杖型の義腕
「俺がこの街に来たときにはな……」
ジェンはそのまま話を続ける。話は俺のせいでジェンが右腕を失ったころに戻る。
「じゃあな。オスバルト。デュークのことをいじめるんじゃねぇぞ」
「ふん、お前みたいにこき使ってやるよ」
「児童虐待だな」
ジェンの微妙な返しにオスバルトはやや困って別の話題をふる。
「腕、治らないのか??」
「まぁ、できそうなことはあるからな。ちょっと試しにいく。俺の考えてることが成功したらとんでもないことが起きるぞ」
「楽しみにしてやるよ。わざわざヴァーテルパーニーにまで行ってだからな。杖関連だろうけど。これ、ヴァーテルパーニーまでは危ないからな」
そう言ってオスバルトはジェンに紙を渡した。
「じゃあな」
二人の男はそう言って別れた。ジェンは南街道を突き進んで二日でヴァーテルパーニーにたどり着いた。
「ようこそ、ヴァーテルパーニーへ」
インヌでもエヌニでもこれに案内されるととんでもない金額を持ってかれることを知っていたジェンはこの歓迎を無視する。ジェンはまっすぐ杖屋を探す。看板に杖のマークを見つけてジェンはその店に入っていく。
「なぁ!!頼みがある!!杖を作ってくれ!!」
「おうおうおう、どうした。おまえしかも右腕ないじゃないか。どうなってんだい??ん??いやまさか」
「俺が作ってほしいのは」
「腕型の杖」
「腕型の杖」
「やっぱりな」
杖の店の店員は高らかに笑う。
「まったく、あほな魔法使いが考えることはあほだな」
「やっぱりそんなことはできないか……。すまないあきらめて帰る」
「何を言っている。ここは杖の名産地、ヴァーテルパーニーだからな。どんな杖でも作るぞ」
期待以上の言葉にジェンも笑みがこぼれる。
「杖の原料が必要だな。お前の腕の太さほどの原料はなかなか来ないから特注品になる。本当なら高い金額もらうところだけど、こんな面白い試みなかなかないからな、無料でいいぞ」
杖職人といい感じになってジェンはしばらくヴァーテルパーニーに住むことになり、市長のマイヤさんに挨拶をする。それから三年してようやく特注の杖が完成した。
「魔力を流さないと腕みたいには動かせないからな。うまく使ってくれ」
切れた腕に魔力をためて特注の杖とを吸着させる。うまく魔力を制御して義腕の指を動かしていく。おおむね普通に腕を動かすことができそうだ。
「どうだ、使えそうか??」
「えぇ使えそう。すこし乾燥が気になるが。まぁ大丈夫だ。使える」
「乾燥か。まぁ材質が材質だからな仕方ない」
こうしてジェンは義腕を手に入れた。
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