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「「お見合いですか?」」


「ああ。ルコウ婆さんが勝手にセッティングしてきたんだ。」


ローワンは開店前の薬屋に来ると不機嫌そうに椅子にダラりと座った。

姿からはそう見えないがローワンは一般的な女性の適齢期からは外れそうな歳に近づいている。


世話焼き婆と名を馳せているルコウに目をつけられていない訳はなく強引に見合いをセッティングされたのだ。


「まったく…見合いに来なければ私の回診を拒否すると言ってくる。」


「さすがルコウさん。」


「会うだけ会って断ればいいんですよ!」


「もちろん二人にも来てもらう。」


「「え?」」


「私は保護者だからな。」


まさか自分達が巻き込まれるとは思わず双子は面倒さを感じたが、間近でローワンのお見合いを見守れる事は好奇心をくすぐられる。


「見合いは明後日の昼だ。迎えに来る。昼食を共にするだけだから頼んだぞ。」


そう言い残しローワンは仕事に向かった。






見合い当日、相手と会う前に双子は少し疲れていた。

双子を迎えに来たローワンはヨレヨレの白衣に適当に髪を束ねるといった回診スタイルで来たのだ。


さすがにそれは無いだろうと双子は頑張った。

ローワンの髪を整え薄く化粧をし、白衣を剥ぎ取り代わりに薄手のストールを羽織らせる。


「どうせ断るのに必要か?」


「最低限の礼儀ですよ。」


「ローワンさん素材は良いんですからこういう時くらい着飾りましょっ!」


やる気の無い顔はしているが幾分かまともな姿になったローワンの背中を押し双子は相手との待ち合わせ場所に向かった。


待ち合わせ場所のレストランの前に着くとソワソワしながらキョロキョロと周りを気にしている気の弱そうな男性が一人で立っている。


きっとこの人物だろうとローワンが声をかけてみればやはり見合い相手で間違いがなく、とりあえず四人でレストランに入った。


「ぼ、僕はグラッセです…。」


「ローワンだ。」


「は、はい。知ってます。そ、そっちの二人もガーベラちゃんとキリンちゃん…。有名です…。」


グラッセはずっと俯きながら話をささている。

ローワンはこういうタイプがあまり好きでは無いので少しイラつきながら帰りたいのを我慢している。


「あ、あの…今日は来てくれてありがとう…ございます…。ぼ、僕なんかが相手ですいません…。」


「謝る必要は無い。ルコウ婆さんは強引だからな。」


「グラッセさんはローワンさんをどう思ってるのですか?」


「ぼ、ぼぼぼ僕がローワンさんをを?!」


ガーベラの質問に大量の汗をかきながら顔を真っ赤にし焦り出すグラッセに双子はローワンへの好意を感じた。


少し頼り無さそうではあるが誠実そうではあるので双子としてはローワンとくっついても問題無いように思える。

むしろあの部屋を片付ける存在になるのではと期待する部分もある。


「グラッセさんは綺麗好きですか!」


「あ、え、はい。掃除は好き…です…。」


「料理やお洗濯などの家事は?」


「ひ、一人暮らしだから…。」


「「ローワンさん良好物件です。」」


「いらん事を聞くな。」


ローワンの態度に少しもグラッセへの好意は見えてこず、双子は口を尖らせてローワンに講義する。

しかしローワンにはグラッセよりそんな顔をする双子が可愛くて仕方がない。


グラッセは先程の双子からの質問でキャパオーバー目前でギリギリ聞かれた事に答えている。

そんな状況下で料理が提供され、四人が注文していた昼食セットが並べられる。

グラッセは落ち着こうと目の前のスープにがっついた。


「ゔっ…ゲホゲホゲホッ。」


「どうした。」


「あ…こ、このスープ…。」


「ん?スープがどうかしたのか。」


「普通のオニオンスープですよね。」


「美味しいよね!」


むせていたグラッセはやっと落ち着いたのか大きく息を吸った後長く息を吐いた。


「ああ、()()い。最高のオニオンスープだ。特にこのオリーブがいい味をだしてやがる。」


「「「え?」」」


先程までとは違いワイルドな物言いのグラッセに双子とローワンは食事の手を止めグラッセをみる。

