二
「明日はおばあちゃんの誕生日だねっ!」
「そうだね~。」
ガーベラとキリンは店内の掃除をしながら無き祖母を想っていた。
双子の祖母、マーガレットおばあちゃんは薬屋マーガレットの創設者にして双子の師匠兼育ての親だった。
双子の母親は物心着く前に事故で無くなり娘の形見としてマーガレットおばあちゃんは双子を大切に育てた。
「おばあちゃんが亡くなって二年になるんだね~。」
「そうだね!でも何でだろ…楽しい思い出ばかりだからかな。おばあちゃんの事思い出しても泣きたくならないんだよね。」
「私も!そういえば初めて回復薬の作り方教えてくれた時の事覚えてる?」
「もちろん覚えてるよ?おばあちゃんキリンにツッコミ入れまくってたよね。」
「いやいや、ガーベラにでしょ!」
«ガーベラ・キリン五歳の時»
「今日はお薬を作ってみましょ~。」
「「お~。」」
「ちゃんと出来たらご褒美にクッキーをあげますよ~。」
「「おお~!!」」
五歳児の双子は遊びの延長で薬屋マーガレットのお手伝いをしていた。
上手にできればマーガレットおばあちゃんからお手製のクッキーが貰えるのもあり双子のモチベーションも高い。
そんな双子にその日は初めて回復薬を教える事にしたマーガレットおばあちゃんは張り切る双子を微笑ましく見ていた。
「ばちゃっ!」
「どうしたんだいキィちゃん。」
「かいふく薬いくつでパン買える!」
「キィちゃんは賢いね~。そうだねぇ二つかねぇ。」
優しく答えるマーガレットおばあちゃんにキリンは首を横に振る。
「ちがう!作るのお金かかる!」
「…もしかして利益の事かい?そ、そうねぇ五つかねぇ。」
「ばちゃっ!瓶だけなら「さあ!作りましょうね~」…。あい。」
強制終了した質問タイムの代わりに双子に作業を教えるマーガレットおばあちゃんの手付きは優しい。
「ばあちゃ。できた~。」
「あらガーベラちゃん早いわ…ね?」
いつもニコニコなマーガレットおばあちゃんの顔はガーベラが手に持つ回復薬をみて表情を無くした。
「…ガーベラちゃん、なんでこんな真っ黒なの?!」
「んとね~コレ入れた?」
ガーベラは小さな手をベタベタにして甘い匂いを発するチョコレートの欠片を持っていた。
「あぁ…おばあちゃんのチョコじゃないかい。」
「ばあちゃコレ食べる時元気なる。」
「そうだねぇ…チョコは元気になるけど……混ぜちゃダメだよ。」
«回想終わり»
「なんて美しい思い出!あの時のおばあちゃんの顔は今でも覚えてるわ。ガーベラ酷いことしたよね。」
「あれは…そう、若気の至り?」
思い出話をしながら掃除を終えた双子は道具を片付けると身なりを整えた。
「おばあちゃんにチョコレート買って来ようかな。」
「ガーベラ、一緒に行くよ!お花も買いたい。」
双子は戸締りをしてまずは街で評判の菓子店へ歩き出す。
天国でマーガレットおばあちゃんが喜んでくれるのを思い浮かべながら足取り軽く出かけて行った。
~本日の成分~
・マーガレットおばあちゃんとの楽しい思い出
・おばあちゃんのご褒美チョコレート
・斜め上に成長した孫