懐かしい人
どうにか夜の街道を乗り越えて俺とルルはヴァーテルパーニーへとたどり着いた。そこには思わぬ人が出迎えてくれた。
「ようこそヴァーテルパーニーへ」
そこに現れたのは金髪の男だ。昔幼いころに見たあの人だった。
「お久しぶりです」
俺がエヌニの街で魔法使いの殺し方を聞いたときにどうしても頭の中に思い浮かんでしまう男。そういう風に殺せば相手は何もできなくなるということを俺は幼いころに経験していた。目の前にいるのはかつてオスバルト様の付き添いとしていたジェンだ。
「ああ、久しぶりだな。国王様からお前がここにくることを聞いていたよ」
しかし俺が思っているジェンではなかった。かつてジェンは俺をドラゴンの攻撃から守るために右腕を失ったはずだった。魔法使いとして大切な腕を一つ俺のせいで失ったはずだった。しかし目の前にいるジェンには右腕がある。
「あぁ、驚いたか??この右腕ね。義手……というより義腕っていうのかな。この街で作ってもらった」
どうにかしてジェンも普通の生活を送っているようだ。
「腕はこのとおりだからもう気にすんな」
右腕が俺の頭の上にポンと置かれる。
「ジェン様、デューク様から話は聞いてます」
「王女様に様をつけて呼ばれるなんて照れちゃうね」
相変わらずの軽い感じが安心する。
「さ、お前らのことはこの街の市長のところへ案内するようにってのが国王様からの命令だ。行くぞ」
ヴァーテルパーニーは海の近い街だ。煉瓦で作られた洋風な建物が並んでいる。道もおしゃれなレンガで模様をつけられている。商人が集まる街というだけのことはあって、真ん中の広場には市場が毎日開かれるというようなにぎやかな街だ。俺とルルはジェンに案内されて市場の近くにある大きな建物、役所に案内された。
「どうも。デュークさん、そして王女様。国王様から話は聞いています。二人が杖について調べるための手助けをしてくれと聞きました。あとはルル様の魔法使いの試練でしょうか」
さわやかイケメンが現れた。彼が市長らしい。
「すみません、先に自己紹介でしたね。私はマイヤ。ヴァーテルパーニーの市長です」
イケメンがにこっと笑う。イケメンだ。しかしその外見に気を取られてはいけない。彼からはとんでもない魔力を感じる。
「マイヤも魔法使いだったんだ。杖の街の長として商人たちをまとめたい。もっといい杖が国中に出回るようにしたいという思いで彼はこの街の市長になったのだよ」
にしてもとんでもない魔力を彼から感じる、おそらく相当の手練れだ。
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