視線の先にはオドオドしたグラッセの姿はなく自信に満ち溢れた表情で豪快に食事をするグラッセの姿があった。


「あ?何見てんだよ。せっかくの料理が冷めんぞ。」


「「「…。」」」


「俺がイケメンだからってそんな見んなよ。」


「君は多重人格者だったのか?」


「あ?多重人格?俺は俺だ。さっきまでのも俺だし今のも俺だ。」


「ほう…。」


グラッセのあまりの変貌ぶりにキリンはドン引きしていたがガーベラとローワンは興味を持ちニヤリと笑っていた。


「ローワンさん…。」


「ガーベラ…。」


二人は実験体(グラッセ)を前に通じあった。

こんな面白い人物は他にはいない。

恋愛感情など一切ないが二人は薬師と医者としてグラッセを隅々まで調べてみたかった。


「グラッセさんこの後お時間ありますか?」


「その体質について私の家で話そう。」


「いえ、薬屋で色々試しましょう。」


「あ?なんだ急に。俺は偽装幼女も腹黒そうな双子も御免だ。」


「「「失礼な。」」」


いつの間にが皿を空にしたグラッセは長居する気は無いようでお金を置いて席を立つがローワンとガーベラは腕に抱きつきグラッセを引き止めた。


「は、な、せ~。」


「見合いはまだ終わっていないだろう。」


「そうですよ少し、もう少しグラッセさんについてお話をしましょう。」


「俺に話はない!」


二人分の体重で服を伸ばしながらもグラッセは少しずつ出口に近づいていく。

そんな中、キリンのみが席に座り美味しい食事を堪能していたが見知った顔が近づいて来た事で口に運んでいた手を止めた。


「こんにちわ。奇遇ですね。」


「こんにちわヒソップ。シスターでもこういうお店くるの?」


「このお店は週に一回子供たちを働かせてくれるの。今日は子供たちの様子を聞きに来たのよ。」


「なるほど。」


「そしたら見知った顔がお店に迷惑をかけているでしょ?放っておく訳にはいかないと思うわよね。」


「…わ、私は何も関係ないよ!」


「貴女の双子の姉と保護者が騒いでいるのに?」


「…手伝います。」


キリンは渋々食事をやめてヒソップに言われるがままローワンを確保した。

その隣ではヒソップにアインクロウをされたガーベラが悶えている。


「何やら知り合いがご迷惑をかけたようです。」


「あんたは…。」


「私はシスター見習いのヒソップと言います。」


「ヒソップ…。なんて素敵な名前だっ!」


「え?」


「その力強さ、優雅さ、容姿も全てが俺の理想!!結婚してくれっ。」


グラッセの公開プロポーズにより外野は大変盛り上がったが関係者の女性全員はポカーンとしていた。


「私は神に全てを捧げておりますので。」


「俺に捧げてくれ。」


「それは出来ません。」


「それを何とかっ!」


拉致があかない状態に困りヒソップは周りに助けを求めるが外野からは煽る言葉ばかりとんでくる。

ガーベラは自身の手により使い物にならないし残るはキリンとローワンしかいない。


「ローワンさん、キリン、どうすれば…。」


「ん?いいじゃないか。グラッセさんはルコウ婆さんに私を紹介されるくらいだ。」


「ヒソップ…ようこそこちら側へ!私達は解決したけどねっ!!」


何やら気になる事を言われただけで助けてくれない事を察したヒソップは覚悟を決めグラッセにニッコリと微笑んだ。


「私は一緒に子供たちのお世話をしてくれる方に好感をもちます。」


「ちょっと協会行ってくるわ!」


風のように出ていったグラッセに手を振りヒソップはその場で神に懺悔する。


「神よ…罪深き私をお許しください。」


キリンとローワンはヒソップの手腕に拍手しながら床に捨て置かれたガーベラを回収し撤収した。


翌日からグラッセは協会で働く事となり教育係にヒソップを熱望しほぼ一日中ヒソップと行動を共にする事に成功しヒソップの頭を悩ませるが、双子とローワンにそれが伝わるのは数週間後だった。




~本日の成分~


・謎のルコウ婆さん

・お見合い?

・人格が変わるグラッセ

・恋されるヒソップ



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