第九話 聖女着替える
「あの、服着替えたいのですけど」
いつまで、胸を揉みしだかれないといけないのだろうか?けど、ここにいるのは獰猛な猛獣と一緒だ。
「ごめんなさい、つい」
やっとモモさんから解放され、僕は空間から母さんのトランクを取り出す。少し胸がひりひりする。
トランクを開けると、中身はひどいものだった。下着は透け透けの黒と大事な所がぱっくり開いている赤いやつと、白の最小限の布面積しかないやつ。どれもゲスだ。
服はヒラヒラなメイド服とショートパンツとチューブトップ、あとバニー服だった。母さんは困った時に開けろと言ったけど、さらに僕は困ってしまう。悪ノリしすぎだろう。
「うわ、なにこれえげつな…勝負下着ってやつね!」
桃髪が穴あき下着を広げて喜んでいる。
「うわ、でかっ」
モモさんは透け透けを頭に被っている。やっぱ、アナと同類なのか?
「そうか、お前はやっぱり、露出狂なのだな」
「違うわ!母さんがくれたやつだ!」
いかん、アナと話してたらつい突っ込んでしまう。頭の血管切れそうだ。
なんだかんだで、白い布面識が最小限の下着とメイド服に落ち着いた。ぴったりなのが、なにかムカつく。母さんは僕に起こったことについて知ってそうだけど、代わりに何を要求されるか解らないので、頼るのは最終手段だ。
「見るな!触るな!」
着替えているとき、気を抜くと触ろうとしやがる。女の子が僕を触って何が楽しいのだろうか?
「おお、似合ってるな。けど、決して命がけで迷宮に挑む姿ではないな」
僕は伸ばしてきた、アナの手を叩く。
「解ってるわ、揉もうとするな!」
うう、なんか変な気持ちだ。初めてスカートはくし、このパンツ後ろは紐なんでスースーする。
彼女達は強くて可愛いけど、できればこれ以上関わりたくない。けど、彼女達の助け合がなかったら、地上に帰れなだろう。ジレンマだ。
「そうだ、自己紹介がまだだったわね。あたしはサリー、騎士がアナ、黒髪がモモよ。あたしたちは、新進気鋭のクラン『サクリファイス・ビクター』に所属してるわ」
桃髪サリーがアナとモモさんを指差す。『サクリファイス・ビクター』聞いた事ないな。
「僕は…」
何て言おう。本名は伏せときたいし。
「マリー、マリー・シドーだよろしく」
マリアにしようかと思ったけど、あまりベタなので少しいじってみた。
「よし、じゃ、マリー、一緒にフロアボスを倒すぞ、よろしくな」
アナは僕に右手を差し出す。僕は咄嗟に握ってしまう。
「え…フロアボス?」
僕はしばらく固まってしまった。