杖なしの魔法
俺は調べごとがしたくて王立魔法図書館に来ていた。ここの図書館は魔法の力で本を探すことができる。新しい本が作られればこの図書館にそのコピーが蔵書される。ただ一つ、この世界のすべての魔法が書かれている本、聖典を除いて。聖典以外の本なら、こういう本が欲しいと願うと候補になりそうな本をその人の目の前に並べてくれる。
「だめだ、全然見つからない」
俺がいま見ているものは魔法使いの歴史に関する本だ。どれだけ見ても俺の探しているものが見つからない。
「どうやって杖なしで魔法を使うんだよ!!」
なにも見つからないことに俺はすこし苛立ちを感じてしまっていた。思わず大きな声をだしてしまう。
「図書館ではお静かにですよ」
ルルが俺に注意をしてくる。あのあとも俺はルルに修行をつけていた。ルルは素質のある魔法使いなのかもしれない。転移魔法もすぐに使うことができるようになって、いまでは俺と魔法組手の修行を積んでいる。修行の合間に俺はこの図書館に来て調べ事をしている。ルルはそれを手伝ってくれる。なんて優しい子なのだろう。
杖なしで魔法を使う方法を探るために俺は魔法の歴史、成り立ちを見ている。歴史書によると魔法は次のようにして発展したということになっている。まず、神が一人の男に魔法と魔法の杖を与える。その男はその魔法をもとにしていろんな魔法を作り出していった。その過程に魔物との争いのこととかが書いてあったのだが杖なしで魔法を使う話にはつながらなさそうだった。なぜなら魔法の杖というものは最初から存在していてそれありきで魔法が発達していったからだ。その過程でエルネストという男がそれまでに作られた魔法を編集した聖典という本を作っていることが書かれていた。それ以降、聖典にすべての魔法が書かれているということになり、逆に聖典に新しく魔法が書かれればそれが新しい魔法として使われるという仕組みになっているそうだ。
「なぁ、ルル。杖を使わずに魔法を使うってどうやったらできると思う?」
ルルはしばらく考え込んでいしまった。まぁ、こんだけ図書館で調べてもでてこないことを一人の少女に聞いても答えが出てくるはずもなかった。一点をずっと眺めてだまっていたルルだが口を開いた。
「逆を考えてみてはどうでしょうか。どんな人が、何が杖なしで魔法をつかっているのかを考えてみるのはどうでしょうか。オスバルト以外に杖なしで魔法を使うっていう事例はないのですか」
まさに逆転の発想に俺はすこし考える。オスバルト様以外に杖なしで魔法を使う人…。いや、人じゃなければいるか。
「魔物か?魔物は杖なしの詠唱で魔法を使えるよな。魔族ならそれこそ手をかざすだけで魔法が使える」
すこし希望が見えた気がした。魔物とオスバルト様のつながりを考えればもしかしたら杖なしの魔法の仕組みにつながるかもしれない。俺のしらないオスバルト様の一面がまた見えるかもしれない。
「図書館ではお静かに!!」
盛り上がりすぎたか。図書館司書に怒られてしまった。怒られたのをきっかけに俺たちは図書館をあとにした。ここは本も魔法の力で勝手に元に戻してくれるのが本当に助かる。こんなに苦労して杖なしの魔法のことを調べることがあるのならオスバルト様から聞いておけばよかった。いや、昔聞いたか。そのときの記憶がよみがえってくる。
それは魔法組手の修行をオスバルト様と行っていたときのことだ。
「オスバルト様、どうして杖なしで魔法を使うことができるのですか?」
魔法組手をやるたびにいつも疑問に思っていたのだ。杖を振る必要がない分、オスバルト様の発動する魔法が速くてこちらが転移する速度も上げる必要があって正直辛いのだ。
「自分の手の内をあかすようなことはしない。お前も大切ななにかを失えばわかる。さ、そんなこといっている場合ではないぞ。修行の続きを始めよう」
ごまかされたような気がする。俺はルルに全部を教えこんでおこう。まさかルルと対立するなんてことはきっとないだろうからな。
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