魔法使いの戦い方
今日から本格的にルルに魔法を教えることになった。このか弱い少女を早く一人前にしなければオスバルトを倒しにいくことができない。俺は教わってきたことを再び教える。嫌でもあのときのことを思い出す。
「魔法使いの戦い方をおしえてやろう」
あのときのオスバルト様と同じセリフを言う。そして同じ説明を繰り返す。
「攻撃魔法で攻撃するのはそうなんだが防御魔法はほとんど使わないと思え。俺たち魔法使いが使うのは転移魔法だ。すべての攻撃を転移によって避ける。一撃もくらってはならない。そのためあらゆる方向からの攻撃を感知するために魔力探知を鍛える必要がある。そのためこれから数日間これを身に着けてもらう」
そういって俺はアイマスクを差し出す。本当に懐かしい気持ちになる。このアイマスクの修行は本当につらい。魔力探知がまだまだだった俺はこの修行によって身動きが取れない日々が続いた。とりあえず歩いてみるがすぐに壁にぶつかるわでけがもたくさんする。道行く人にぶつかって迷惑をかける。視覚による情報にとても頼っていることがよくわかる。
「わかりました」
そういってルルはアイマスクを身に着ける。
「では歩いてみよ」
ルルは歩きだすがすぐに壁にぶつかる。当然のことだがルルも全然歩くことができない。
「魔力探知を働かせなさい。すべてのものに魔力は宿っている。壁やコンクリートなどの無機物にもな。その微弱な魔力を読み取れるようになることが大切なのだ」
しばらく壁にぶつかったり転んだりするルルを眺めていたがとあることを言われて俺は困りはてた。ルルがこっちに歩み寄って耳元でささやく。
「デューク様…その……お手洗いに…」
どうするべきだろうか。昔俺がオスバルト様に同じような相談を持ち掛けたときにはオスバルト様には完全に無視をされて大衆の面前でとても恥ずかしい姿をさらけ出すことになった。国王様のご息女であるルルに同じようなことをしていいのか。それが困りごとだ。悩んだ結果俺はこうした。
「わかった。アイマスクをはずすことを許可する」
まぁ、いまどき根性論とか体罰的なそういったものは時代にそぐわないような気がしたのだ。修行続けること三週間。ルルはアイマスクをつけていても難なく歩くことができるようになっていた。魔力探知ですべてをみることができているようだ。
「よし、ルル。試してみよう。お前の魔力探知がどのくらいになったのか見てみようじゃないか。いまから俺が転移魔法で移動するから俺のいる場所を探し当てなさい」
そういって転移魔法で俺は転移した。草木の中に隠れて俺はルルが来るのをまつ。ルルはまだ転移魔法を使えるわけではないから来るのに少し時間がかかりそうだ。おそらくルルはしっかりと魔力探知をしてここにやってくる。思えばトイレに行きたいときにしっかりとアイマスクをつけていながら俺の方へと歩いてきたところを見ると魔力探知についてはルルは得意分野だったかもしれない。
昔の俺はこの試練に本当に苦労した。ルルを待っている間に当時の記憶がよみがえってきた。
「今からお前のアイマスクを外す。俺は転移する。魔力探知で探し出せ」
そういってオスバルト様は転移してどこかにいってしまった。わずかだがオスバルト様のものと思われる魔力を感じることができる。まだ俺は転移魔法が使えなかったから歩いて探していく。少しずつ感じていた魔力が強くなっていく。ここにいるはずだ。草木をかき分けて進んでいくがそこには誰もいなかった。たしかにここから魔力を感じていたはずなのにおかしい。
「3か月もアイマスクで魔力探知の特訓をしているのにまだまだだな」
オスバルト様は厳しかった、いや俺の魔力探知が弱すぎた。どうやら魔力探知はおれの苦手分野だったらしい。俺が得意なのは魔法を使うことだろう。魔力探知はまた違う神経を使うから嫌いだった。そんあこんなで俺もこの転移魔法を使うオスバルト様を見つける修行をしたのだがオスバルト様をなかなか見つけることができなかった。だが、今ならそのからくりもわかる。オスバルト様は自分の膨大な魔力を最小限にまで抑えて魔力探知に引っかからないようにし、万が一引っかかったとしてもまた転移をすることで見つかりにくくしてたのだ。まったく意地悪な方だ。そんなことを考えていると少女の声が聞こえてきた。
「デューク様見つけました」
意外とこの子は足手まといでもないかもしれない。
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