたのだった。


「一つだけ心配な事が・・・

 向こうの世界で大きな地震が起きたのですよね?

 他の人達はどうなったのでしょうか・・・

 トキさんは・・・」


 そう言うと、さっきまで笑顔だったハナの顔が曇ったのだ。


「ごめん・・・正直わからない。

 周りの建物は倒壊していたものも多かったけど、君のお屋敷はまだ大丈夫だった。

 ただ、その後の事は移動してしまったからね・・・」


 タルフは申し訳なさそうに下を向いたのだ。


「・・・顔を上げて下さい。

 あなたが謝る事では無いですよ。

 私を助けてくれたんじゃ無いですか?

 タルフ、ありがとう。

 私も早く戻れるように頑張るわ。」


 ハナはそう言うと、黒く大きな瞳で猫のタルフを優しく見つめたのだ。

 タルフはこんな状況でありながらも、ハナと一緒に居れる事を幸せに感じたのだ。


 

 

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