世界樹
ルルの魔法使いの試練も無事終わり、俺たちはジェンに案内されるままに港へと向かって行く。ここヴァーテルパーニーは水の街だ。海も近く、漁港もある。ここで獲れる魚がこの国に出回っている魚のほぼすべてだ。俺たちの午後の予定は世界樹を見に行くことだったはずだ。いったいなんで、俺たちは港へと連れていかれているのだろうか。
「見ろ。あれが世界樹だ」
港から見える海の向こう側には巨大な木があった。木といっても想像していたものがちがう。あれは、なんとういのだろう。枯れ木だ。世界樹という言葉の響きのようなプラスのイメージはない。この世界樹から感じ取れるものは衰退だろうか。なにかの抜け殻のような。木から感じる生命力のようなものは何もない。
「あの世界樹のある島にはほとんどの人は立ち入り禁止だ。あそこは死の島と呼ばれる」
「死の島??」
「死の島??」
俺とルルは同時に同じ返事をする。
「そのままの意味だ。上陸すれば死ぬ。特別な限られた人だけがその島に上陸することを許される」
「許されるのっていったいどんな人なのですか??」
ルルがすかさず質問をする。
「国が認めた杖職人だよ」
「杖職人??」
「杖職人??」
またしても質問がかぶる。
「世界樹は、杖の材料なんだよ。だからこそヴァーテルパーニーが杖の名産地として有名になれたんだ。デューク、お前ならあの世界樹から魔力を感じとることができるんじゃないか??」
「あ~。いや。魔力探知が……」
ジェンは残念そうな顔をして首をかしげる。
「私は感じますよ。あの枯れ木から、膨大な魔力を。圧倒的な存在です」
ジェンは安心した顔を見せた。
「師匠より弟子の方が優秀ってこともあるんだな」
「師匠の教えがいいってことよ」
ジェンはあきれた顔をして話を続ける。
「まぁ、魔法使いなら一度は見ておきたい観光スポットだな。そういえば、世界樹に関する伝説の話は知ってるか??」
俺とルルは首を横に振る。
「まったく。魔法使いならこれも知っておくべき伝説の話だぞ」
俺たちの会話を遮るかのように、空から水滴が俺の頬に落ちてきた。雨が降ってきたようだ。
「雨か。これは一発きそうだな。ちょっとそこのカフェにでも避難するか」
俺たちは港の近くにあったカフェへ向かった。
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