世界樹伝説
カフェの店員が3人分のコーヒーを持ってきてくれた。
「さて、じゃ、世界樹伝説の話をしようか。これは、もう何千年も前の話になる」
これはもう、何千年も前の話になる。人類の魔法の研究がまだまだ進んでいない頃のお話である。魔王もまだ存在しない、ある意味平和な世界のお話。このころの時代は魔法使いはほんの一握りの存在だった。研究は進んでいないために魔法を新たに取得する人間がなかなかいなかった。生まれ持って魔力を持った人間だけが魔法使いとなる。奇妙な力を持った魔法使いたちは自分の能力を隠す傾向にあった。異端な能力を持つ者は迫害される傾向にある。
「イデア、そろそろあがろう」
「あぁ」
イデアとアルキはこの海の街で漁師をやっていた。この街で獲れる魚を世界中の人が待っている。とても大変な仕事だが、やりがいのある仕事だった。朝4時起きというとんでもないスケジュール。過酷な船の上という環境。下手をすれば命を失うこの仕事。それでもやらなくちゃならない。港について今日の取れ高を確認する。
「今日も大漁だな。これだけ売れればそこそこの稼ぎになるな」
「これも世界樹様のおかげだわ。感謝ね」
イデアとアルキは世界樹に向けて祈りを捧げる。このころの人々はそうやって生きてきたのだ。
「こんな世界がいつまでも続くといいよな」
争いもなく、平和な世界。こんな世界を望む人が多いなんてことはとても当たり前のことだ。しかし、そんな平和な日常も束の間。終わりを迎える。海に現れる。何か。
「カエセ」
白い人型の生命体が海の上に浮いている。イデアもアルキも港からそれを見る。
「なんだあれは」
アルキは驚きのあまり、声がちゃんと出ていなかった。いままでに見たことのないものだけれど、異常な何かを目の前にしていることは確実だった。
「私たちはこの時のために」
イデアが白い生命体の方へと歩いていく。
「イデア。何をやって」
「ごめん。ずっと隠してたんだけど、私、魔法使いなんだ」
イデアはどこからともなく杖を呼び寄せて空を浮遊する。何発もの魔法攻撃を白い生命体に叩きこむがすべてが無力になる。反撃に大量の魔法攻撃を喰らうがそのすべてをイデアは防御して街を攻撃から守った。イデアは攻撃を繰り返すが圧倒的な存在に成すすべがない。
「アルキ、私は世界樹に行く。今まで、ありがとう」
「やめろ!あそこは神聖な地。上陸したら……それだけで死ぬぞ」
「世界樹はなんでも願いを叶えてくれるのよ」
それだけを言い残してイデアは世界樹に向かって飛んで行った。白い生命体はイデアに向かって攻撃をしていく。イデアはそれを避けながら世界樹へとたどり着く。
「よろしくね。世界樹」
突然世界樹が光りだした。光に飲まれる白い生命体。海の街からは一つの光の柱だけが見えていた。やがて光は収まり、白い生命体も消えていた。
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