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第一章  大津いじめ自殺事件

 いきなりいじめをする児童は、どこにも存在しません。


 しかも、暴力といった激しい行為をするようなそんな児童は、よほどの乱暴者であり、いじめをするしないに関わらず、問題行動をする児童として、指導対象になっているはずです。


 問題は普段は大人しく、割りと真面目ないい子までもがいじめに参加する、そんな極限状況が問題になります。


 こうした状況では、善悪の判断は反転してしまい、いじめをすることこそ、正しい道徳的な行動になります。


 いじめをしない者は、勇気が無い恥知らずになります。


 つまり、いじめをしない児童は卑怯者と、クラスメイトからそう判定されます。


 こんな状況に陥った被害児童から見たら、味方はどこにも存在せずに回りは敵だらけになり、ただ孤立を深めていくまさに地獄になります。


 大津市で起きた、いじめ自殺事件がまさにそれでした、


 教師に相談しても埒が開かず、PTAや教育委員会に相談しても、事態は悪い方向に向くだけでした。


 被害者があがけばあがくほど、状況は悪くなる一方でした。


 安全なはずの自宅でも加害児童から襲撃され、被害児童はついに自殺を決意しました。


 もう、これしかないと。


 被害児童はどのような気持ちで、自殺をしたのだろうか?


 絶望か?


 憎しみか?


 恐らくですが、これで楽になれる、地獄から解放されると、そう思ったのかもしれませんが、今となってはもう分かりません。


 しかし、学校と言う狭い社会にしか居場所がない児童から見たら、その学校から拒絶どころか迫害までされたら、もうどうにもならないはずです。


 世界中が敵になったと、そう認識するからでしょう。


 これでは良くて引きこもり、悪ければ自殺以外に方法はありません。


 転校という手段も無くもありませんが、転校先を特定して伝手を頼ってその学校の悪ガキに連絡し、いじめが継続された事例もあるので、一概に転校が良案とは言えません。


 転校先を教える方もそうですが、過去に刑務所に収監された犯罪者に通報者の個人情報を教え、その結果通報者が殺害されるという、いわゆるお礼参り殺人事件もあったことから、どれだけ被害者に優しくない社会か分かると思います。


 やり方次第で、個人情報を引き出すなんて訳はないんでしょう。


 だから転校するにしても、学校側の協力が無ければ、状況は更に悪化する懸念もあります。

 

 こうして追い詰められた児童は、自殺を決行しました。


 しかし、これで終わりではありませんでした。


 被害児童の葬儀では、恐るべき事態が発生したからです。


 教師や同級生が自殺した被害児童の葬儀に参列する中、被害児童の親が罵られたのです。


 厳粛であるべき葬儀で、ありえない事態でした。


 教師は特に咎めることもなく、戦慄すべき事態は、これで終わることはありませんでした。


 被害児童が自殺をした理由は、親による虐待が原因であると、ビラまで配られました。


 学校やPTA、そして教育委員会までもがこれに同調し、被害児童が通っていた中学校の学校長が取材を受け、驚くべき発言をしました。


 いじめなんか無いと、むしろせせら笑いました。


 当時あの映像を見た私は、大変な衝撃を受けました。


 自分の学校の生徒が自殺したのに、何で笑えるのかと。


 いじめは無い。


 いじめなんかありえない。


 子供たちは、みんないい子だと。


 子供たちに酷いことを言うな。


 子供たちが可哀そうだと。


 そもそも、いじめをしたという証拠は、無いじゃないかと。


 被害児童の親は、こうしてとことん追い詰められていきました。


 しかし、事態は急展開を見せました。


 正義の告発があったからです。


 報道関係に次々に、いじめを見たとの証言が出始めました。


 しかも、被害児童がまだ存命中にいじめに関する告発が行われていて、学校関係者はこれを握りつぶしをした事実まで明るみになりました。


 中には自分はいじめの証言をしてもいいと、名前を出しても構わないと、実に勇気のある告発までありました。


 学校側はこれを生かし、ただちに対応すべきでした。


 だが、学校側の行動は戦慄すべきことでした。


 いじめの事実を、勇気ある証言を、証拠すらもすべて握り潰しました。


 それがすべて、明るみに出たのです。


 メディアにです。


 その影響力は、絶大でした。


 笑えないのがその後の学校の対応で、PTAに対して口裏合わせまで行っていました。


 それも、明るみになったのですが、みっともない言い訳に終始していました。


 自分達は、隠ぺいなんかしていないと。


 そのすべてが生徒の為の措置であると言い訳をする教師たちの存在は、こうなると滑稽を通り越してもはや憐れにすら映りました。


 これがいじめが発生し、生徒を見捨てるような学校の教師の正体なんだと。


 しかし、世間は容赦しませんでした。


 次から次に出てくる、いわゆる不都合な真実が明るみになった結果、学校には取材陣が殺到しました。


 そしてついに、実は学校はいじめを把握していたことを認めました。


 いじめなんかない、あるはずはない。


 そう主張していたのは、嘘だったのです。


 学校はいじめを隠ぺいしていて、すべての罪を被害児童の親に擦り付けていたのです。


 しかも、教育委員会も教育長もまともな対応をせず、ひたすら保身に走る始末でした。


 この事から大津市は、いじめについての判断を人間に任せないと決め、AIに判定させる決定をしました。


 学校、PTA、教育委員会、自治体。


 みんながグルになって、寄ってたかって被害児童に対していじめをしたと、結果から見るとそうなります。


 これは結果論ではなく、数々のいじめ事案で起きた、いじめのテンプレ的な事案になります。


 つまり、ごく当たり前、ごくごく普通のことになります。


 これが普通であることを、我々が子供だった頃を思い出して欲しい。


 子供の世界が、より残酷であることを。


 そしてそれを前提にしない限り、被害者は救済されませんし、死ぬまで追い詰められるでしょうから。




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