第四話 情報共有
第四話 情報共有
「まず、今の屋敷の所有者について。ユリウス・バーテイン侯爵が今の所有者。去年の時点ではヴィオナ・トールバーグ女伯爵だった。つまり事件が起きてからヴィオナ・トールバーグ女伯爵はあの屋敷を手放したということ。ということは、ヴィオナ・トールバーグ女伯爵が事件を引き起こす引き金、つまり招待状を送った可能性は低いわ。もし送っていて屋敷に招いたのだとしたら相当な演技派ね。次に亡くなった探偵達の名前だけど、今回同様五人いたみたい。ユウナ・アスルクラロ、イクラナ・ユビゼ、リリアーナ・リウ、エイシアナ・ルゼ、クリス・ヨークというそうよ。この中でユウナ・アスルクラロはユリウス・バーテイン侯爵の専属の探偵だったようね。私からはこんなところ。」
リズベットの話終わりユーリが口を開く。
「じゃあ次は私だね。去年の事件のルールは今回とは全く違ったみたいだね。屋敷ごと死んでもらうというのは屋敷も壊れるという意味だよね。でも去年は屋敷、どこも壊れていなかったみたいだね。それと死因は全員毒を飲んだことが原因だそうだよ。ウェンディナという毒を飲まされたみたいだよ。致死量のおよそ半分だったみたいだけど解毒薬を飲ませるのが遅れて亡くなったんだって。」
ユーリが口を閉じると、アイリスが話始めた。
「私は屋敷の一階を見て回りました。屋敷を見る許可はユリウス・バーテイン侯爵に取りました。すぐに許可は取れましたよ。それで、一階は特にこれと言って気になるところはありませんでした。どこも鍵はかかっていませんでしたし。でも確か、その探偵達が亡くなったのって大広間ですよね?その大広間は奥に通じる扉によくわからない記号が書いてあって、扉は開きませんでした。ただ、鍵穴があるわけじゃなくてナゾナゾみたいなのが書かれている感じです。あとは、全体的に暗いなと思いました。部屋は埃にかぶってなくてきちんと手入れされていました。」
「僕は二階を見て回りました。二階は掃除されていなくて、埃の積もった部屋が多かったです。唯一掃除されていたのはお仕置き部屋というところだけでした。…あと気になるところがあって。二階のそのお仕置き部屋の目の前に古い階段があって、上ってみたら多分屋根裏部屋だと思うんですけど、そこに出ました。屋根裏部屋は狭くて埃っぽかったです。」
アイリスが話し終わると、すぐにルドルフが話し始めた。
「招待状を送ったのはユリウス・バーテイン侯爵かヴィオナ・トールバーグ女伯爵の二択。ユリウス・バーテイン侯爵はアイリスさんとルドルフをゲーム前に屋敷の中に入れている。ゲームを行うのなら普通ゲームの会場に事前に人を入れたりしない。裏を返せば、ユリウス・バーテイン侯爵はゲームに関わっていないということになる。この前提があっていると仮定するのならば、招待状を送ったゲームの主催者ことオルパトスはヴィオナ・トールバーグ女伯爵ということになる。」
ユーリが言うと、リズベットがため息をつく。
「でもそれ、前提が崩れたらアウトでしょ。仮定するのも結構際どい所だね。」
リズベットは一息ついてから言う。
「あと、ウェンディナっていう毒草は確かこの王国では取れない希少な毒草だよね。どうやって手に入れたとかそういうところはやっぱりオルパトスに聞くべきだよね。」
「ウェンディナという薬草が取れるのはラピスラズリ大帝国の北部のみだって。薬草辞典に載ってたよ。」
アイリスが言うとユーリが首を傾げた。
「情報源の本はどこにあるのですか?」
「あ、その本は私の本でもリズベットの本でもないです。私のお友達が持っている本です。確か題名は、『薬草のあれこれ』っていう名前でした。」
アイリスの言葉にユーリが驚く。
「薬草のあれこれですか!その本は発売と同時に売り切れた希少な本なのです。」
「ラピスラズリ大帝国の北部でしか取れない希少な毒草を使った毒ならかなり入手方法が絞れるわね。そこんとこどうなのアイリスさん?」
リズベットが尋ねるとアイリスは唇を尖らせながら言った。
「ラピスラズリ大帝国の出身の人はヴィオナ・トールバーグ女伯爵の周辺ではユリシナという女の人だけみたい。だけどユリシナっていう女の人、北部じゃなくて南の出身みたい。ラピスラズリ大帝国と王国はかなり離れているから個人で持っていくのはかなり危険だと思うの。国境とかで必ず荷物を確認されるし。でも例えば商隊とかだと荷物に紛れさせることはいくらでも出来る。」
ユーリがアイリスに確認する。
「アイリスさんはウェンディナを持ち込んだのはユリシナ個人ではなくてどこかの商会の商隊だって言いたいんだよね?だとしたらどこの商隊か心あたりはある?」
「うーんと、ランテスキー商会かな。ラピスラズリ大帝国最大の商会だもん。」
アイリスが答えるとルドルフが口を挟んだ。
「ランテスキー商会なら知ってるよ。今有名な巨大商会でしょう。物の値段は他よりも安くて人気だけど裏では暗殺者や悪徳貴族に高額で毒草を売りさばいているっていう噂があるよ。」
「でも、それはただの噂でしょう。信憑性は低いわ。もっと確実な証拠がないと…。とりあえず今日のところはここまでにしよう。また、明日ここに集まれば…」