旧友との夜
魔導院をあとにした俺たちは夜ごはんを食べることにした。
「どこに行くかなんてきまってんだろ」
ジェンはそう言って一直線でとある店に向かって行った。ジェンの後をついてくるととてもおなかをすかせる匂いがしてきた。この匂いは俺もルルも知っているあの匂いだった。そこにあった店の名前は、ニックニク~ヴァーテルパーニー店という名前だった。店内に入る。こういうときの3人でのテーブル席での座り方というのは何となく難しいなといつも思うのだが、ジェンが一人で俺とルルが二人という座り方をした。
「昔はこうやってオスバルトと飯を食ったもんだよ」
ジェンは懐かしそうに語る。
「僕もオスバルト様と食べましたよ」
「私はデューク様と食べました」
「お前、師匠面しやがって。お前なんかまだまだだっての」
「そんなことないです。僕だってオスバルト様の付き添いとして魔王を倒したんですから」
「ルル、こんな男に無理やりついていく必要はないんだぞ。もっといい男はほかにいくらでもいる」
「何言ってんすか」
俺は思わぬ話題に顔が赤くなっていたかもしれない。いやちがう。これはきっと焼肉の炎の熱さだろう。俺がこんな話題にとまどうはずもないだろう。俺は少し気になってルルの方をちらっとみる。ルルは黙々と肉を食べていた。肉をほおばるその姿はどこかしらリスに似た可愛さを感じる。いや、俺は一体なにを。
「なーに二人して黙ってんだ。冗談に決まってんだろ。いや、まさかお前らそういう……??」
「違います」
「違うっての」
「息、ぴったりなんだな」
沈黙になってしまった。まったくそんなつもりがないのにな。そんな感じの楽しい会話を続けながら食べていた焼肉はあっという間に時間が過ぎた。
宿に戻った。ルルは一人部屋で俺とジェンは同じ部屋で寝ることになった。
「しっかり師匠だな」
寝ている俺にジェンが話しかけてくる。
「まぁ、国王様に押し付けられたんでね」
「人を失う辛さ、守る大変さ、だな」
「ほんとです。国王様からとんでもない任務を与えられました」
「どんなことがあっても手放すなよ」
「そんなことしたら、国王様にも国民にも怒られますね」
「いいか、絶対にだ」
「そんなに念押ししなくても」
ここから返事が返ってこなかった。どうやらジェンは寝てしまったらしい。俺も今日は疲れた。寝よう。
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