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留学生が来ました

 スーリャ様の人気と申しますか、一部の子息からの人気に陰りが見え始めてきました。

 それは、日々スーリャ様が強請ってくる物が高額になり、自分達のお小遣いでは買えないようなものとなってしまい、家のお金に手を付けたことが発覚し、同じような事をしている子息が他にも数名いて、同時に処罰を受けたからです。

 その事により、スーリャ様に物品を貢ぐのはライト様だけになりましたが、それでも高額なものを強請るのは変わらないようで、ライト様に割り当てられている生活費や婚約者に使う費用を圧迫しているそうです。

 そこで、ライト様は考えたのでしょう。

 自分の予算で足りなければ、予算があるところから拝借すればいいと。

 もちろんいいわけがないのですが、スーリャ様にそのようにそそのかされたらしく、ライト様はお兄様達の婚約者用の予算に手を出し始めたのです。

 始めは少額でしたが、その使用金額は次第に大胆になっていき、ついにはお兄様達の知るところになってしまいました。

 もちろん、お怒りになったお兄様達は、即使い込んだ金額を返すように要求したそうですが、どうせ使う予定のない予算を有効活用したのだと、逆に開き直ったそうです。

 これにはさすがに呆れてものが言えませんでした。

 購入してスーリャ様にお与えになったものをせめて返還するように言われたことに対しても、贈ったものを返せなどという恥を王族が晒すことは出来ないと断ったそうです。

 スーリャ様に贈ったものは、子爵令嬢としてはあまりにも高価なものばかりで、分不相応の物なのですが、スーリャ様はそうは思っていないようです。

 王族の中でも軋みが生まれ始めてしまい、王宮の空気も悪くなってきたと聞きますし、早々に問題の解決を願いたいところなのですが、肝心のライト様とスーリャ様の態度が変わらないのでどうしようもありません。

 そんなころ、季節外れの留学生がいらっしゃいました。

 その方は隣国の王子で、この国には外交目的での滞在なのですが、折角だからという事で学園に通うことになりました。

 お世話係にはわたくしが指名されまして、一緒に居る時間は他の方よりも多いのですが、気さくに見せかけて一筋縄ではいかない方なのだとすぐに見抜くことが出来ました。

 それはそうですよね、この年の王子でありながら隣国との外交を任されるほどの才覚があるのですもの、普通の方と同じように接するのは逆に失礼と言うものでしょう。


「レヴィ様、一緒にお昼ご飯に行きませんか? ライト様もいるんですよ」


 まあ、その理論はスーリャ様には通じないようで、何かにつけては留学生のレヴィ様に声をかけていらっしゃって、その横にわたくしが居るとわかると、涙を浮かべて怯えるような態度を取り、レヴィ様にわたくしの悪口を吹き込むのです。

 もちろん、それを信じるほどレヴィ様は甘くないのですが、スーリャ様はレヴィ様は自分の言う事を信じていると思い込んでいるようで、日に日に接触が増えていくように感じます。

 時にはライト様の前でレヴィ様の腕に触れたりするのですよ。

 ダンスの練習でも本番でもないというのに、未婚の婚約者でもない令嬢が殿方に触れるなど、本当に話に聞く酌婦のようではありませんか。

 この様子にライト様はスーリャ様を怒るかと思いましたが、逆にレヴィ様の事を責めるようになりました。

 曰く、「俺の婚約者に気軽に近づくな」、だそうです。

 近づいているのはスーリャ様の方なのですが、ご理解いただけないのでしょうか?

 そもそも、レヴィ様に喧嘩を売るような真似をすると言う事は、すなわち外交的に大問題なのですが、その部分もわかっていませんよね。

 何のために次期女公爵であるわたくしがお世話役に選ばれていると思っているのでしょうか?


「レヴィ様、意地の悪いイカル様なんて相手にしないで、あたしとお話をしましょう。退屈なんてさせませんよ」

「申し訳ないが、僕はこれから王宮に行く用事があるんだ」

「ならあたしも一緒に行きます。あたしはライト様の婚約者になるんですから、王宮なんて庭みたいなものですよ」


 そんなわけないでしょう。

 そもそも、とくに夜会が開かれているわけでも、招待を受けているわけでもないのに、まだ婚約者ではないただの子爵令嬢が王宮に簡単に入ることが出来るはずがないでしょう。

 子爵家ではそんな基本的な事も教えていないのでしょうか?

 庶子として引き取られてからさして時間は経っていないとは聞いていますが、それでも最低限の常識とマナーは教え込んでおくべきなのではないでしょうか。

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