小話2_*作者が描いた挿絵にご注意下さい
小話2 *作者が描いた挿絵にご注意下さい
妃としての教養が身に付き、勉強の終わりが見え始めたころ、今度は婚礼の儀の準備に追われることになる。
当日の進行の確認、婚礼用ドレスの採寸や試着、国賓の把握など、目まぐるしい日々を送っていた。
しかし、この日は午後から休暇。
まだ、不慣れなクラーラに配慮したのだ。二人の為の婚儀なのに体調を崩してしまっては元も子もない。当時、王太子に嫁いだ王妃が、自分の経験を元に彼女を気遣ったのだ。
クラーラは王妃に感謝し、自分の好きなことをして楽しんでいた。
家族に手紙を書く、刺繍をする、窓辺で椅子に座ったまま転寝をしていたことも。
そうこうしている内にすっかり暗くなり、王都中のあちら、こちらの家で明かりが灯り始める。
窓から次々と明かりが灯る様を見ていると、誰かが扉をノックする音が。
クラーラが「どうぞ」と許可を出すと、そこにはアルベアトの姿があった。
空気を読んだ侍女が二人に頭を下げ、退室する。
「ごめん。邪魔したかな?」
「ううん、街を眺めていただけだから大丈夫よ。どうしたの?」
クラーラが問いかけると、アルベアトは無邪気に笑いながら答える。
「これを見て欲しくて」
そう言うと窓を開け、手を空に掲げる。すると、掌から出た大きな光が空へと昇り、一瞬で光の粒になる。
光の粒がゆっくりと落ちていく様はまるで、星が街に降っているかのようだった。
「誕生日おめでとう。……四ヶ月も過ぎてしまったけれど」
「ううん、ありがとう! 夜空が光の粒でキラキラしていて、とても綺麗」
クラーラは四ヶ月前に十八歳の誕生日を迎えた。
十七歳の誕生日は、今は無きシュワルツ伯爵家の元でいつの間にか迎えていたので、あまり印象に残っていない。それどころでは、なかったからだ。
王太子妃として認められたが婚礼の儀が行われる日に籍を入れるので、国民を巻き込んだ盛大なものはできない。しかし、クラーラを認める者は多いので王宮内で祝福された。
シェフはいつもより豪華な料理を振舞い、侍女は王都で購入した美しい刺繍糸を贈った。
国王と王妃からはブローチを贈られた。王妃が宝石を生成し、それに合うよう国王が職人に作らせたのだ。
アルベアトからは羽ペンを贈られた。それは天馬の羽で作られており、アルベアトとお揃いの物らしい。
誕生日、当日にも良くしてもらったのに、更に贈り物があったことにクラーラは驚きつつも喜んでいた。
「クラーラが生成してくれた宝石で、魔力を制御できるよう訓練していたんだ」
まだ、これくらいしかできないけどね……とアルベアトは小さな声で付け加える。
その言葉を聞いてクラーラは嬉しかった。
自分が生成した宝石を使ってくれていたこと、自分を喜ばせるために努力してくれていたこと。
誕生日に披露するつもりだったのなら、少なくとも四ヶ月以上も努力していたことになる。
そのことを考えると涙が溢れてくる。
「ありがとう……ありがとう……嬉しい、十分よ……」
もうすぐ婚礼の儀が執り行われる。
アルベアトとクラーラの為に。
クラーラはアルベアトと夫婦になれることに、心から喜んでいた。




