ヴァーテルパーニーの試練
翌朝、午前にルルの魔法使いの試練が予定されていたので俺たちは、ヴァーテルパーニーの魔導院へと向かった。
「ヴァーテルパーニーの試練は俺の中では一番難しかった」
ジェンはルルを脅すように言う。
「なんでそんなことを言うんですか。緊張しちゃうじゃないですか」
「大丈夫だ。ルルなら突破できる。俺もここが一番難しいと思うがな」
俺とジェンの二人でルルをからかう。半分本気で半分冗談だった。俺が一番苦戦した魔法使いの試練は間違いなくヴァーテルパーニーの試練だからだ。というもののここの試練は基本的にあの魔法を取得していないとクリアできないところなのだ。試練の内容は恐ろしく単純なのに。
「心配になってきました」
とても不安そうにするルル。
「大丈夫だ。師匠の言葉を信じるんだ」
この言葉は完全に本気だ。
朝食を食べ終え、早々と俺たちは魔導院へとむかった。相変わらず魔導院の中は魔法でいっぱいだった。
「魔法使いの試練、受付はこちらですか??」
入ってすぐの受付に向かって行く。
「はい、こちらになります」
「ルルです。魔法使いの試練をお願いいたします」
「わかりました。受付完了いたしました。グランダートでの試練を受けた実績がありますね。試験には不合格だったみたいですが、特殊な功績を残したため、グランダートの試練は合格したことになってますね。なるほど、わかりました。案内いたします」
ルルの名前が魔力で紙に記されたのを見た。本当に魔導院にはまだまだ俺の知らない魔法がたくさんある。ルルは緊張をしたまま奥の部屋へと案内されていく。
「ルル、お前ならできる。頑張ってこい」
「はい、いってきます」
ルルは奥の部屋に入った。ここの試練はグランダートとは違って対戦形式の試練でもないから大きな競技場もないし、大勢の観客もない。小さな一室でこっそりと行われる。試練にかけることができる時間は無限だ。受験者がリタイアするまで挑戦が許される。とある一つの部屋に関してはもう何年も開いていないらしい。おれが受験したときにもこの部屋は閉まっていた。そんなこともあるのだが、ルルは一瞬でかえってくるだろう。
「終わりました」
ルルはケロッとした顔で帰ってきた。かかった時間は1分もないくらいだろうか。
「お二人が言うような難易度は感じませんでした。すごく……簡単な試練で」
「ほう、どんな試練内容だったか言ってみ??」
俺とジェンは試練内容を知っているが、ルルがこの試練を簡単にクリアできた理由は試練内容にこそある。
「部屋の中には最初は何もありませんでした。真っ暗な部屋でしたが、突然目の前に水の玉が現れました。大きさは手のひらでちょうど持てるくらいの大きいとも小さいとも言える大きさでした。この玉を切断せよ。という文字が目の前に現れたので私はその指示に従って目の前の水の玉をいつもの感覚で切断して終わりました」
「はい、自分で言葉にして、試練を簡単に突破できた理由がわかったかい??」
ジェンがにっこり笑顔で聞く。
「水ですか??」
ジェンがお前に譲るよと言った表情でこっちを見ている。
「あぁ、その通りだ。ずっと見てきたお前の水魔法なら余裕だとすぐにわかったさ」
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