第五話 当日
第五話 当日
「こんばんはだね。」
「そうだね。一昨日からけっこう情報集めていろいろと考えてみたけど、いざ当日になると緊張とはちょっと違うけど…何て言うんだろう、ドキドキ?わくわく?みたいな感覚があるかな。」
宿屋の廊下前で落ち合ったリズベットとアイリスはいつも以上に親密に話す。
「緊張とドキドキワクワクは全然違うでしょ。」
呆れたようにリズベットが言う。ふと、リズベットは廊下の奥の二部屋の扉を見た後、アイリスの横を通り抜けたときに一言小さな声で言った。
「ハルさんの言っていたこと覚えているでしょう。」
リズベットはそのままアイリスをおいてユーリの待つ部屋の中に入っていった。
「そろそろ六時半だし、お屋敷に行こうか。」
ユーリが言うと、ユーリの部屋に集まっていた面々は無言でうなずく。ユーリ達四人の探偵は夜のアルカディアを歩いて行った。衛兵の立つ門まで来た。
「あれ、この前の探偵の皆さんじゃあないですか。皆さんそろってどこに行くんですか?まさかあの屋敷とか言いませんよね?」
衛兵が全員の顔を見て驚いたように言う。
「いえ、ちょっと夜のお散歩に。すぐに戻りますので。」
ユーリがにこやかに言うと、衛兵はうなずいた。
「閉門までに戻ってくださいね。」
「閉門って何時だっけ?」
アルカディアを出て少し歩いたところでリズベットが言った。
「普通は⒒時じゃないの?」
アイリスが言うとユーリが苦笑いした。
「じゃあ、私はあの衛兵さんに嘘をついちゃったのか。」
それからは誰もしゃべらず、ただただ足を動かして、屋敷へと向かった。
「ねえ、あれ誰?」
ふとアイリスが言った。アイリスの視線の先にはこちらをガン見している人影があった。
「五人目の探偵か、主催者さんじゃあないかな?」
ユーリが言うと即座にリズベットが言った。
「主催者はないんじゃない?顔だししたらアウトだし。」
なんて話しながら人影に近づいて行った。
「あの、俺イェルカ・ドゥーネって言うんですけど、皆さんゲームに招待された探偵さん達ですか?」
突然人影が声をかけてきた。
「そうですけど…。」
リズベットがうなずくとイェルカはほっとしたように笑った。
「よかった。実は俺もなんです。アルカディアに入ってからずっと一人だったんで。」
屋敷はもう目の前。五人全員そろった探偵達は緊張した面持ちで屋敷へと歩を進めた。
屋敷の玄関に立った五人。五人を代表してリズベットがドアノッカーを鳴らした。あたりに朗々と響き渡る音に木々で寝ていた鳥たちが木から飛び立つ。数秒後、扉は自動的に内側へと開いた。
「まさかの自動式!」
アイリスはびっくりして大声を上げる。扉が開き切ると、リズベットを先頭に五人は屋敷の中に入っていった。五人の後ろで扉が音をたてて閉まった。